#21「今日は女優仲間と遊ぶぞー!」
池袋駅東口の待ち合わせ場所に現れたお嬢様風の女性が最上ティアだと知ったAV女優「姫澤はるか」は、驚いてスマホを手から落としそうになった、
「ええっ!? ティアさん?」
「うふふ、マジわかんないっしょ?」
「びっくりしました! どこかのご令嬢って感じです!」
姫澤はるかはドラマ形式のAV作品(タイトル:父の再婚で突然できたビッチ姉と甘えん坊妹に毎日迫られて僕の股間はもう限界です)でティアの妹役を演じた。
純朴な美少女タイプの姫澤はるかとの共演はその時だけだったが、ふたりは妙に気が合い、オフの日にときどき一緒に遊んでいる。
合流後はゲームセンターに行ったり、ボーリング場に行ったり、服屋を巡ったりと常に馬鹿話をしながらせわしなく移動した。
そしてファミレスで遅めのランチになった。
姫澤はるかは人気配信者としてのティアに興味津々で、チーズインハンバーグを食べながら色々と質問をしてくる。
「ティアさんの生配信ってとんでもない事になってますけど、広告収入みたいなのってやっぱり凄いんですか?」
「最新の配信分は抜いても、これまでで高級車1台分は軽く超えてるよー。国産か外車かはナイショー」
「わあ! でも投げ銭とかはやってないですよね? はじめたらもっと凄くなりそうですね」
「あ〜、あーしは自由でいたいし、やらないよ。お金出してくれる視聴者の気持ちはありがたいけど、そのコメントを特別扱いしちゃいそうじゃん? そしたらリクエストにも応えなきゃって思っちゃうだろうし」
「ティアさんって……意外と考えてるんですね」
姫澤はるかはナイフとフォークを置いて、少し寂しそうな目をした。
「だけど配信でそんなにお金が入るんなら、もうAV女優を続ける必要はないですよね……やっぱり引退しちゃうんですよね」
「え? やめないよ? だってAVって普通に楽しいし。あーしはAV女優が本業で配信は趣味! これはずっと変える気はないよー」
「よかったー! 寂しくなっちゃうなって心配してたんですよ。だってティアさんって有名すぎて住む世界が違う人みたいで……あ、そうだ」
姫澤はるかはバッグから綺麗にラッピングされた箱のようなものを取り出し、そしてそれをティアに差し出した。
「ん? なに?」
「1日早くなっちゃったけど、お誕生日おめでとうございます!」
「あ……そっか……」
AV女優の生年月日はでたらめだ。
彼女たちの誕生日は「3月3日」「7月7日」「2月14日」「12月24日」のようなゾロ目やイベント日に設定されているケースが多い。
生まれた年も本当の年とはズレているのがほとんどだ。
(実際2001年→公表2000年のように)
ただし「サバを読んで若く見せたい」というよりは「生年月日から身バレを防ぐ」という目的であえてズラしている。
そして当然ながら、最上ティアの10月10日という誕生日も本当の誕生日ではなかった。
包装紙をはがして中の箱を開けると、ティアが欲しがっていたとあるゲームキャラクターの小さなぬいぐるみが出てきた。
「これ限定品の! もう売ってないやつ! うわーめっちゃ嬉しい!」
「えへへー」
もちろん欲しかったものだから嬉しい。
けれどそれ以上に嬉しかったのは、自分が欲しがっていたものを覚えていてくれたことだった。
自分には、こんなふうに自分のことを覚えていてくれる友達がいる。
そう思うと、なんだか胸が温かくなった。
ティアはプレゼントのぬいぐるみを眺めながら考えた。
――――そっか、最上ティアの、年に一回の誕生日なんだよね。
翌日、ティアはダンジョンに潜って配信用ドローンを宙に浮かべた。
「今日は最上ティアの誕生日だよー! おめでとう、あーし! というわけで急遽誕生日記念配信をする事にしたぞー!」
事前告知もない急な配信だったが、通知を受け取った視聴者が次々と集まり、まるでバーゲン会場に人が殺到するように同時接続者数がドバーッと増えていった。
彼女の誕生日を祝福するコメントが大量に流れていく。
「おめでとうコメントあざっす! あっ、でもさ、ちょっと運営から配信でお願いされちゃった事があって、とりまそれを先に説明すっから」




