#13「ほらほら、なんでも質問してみ?」
ティアは視聴者に対し自分への質問を自由に書き込めと促した。
大量のコメントがいっせいに流れる。
それらはバトルについて、AVについて、ファッションについて、趣味について、好物についてと、とりとめがなかった。
「一気にわちゃわちゃ質問すんなー! バリエーションが多すぎて混乱するし! つぶれる寸前にあがいてるラーメン屋かよ!? こっちの都合もちっとは考えろー!」
“自由に質問しろって言ったくせに……”
“理不尽すぎるwww”
“暴れてて草”
“たしかにバラバラかも”
“ティアさーんコメントダイジェスト機能使いましょー”
“ドローンの内蔵AIでコメントまとめられます”
ティアは視聴者からのアドバイスに従って、コメントダイジェスト機能の設定をした。
これによって関係のない発言は除外され、似た内容の質問はまとめられる。
さらに、質問の多かったものからランキング形式で表示されるようになった。
「おまたせー! じゃあまずはダンジョンシーカーとしての最上ティアに質問したい事をコメントしてちょー! 制限時間30秒! おらー、急げ!」
また一斉にコメントが書き込まれる。
そして30秒後に集計が終わり、第一位の質問が確定した。
『どうしてティアさんはそんなに強いのですか? どこかで修行を?』
「あ〜、ちなみにあーし、攻撃力は強くないよ。修行って滝に打たれたりとか坐禅とか? そんなんするわけないじゃん!」
そう話しながら、よだれを垂らして襲いかかってきたゾンビドッグをするりと避けて、ぐさっとひと突きで倒していく。
「まーつまりね、敵が次にどんな事をしたいのかが分かんのよ。右にウインカー出してるバイクは右に曲がるっしょ? だったらそのウインカー見た瞬間にバイクが来る道にローション撒いたらコケるっしょ? ついでに弱点もわかるよ。なんとなく……直感で!」
“その修行はお坊さんになるやつだwww”
“話しながら倒してるモンスター強い奴だぞ”
“ローションまくなよw”
“なんとなく直感って……”
“わかったようなわからないような”
“動作の前に出してるサインが読めてる?”
“どうしてそんな事が可能なんだ”
“敵からしたら手の内がすべてバレてるって事だよな”
“パワーやスキルではなく戦闘センス型の無双か”
“天才かよ……”
数匹のゾンビドッグを片付けたティアはレイピアをデコりまくりの鞘に戻す。
「んじゃ次は、AV女優としての最上ティアに質問したい事をコメントしてー!」
また集計が行われ、第一位の質問が表示された。
『AVのティアさんはいつもとても気持ち良さそうにしていますが、AV撮影の時って本当に気持ちいいんですか? それとも演技ですか?』
ティアはその質問に「他の女優は知らんけど、少なくともあーしは感じてるよ」と答えてからさらに続けた。
「なんつーか、プロレスみたいなもんでしょ! 技をかけられたプロレスラーって普通にクッソ痛いと思うよ。大怪我だってするじゃん? でもプロレスラーって痛いだけじゃなくて、それを客に伝わるように見せるのがめちゃくちゃ上手いの。AV女優も一緒! 実際どう感じるかと、それをどう見せるかは別の話だから! 以上!」
“なるほど「説得力」ってやつか”
“プロやな――――”
“もっと気持ち良さそうに見せること、それも技術のうち!”
“視聴者がいる事は知ってるわけだしね”
“AVってドキュメントとフィクションの中間だもんな”
“プロレスでたとえるとは思わなかったw”
“でもわかりやすい”
“気もちいいのは間違いないのですね……エロい”
“さっきの圧倒的戦い見せられたあとの「感じてる」発言は破壊力あるw”
「じゃあ最後はプライベートについての質問でー。本名とか出身地は答えないぞ!」
それの対する第一位に、ティアは一瞬固まった。
『ティアさんは彼氏はいるんですか? これまでに何人くらいと付き合った事があるんですか?』
「彼氏は……いないけど……」
彼女には恋人はいない。
しかしそれは現時点だけではなく過去にもだ。
AV以外での経験は1人でしかも1回のみ。
相手は、名前すらもう覚えていない。
ギャルになったあと、「一度くらい経験してみないと……」と思っていたところに誘われて、なんとなくついて行っただけの男だった。
けれどそれを「ビッチ系女優」で売っている自分が素直に答えていいものか分からなかった。証拠があるわけでもないし嘘をついていると思われるかもしれない。
「おめーらが思ってるよりは少ないんじゃねーかな……ええと……」
これまでのような歯切れの良さがなくゴニョゴニョしているとコメントが急に増え出した。
“うしろ! うしろ!”
“ティアさーん!!!”
“ヤバいのきてるー!”
“何だあれ?”
“キモすぎる”
“そっか湿地帯だもんな”
そのコメントを見てティアは振り返る。
そこにいたのは、あまりにも巨大すぎるカタツムリだった。




