#19「モノいじるの、天才すぎね?」
「市」としては日本で2番目に小さい東京都狛江市にある都洞23号も、かなり小さいダンジョンだった。
普段は訪れる者がほとんどいないこのダンジョンに、ティアはコンテナボックス3個を運び入れた。
運ぶのを手伝ってくれたのは、最上ティアが所属しているAV女優プロダクションのオネェな社長だ。
「配信が終わったらあたしの車に乗ってお帰りなさい。もし配信場所がバレたらポータルの外に人が集まっちゃうもしれないけど、あたしがいれば平気よ」
「しゃちょー、ありがとー!」
配信予告時間になり、ティアはドローンを宙に浮かべた。
今日の配信はスキルが発動さえすれば良かったので深く潜る必要はなく、ポータルに入ってすぐの場所で行われた。
「こんちわー! 最上ティアだよー! 今回は新しく覚えた「モノいじり」ってスキルで武器をカスタマイズするぜぃ! マジでパないの作っから期待しとけよっ!」
“ちわー!”
“ティアっちこんにちわー!”
“今日もかわいい”
“もう習得したのか早いな”
“この前の料理を見て期待しろというのが無理w”
“本当に200ポイント使ってきたのか”
“配信向きなスキルではある”
ティアはコンテナボックスからブーメランと両刃のロングソードを取り出した。
「あーしさ、実はブーメラン投げのスキル持ってんのね。でもブーメラン使ってみた時に威力弱すぎでナニコレってなったの。でもこのロングソードめっちゃイイやつだからこれを合成したらクソつよブーメランになりそーって思わね?」
右手でロングソードの柄を握り、左手でブーメランを握る。
ティアは「モノいじり」を発動させた。スキルの発動方法は習得が終われば感覚として身についている。
ロングソードとブーメランは白く発光したのちに光の粒子となり、その光の粒子がひとつになる。
そして合成されて生まれたのは……1本のロングソードだった。
若干、ブーメラン的な反りがついているように見えなくもない。
「何これ? まさかロングソードにブーメランの効果がついたとか?」
ティアはロングソードをなるべく遠くに投げた。
するとロングソードはヒュンヒュンと風切り音を鳴らしながら回転し、さらにブーメランのように弧を描いて所有者のところに戻ってきた。
ティアは大急ぎで屈み、高速回転するロングソードを間一髪でさける。
「あっぶ! 死ぬわ! エクストリームな自殺するとこだったわ! あ〜もう、こんなのが欲しいんじゃないんだって!」
“そりゃ投げたらそうなるだろ……”
“あぶねえwww”
“カスアイテムで草”
“考えなしに投げるなwww”
“なんという使い勝手の悪いスキルなんだ……”
ティアはコンテナボックスから次は細身で湾曲した片刃の刀……いわゆる日本刀を取り出し、さらにプラスチックで出来ている顔が描かれていないコケシのようなものも取り出した。
コメント欄は「え?」「あれって……」「まさか」という文字が流れる。
「日本人ならやっぱ武士の魂のカタナっしょ? これに電動マッサージ機を合体させちゃうねー! 名付けて“電マサムネ”! あーしほどの天才は武器と武器を合体させるみたいな凡人的なことはしないから!」
“武士の魂に電マを合成するな!www”
“ネーミングwwwww”
“最低で草”
“ついさっき武器と武器を合成してたやん笑”
“ダンジョン用品ですらない……”
“その電マはティアさんの私物ですか?”
“肩凝りをほぐす為の電マかな?(すっとぼけ)”
“もっと他に合成するものあるだろw”
“それを合成して何を目指すんだろう”
“振動でダメージアップさせたいとか?”
そしてまた「モノいじり」で合成させる。
出来上がったのは柄の部分にスライド式のスイッチがついた日本刀だった。
ティアはそのスイッチをONにする。
「おおおおっ!? すすすすっごい振動! いいいやでもも……かか……体も振動してるし、てて……手が痺れてこんなん使えるかーっ! あーしはアホか!?」
“予想通りすぎる……”
“振動属性って”
“ティアの脳みそ、煮卵説”
“投げ捨てられた刀が振動つづけてるwww”
“釣り上げられた魚みたいだ”
“次はウーマナイザーでなんかしようとしてるぞw”
“ひどい、これはひどい”
その後もティアは、バトルアックスやラブリュスのような斧系、スピアやパルチザンのような槍系の武器をカスタマイズしていったが、結果は散々であった。
「があああ!! なんなんこれ!? ハズレスキルじゃん!! スキルポイント無駄にしたー!! 誰だよこれ勧めたやつ? あーしの200ポイント返せー!」
失敗作の山の前で暗い顔でしゃがみ込んでいたティアは、雨空が日本晴れになったかのような顔になり、すっと立ち上がった。
「わかった! わかっちゃった! このスキルに必要なのは愛と勇気でしょ!」
“愛と勇気?”
“また訳のわからない事を……”
“いやな予感しかしない”
“もうやめた方が……”
“スキルの使い方が間違っているのでは?”
そして腰につけていた鞘からレイピアを抜き出し、コンテナボックスからルビー色に光るボール状のものを取り出した。
コメント欄がざわつく。
「あーしの愛用の“ブリトニー”に、思い切ってヴァルディアスの心核を合成してみるよー! 思い入れがある剣だから絶対にいける! たぶん!」
“それは……どうなんだ”
“定価9800円の剣に!?”
“ベースが安物はさすがに……”
“超レアアイテムを使うのはやめてー”
“そのレイピアってブリトニーって名前だったのかwww”
“命名センスが平成ギャルwww”
“ティアのギャル文化、微妙に平成なんよw”
“ヴァルディアスの心核は使っちゃだめー”
“方向性をかえて賭けに出たか……”
“失敗しすぎて冷静な判断力を失ってる”
“絶対にギャンブルをやらせちゃいけない奴で草”
ティア愛用のレイピア“ブリトニー”と、世界に数個しかない超レアな心核が合成させる。その様子をリアルタイムで数十万人が固唾を飲んで見守った。
光が消え……1本の剣が現れた。
ティアは何かを確信したかのように、にやりと笑う。
「やっぱあーし、モノいじるの天才すぎね? この聖剣ブリトニーでちょっと潜ってみるよー!」




