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#35「あーしって夢みる少女だったの?」

新たに習得した二刀流スキルのお披露目の日。


ティアは代官山の美容室でエクステをつけて少しだけゴージャス度をアップさせてから、美容室すぐそばの都洞15号に潜った。


ティアは聖剣ブリトニーが収まっている鞘と、魔剣ビヨンセが収まっているナイフケースを腰のベルトに差している。



「都洞15号って……画像では見てたけど実際に潜ると、なんかスゲー」



この都洞15号は「箱庭タイプ」のダンジョンで、ポータルを抜けるとそこは木一本生えていない荒涼とした山岳地帯だった。


白灰色の岩肌をむき出しにした山々が左右から迫るようにそびえ立っている。

切り立った岩壁は氷河に削られたかのように険しく、頭上には青空が覗いていた。


その間を縫うように続く谷を、シーカーたちは進んでいくのだ。



どことなくヨーロッパを感じさせるこのダンジョンに入ったティアは、配信中に寝てしまった時に見ていた「夢」のことを思い出した。



遠くの鋭い峰々が青白い空を切り裂いていた。

そこに白馬に乗った王子様が現れる……少女趣味全開のメルヘンな夢。



――――うひー、なんて恥ずかしすぎる夢を……あーしって心の奥底ではそういうのに憧れてるんか? たぶん王子様ってギャルは好きじゃねーぞ?



ティアは気を取り直して配信用ドローンを宙に浮かべた。

先日、自分の火炎魔法で壊してしまったものがメーカー修理から戻ってきていた。



「オイっすー! 予告時間だよ全員しゅーごー! 今日は予告していた二刀流スキルのお披露目を、この都洞15号でするからねー!」



“オイっすー!”

“ティアさん、オイっすー!”

“ティアっち、なんか雰囲気変わった?”

“髪が増えてる?”

“色っぽさ、アップしてるー!”

“あ、この感じも好き……”

“都洞15号って代官山の? やっぱここって綺麗だなー”

“外国っぽい風景”

“モンスターがクソ強くて有名なとこだよな”



風光明媚な一部のダンジョンではガイド付きのツアーなどが行われている。


この都洞15号も日本にいながらヨーロッパ旅行が楽しめるような美しいダンジョンだ。しかし出現するモンスターが中堅クラス以上で危険すぎるために観光地化はしていなかった。



「お、でたよー。殺意マックスな感じのモンスターたちがー」



立ち止まったティアの視線の先に、棍棒を担ぎ、金属の盾を持ったトロールが三体現れた。

岩のような筋肉に覆われた巨体は、足元の石を踏み砕きながらズシンズシンと迫ってくる。


さらに、岩壁の高い岩棚には三体のグリフォンがいた。


鷲の頭部と翼、ライオンの胴体を持つ魔獣だ。

ティアを見下ろしていた三体は鋭い鉤爪で岩棚を蹴ると翼を広げて舞い上がった。



“いきなりこのレベルのモンスターかよ……”

“西洋風ファンタジーの定番敵って感じだな”

“他ならそれなりな深層で出てきてもおかしくない”

“しかも団体さんだ”

“これ知らないで来てたら腰抜かすぞ”

“難易度バグりすぎ”



ティアがこのダンジョンを選んだのは、トロールとグリフォンが組んで襲ってくるという情報をネットで得ていたからであった。


タイプの違う剣の二刀流を試すのに、タイプの違うモンスターのコンビは悪くない相手だったのだ。



「聖剣ブリトニー! 魔剣ビヨンセ! 二刀流イクよー!」



ティアは剣を持った両腕を高く掲げた。

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