#33「魔剣ビヨンセ、マジぱねぇわ」
ティアの手にあるアーミーナイフは握っている箇所はそのままで、刃がついている箇所だけが伸びている。
「なんぞこれー? 伸びろって思ったら伸びたんだけど!? 如意棒ですか? 【ピー!】ですか? いやでもこれ……デカすぎね?」
その長さはもはやナイフとは呼べないほどで、“霧の魔人”が持っていたあの巨大なロングソードと同じくらい……5メートル以上……7メートルはあるように見えた。
“ナイフが伸びた?”
“長くなった!?”
“なんだ、あれ……”
“びっくりした”
“これが謎モンスターの心核を合成して得られた能力?”
“擬態能力が武器の伸長として出てる?”
“あんな長い剣重すぎて振り回せないはずだけど”
“ティアっちはなんで片手で軽々持ってるんだ?”
伸びたアーミーナイフを片手でブンブンと振ったティアは信じられないという顔をしている。
「これさ、軽すぎるっていうよりも重さがゼロだよ! そっか! もしかしたら霧の魔人があのロングソード持てたのも重さがなかったからなのかも! この魔剣ビヨンセなら勝てるよー!」
“ビヨンセw”
“ビ……ヨ……ン……セwwwwww”
“ブリトニーの次はビヨンセかよw”
“セレブな歌手しばりなのか?www”
“やっぱり平成感強くて草”
“聖剣とか魔剣とか特に意味はないんだろうなw”
“なるほど……重さがないから霧だけど持てたと”
“形状は違うけど長さもあのロングソードと同じなのかな”
“霧の魔人は地面を削ってたから斬撃力も相当なはず”
“ホログラムみたいな感じって事?”
“握って動かしてるんだから感触はあるんだろうな”
“不思議すぎるけどダンジョン内だからな……”
翼が空気を叩く轟音とともに3匹のワイバーンが急降下してくる。
その速度はまるで、空から巨大な槍が三本同時に撃ち込まれてくるようだった。
ティアは魔剣ビヨンセの柄をギュッと強く握り、つけまつ毛がついた目でまばたきをする事なくワイバーンの動きを観察する。
鋭い鉤爪を立てたワイバーンがビヨンセの間合いにもうすぐ入る。
「このタイミングで……イケるっしょ! そぉぉぉぉぉい!!!!!」
ティアはビヨンセを振る。
長すぎる刀身が、大きな弧を猛スピードで描く。
ズバァァァンッ! ズバァァァンッ! ズバァァァンッ!
1匹を真っ二つにしたビヨンセはそのまま振り抜かれ、2匹目と3匹目も薙ぎ払った。
3匹だったものは6個の肉の塊となって、ボタボタっと地面に落ちる。
“おおおおお!!!!”
“ふぁーwww”
“すっご……”
“迫力やべえ”
“一振りでワイバーン3匹を真っ二つにしやがった”
“これが可能な一瞬を読んだ……ヤバいな”
“これで「突く」だけじゃなく「斬る」も可能になったわけか”
“重さがなくてあの切れ味って……”
“いくら軽くてもあれはティアにしかできないと思う”
“ワイバーンの動きを読んでるわけだしな、しかも3匹同時に”
”小さくなった!?”
“ビヨンセが縮んだぞ!”
“ブリトニーが折れたとかビヨンセが縮んだとか……”
“本人たちが聞いたらどう思うのかw”
魔剣ビヨンセは元の刃渡り15センチのアーミーナイフに戻った。
「使わない時はちっこくなって、やっぱこれ【ピー!】っぽいね。でも持ち運びにめっちゃ便利ー! そうだカマチョさん! ここに魔鉱石あるんだっけ?」
「ありますネー! たしか上の方に……あっ、ほらあそこですよ!」
岸壁にあった大きな魔鉱石を回収し、カマチョがその魔鉱石を貰うかわりに彼のナイフはティアの物となった。
時間的にもちょうど良い感じだったので、今日のダンジョン探索はこれで終了だ。
「この魔鉱石売れば、ずっと欲しかった船買えるネ。ティアさんと潜れて私はラッキーでした!」
「暇つぶしくらいのつもりだったけど、ふたりとも良いものゲットしちゃったねー」
魔剣ビヨンセを手に入れたティアは、はやく日本に帰国したかった。
ダンジョン庁の施設で習得したいスキルを思いついたのだ。




