#34「二刀流って単純にイケてるから」
南の島から帰国して2日後の自宅マンション。
ギャルメイクばっちりでラグマットに座るティアの前のガラスローテーブルの上にはノートパソコンと缶ビールと柿ピーが置かれている。
ティアはノートパソコンの内蔵カメラに向かって手を振った。
「ただいまー! 日本に帰ってきたよー! 今回は自分の部屋から「アゲぽよギャルさんぽ」の配信をしよっかなって……ポリポリ。おめーらにちょっと報告とか……ポリポリ……あるぞー!」
“おかえりー”
“ティアちゃーん!”
“柿のたねのポリポリ音がうるせえw”
“これがティアちゃんの部屋なのかー”
“自宅だからってリラックスしすぎだw”
“後ろのポスターってゲームのだよね”
“そのポスター持ってる! イベント会場限定のやつ!”
“最上ティアって本当にゲーム好きなんだな”
“ティアちゃんの部屋で一緒にゲームしたい絶対に楽しい”
“報告?”
ティアは羽織っていたパーカーを脱いだ。腕と胸元があらわになる。
「ちなみに海外は仕事だったんだけどね。日本はもう寒くなってきたのに向こうはメッチャ暑かったよ! 素っ裸で紫外線浴びまくったから日焼けしまくってるっしょ? そうそう報告ってのはさ、帰国してからダンジョン庁行って新しいスキルゲットしましたー! さあ、祝杯祝杯!」
“仕事……素っ裸……ごくり”
“AV撮影の後にワイバーン倒してたのかよ”
“正直、あまり変わってません!www”
“元からこんがり焼けてるやんw”
“おお? 新スキル?”
“そっかー国洞20号のバトルで結構ポイント入ってたのか”
“まさかスキルって魔法?”
“魔法は……”
プシュっと良い音で缶ビールをあけたティアは、景気をつけるようにそれを一口飲んでから発表する。
「ぷはぁぁぁ! 新しく習得したスキルは……「二刀流」スキル!」
ティアは両手を広げる。
「聖剣ブリトニーと魔剣ビヨンセが同時に使えるようになったぞー!」
“うおおおおおお!”
“それ絶対強いやつ!”
“どっちのをメイン武器にするのかなって思ってたけど、そうきたか!”
“次回二刀流回確定か!”
“次も絶対にリアルタイムで観るー!”
「220ポイントも使ったんだよ! マジでヤバくね? 最強すぎね? いや……ごめん、最強は言い過ぎたわ……魔法使えないし……」
魔剣ビヨンセを手に入れた直後から二刀流を覚えたいと思ったティアは、帰国した翌日にはダンジョン庁の施設を訪れていた。
“二刀流って220Pなのかよ、そりゃほとんど持ってるやついねえわ”
“二刀流スキルにするより最強魔法選ぶしね”
“突きのブリトニーと斬撃のビヨンセをいつでも選べるのはいいね”
“ふざけすぎな剣の名前に慣れ始めてる自分が怖いw”
“ロマンあるよな二刀流って”
コメント欄は二刀流でどんな戦い方をするのかの予想で盛り上がった。
ティアは流れていく文字を楽しそうに目で追った。
「もちろん魔法使えたらいいなーとは思うよ? でっかい火球とかズバーンって撃ってさー! でも二刀流もかっこいいと思わない? やっぱりモチベ的にもかっこよさはマストっしょ! ちなみに300ポイントで三刀流スキルってのもあったんだけど三本目どこで持つのか謎すぎね? まさかケツに挟むの?」
その後ティアはゲームでのキャラメイクやジョブの好みやこだわりといった雑談をしてから思い出したように次回の配信の告知をして……うとうとしだした。
そして、ついにはいびきをかいて寝てしまった。
“寝ちゃったぞw”
“ティアさーん、配信中ですよー!”
“そんなに飲んでたっけ?”
“ビール一口しか飲んでないよね?”
“そんなにお酒に弱かったのか……”
“でも寝顔かわいい”
“よだれが……w”
“二刀流がお披露目になる次の配信楽しみだな”
配信で寝顔を晒しているティアは夢を見ていた。
それは白馬に跨った「王子様」が出てくる、かなり乙女チックな夢だった。
そして次のダンジョンでその夢は正夢となる。
……ただし、ティアとしては「なんだよそれ!」だった。




