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#12「黒ギャルAV女優配信イクよ〜!」

「やっぱこういう格好が動きやすいし落ち着くー! どうせ攻撃当たんねーし!」



ダンジョン配信の予告日。


東京都北区赤羽にある都洞4号に潜ったティアはこれまでのように顔や全身を隠す事はなく、ダンジョン用プロテクター防具も一切つけていなかった。


上半身はへそが覗くほど丈の短い黒のトップス。

その上から薄手のフェイクレザージャケットを羽織り、袖は邪魔にならないよう肘までまくっている。


下半身はダメージ加工の入ったデニムのミニスカート。

腰には細めのチェーンベルトを巻いてアクセントを加えている。


そして足元は黒のショートブーツ。


厚めのソールだがヒールは低く、足首までしっかり固定できるタイプだ。

若い女性好みな見た目だが、靴底には滑りにくい加工が施されている。


とにかく、どこからどう見ても完全なギャルだった。



ティアは配信用ドローンを空中に浮かべた。

ドローン前面のランプが赤から青になって配信が開始された事を確認したティアはカメラに向かって、手のひらを上に向けたギャルピースを突き出した。

1990年代に流行し、最近になって再び人気が出ているポーズだ。



「わほー! 「アゲぽよギャルさんぽ」の生配信はっじまるよー! なんかもう正体バレちゃったしぃ? 今日からこれがあーしのダンジョン配信スタイルだからよろしくー!」



平日午後という時間帯にもかかわらず、コメント欄は凄まじい勢いで流れていった。



“キタアアアアアアアア!!!!”

“うおおおおおおおおお”

“ティアちゃんきたあああああ!”

“煮卵様ご降臨”

“待ってたでーーーー!!!”

“告知見て6時間前から待機してた”

“出演作全部観たよー!”

“通知から”

“ダンジョンに黒ギャルって絵がシュールすぎww“

“そんな格好で潜るのかよwww“

“ベテランシーカーが激怒しそうな服だけど最上ティアの方が強い“

“ティアさんマジで最強だからな”



ティアは見えない壁をさわるパントマイマーのように空中に手のひらをつけて動かした。コメント欄には「?」の文字が流れていく。



「スマートコンタクトはじめて目に入れてみたんだけどこれヤベーな。おめーらのコメントが空中に表示されてるし! 鬱陶しくなったら表示切るけど! つーかすでに鬱陶しいけど!」



“おおおおおおお!”

“切るんかい笑”

“鬱陶しくなるの早すぎ!”

“スマートコンタクトってクソ高いやつだっけ”

“あ、今回はアーカイブ設定になってる”

“頑張ってー!”

“やっぱスタイルいいなー”

“スタイルいいけど正直俺は顔が好き”

“潜ってんのは湿地系ダンジョンか”



ティアはこの日の為に気合いを入れたというネイルを視聴者に力説しながらダンジョンを進んでいく。


都洞4号は、ダンジョンとはいってもいわゆる迷宮ではなかった。

ジメジメとした湿地帯で、見上げれば薄暗い空がどこまでも高く広がっている。


その湿地帯は広大ではあるものの、永久に続いているわけではない。

亜空間であるポータル内は「箱庭」のようになっていた。

一つの空間には広さの限界があり、階段などから下階へ潜るかあるいは転移ポータルを使って別の空間へと移動するのだ。



湿地帯の奥から3つの背びれが近づいてくるのにティアは気がついた。

泥水を跳ね飛ばしながら地面に現れたのは、魚の頭を持った3匹の二足歩行モンスターだった。


身長は二メートルほど。

青灰色の皮膚は湿った鱗に覆われ、その手には鋭い爪が生えていた。

3匹の半魚人は「グルルル……」と低い唸り声を上げながらティアを取り囲む。



“サハギンじゃん!”

“こいつら連携プレーしてくるから厄介だぞ”

“まだ自分のネイル気にしてる”

“自分の爪はいいからそいつらの爪に注目しろよ!”

“やっぱその格好は観ててハラハラするかも”

“同接50万超えてる……すっご”

“さすがに手こずるか?”



突然、正面のサハギンが口から強烈な水鉄砲を吐き出した。

しかし吐く直前にすでに屈む動作に入っていたティアは避けたあとに踏み込んでレイピアで貫いた。


残った二匹が左右から同時に飛びかかってくる。

ティアは二匹の爪の攻撃をレイピアで受け止めたが、後ろへ大きく弾き飛ばされた。

彼女はそのまま空中でくるりと身体を回転させ、片膝をついて着地した。


着地した場所は湿地帯を横切る細い土の道だった。

好機と捉えたサハギンたちがティアに向かって走り出したが、道幅が狭いため二匹同時には進めない。

一匹が先を走り、もう一匹がその後ろについた。



「はい、これで二匹まとめてでいけるっしょ」



次の瞬間――――レイピアを投げて、一直線に並んでいた二匹をまとめて貫いた。



“え”

“なにが起きた”

“10秒も経ってないよな?”

“あっさり終わった”

“弾き飛ばされて敵が一直線になる道に移動したって事?”

“そもそも最初の水を避ける動作がやべー”

“空中回転や剣投げは初期スキルでできるけど……”

“なんだこのお姉さん……”

“一発で弱点に当てる精度がおかしい”

“力じゃなくて圧倒的な読みで勝ってる”

“どのタイミングでこの流れで戦うって決めてたんだろう”

“というかまだネイル気にしてるwww”



ティアは涼しげな笑顔をドローンのカメラに向ける。



「しばらく雑魚しか出ないから退屈だと思うよー? あーしも退屈だし。だからQ&Aコーナーするから、おめーら何でも質問しろー!」

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