#20「ぎゃあ!聖剣ブリトニーがああ!」
ティアは愛用のレイピアをカスタマイズしてできた「聖剣ブリトニー」を手に、都洞23号の探索を開始した。
このダンジョンは古い炭鉱のような雰囲気だ。
足元には黒い土と石が転がり、天井や壁は何本もの木の板で補強されていた。
途中で階段を見つけては降りていく。
深く潜れば潜るほど出現するモンスターは強くなったが、ティアは一撃でそれらを倒していく。
「う〜ん、なんかさーいつもとあんま変わんないんだけどぉ……誰だよー聖剣とか言い出したやつは?」
「お前だろ!」とコメントで総ツッコミが入る。
このカスタムした剣はオリジナルのレイピアと比べて刀身の長さ、重さ、貫通する時の感覚、どれも違いが感じられなかった。
変化といえるのは元は白銀の剣だったのが、若干赤っぽい剣になったくらいだろう。
すると坑道の奥から大岩のようなモンスターがのそのそと歩いてきた。
ロックドン。
巨大な岩に太く短い手足が生えた、幼稚園児が描く顔に手足が生えている人物画のようなモンスターだ。
「うわ……ウゼーのがきたし。あーし、これ系苦手なんよね」
ティア愛用のレイピア、“ブリトニー”は二代目だった。
初代は岩モンスターとの戦いで折れてしまったのだ。
レイピアの攻撃方法は、フェンシングのような「突き」が基本だ。
だからティアは、モンスターの身体に剣を突き刺して戦う。
だが、ロックドンには鎧の隙間のようなものがない。
目も口もなく、胴体も腕も脚も全部が硬い岩なのだ。
ハンマーでぶっ叩くか、魔法で攻撃する。
そういう戦い方が基本のロックドンは、突き攻撃一辺倒なティアとは相性が悪かった。
「あっ! でもさ、もしかしてこの剣めっちゃ硬くなってるとか? だってSSS級ドラゴンの心核と合成したんだし貫けるよね? これはもう勝ち確でしょ!」
ティアはロックドンに向かって走った。
「うりゃああああ! どこを刺せばいいかは分かってるぞおおおお!」
ロックドンの大振りのパンチが襲ってくるが、それは華麗に避ける。
そして聖剣ブリトニーを、読み取れた弱点を貫く位置に突き刺した。
剣の先端が岩に当たる。
……ポキンッ
聖剣ブリトニーは先っぽから15センチくらいの場所で折れた。
「ぎゃああああ!! ブリトニーが死んだあああ! ブリちゃーん!!!」
“折れちゃったwww”
“なんてあっけない最期なんだ”
“これが聖剣って適当すぎるw”
“ヴァルディアスの心核が無駄に……”
“今日は撤退っぽいな”
“中ボスクラスなのにダメか”
“ティアっち魔法も覚えましょう”
“あれ? なんか剣が動いてる?”
突然、剣が振動しだした。
「え? なにこれ? バイブとかローターは合成してないよ!?」
ティアが驚いていると、折れた箇所から液体のような黒い金属がにじみ出した。
それはまるで生物の成長を早送りしたかのようにニョキニョキと伸びていき、ついには失われた剣先が元通りになった。
残っていた刃と比べて再生された刃は少し黒光りが増していて、ツートンカラーになっている。
“ふぁっ!?”
“再生した?”
“ええ?”
“気持ちわるっ!”
“あ〜そういうことか”
“わかったかも”
“なになに?”
「よくわかんないけどー! ワンチャンってこと? うりゃああああ!」
ティアはまた襲ってきたパンチを避けてから、再度同じ箇所に突き刺してみた。
するとさっきは岩に当たって折れた剣先が、今度は岩にめり込んでいく。
そして深くまで差し込まれ、ロックドンは静止したのちドスンと大きな音を立てて倒れた。
“おおおおおおおおお!”
“倒しちゃったぞ!?”
“なんでさっきは折れたのに今回は貫けた?”
“ヴァルディアス種は再生能力があるんだよな”
“再生強化だっけ?”
“ああ、たしか再生のせいで倒すのが厄介なんだよね”
コメントに書かれていた事をまとめると、SSS級ドラゴンのヴァルディアスには傷ついた部位を再生する能力があるらしい。
しかも再生した部位は以前より強くなるという特性まで持っていた。
そして、そのヴァルディアスの再生能力がレイピアに付与されたようであった。
ティアが再生能力について知らなかったのは、ヴァルディアスで唯一与えたダメージが脳天への一撃のみだったからだ。
「そっかー! じゃあ使えば使うほど、黒光りして、硬く、たくましくなっていくんだね! まるでチ……なるほどねー!」
“おいおいww”
“何を言おうとしたwww”
“んぽキャンセル”
“貫けなくて壊れると次はそれを貫けるように再生されるのか”
“成長要素のある剣って面白いねー”
“育てたらマジで聖剣になるかも”
“でもブリトニーって名前はなぁ……www”
“結局モノいじりスキルは当たりだったって事?
“ティアさんが考えなしだから見つかった能力でもある”




