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込められた敬意

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sideデザール


 コルンの悩み事を話し合ってから次の日、俺は訓練所まで行くために廊下を歩いていた。

 

 「おはようッス!」

 「あぁ、おはよう。…そういえば、最近、見ていなかったが何をしていたんだ?」

 「俺ッスか?」


 同期の中で中級騎士に階級上げされた、ラインハルトやテテルの二人は風龍騎士団の人員不足の為に派遣されているが、ホウズキは何故か、派遣どころか小隊長に選ばれずにいた。

 なのに、ホウズキは二週間近く、顔を見ていなかったが、久しぶりに顔を合わせをしたのでいったい何をしていたのかが気になった俺は聞いてみる事にした。


 「そうッスね…」

 「言えない理由でもあるのか?」

 

 ホウズキは少し唸りながらも教えてくれた。

 

 「いや〜…実はヨゼフ上官から少し調べ事を頼まれてるんッス」

 「調べ事?」


 ヨゼフ上官から直属の調べ事と聞いて俺は首を掲げる。


 「そうッス。実はカーラッシュ家を筆頭とした、リフェイス家とランフェス家の三つの貴族がキナ臭い動きをしているから調べる様に頼まれたんッスよ」

 「面倒ごとが起きそうな案件なのか?」

 「今のところは変な動きは無いッスけど…面倒ごとになりそうなのは、同意するッス」


 貴族内での動きはあまり詳しくは調べられないが、注目が引かれるところも多くある。

 名の知れた貴族が動き出すのは、ある意味現代で言う、政治関連の動きに等しいものだ。

 現状は平民でもある俺でも、どうしようもない話だが、帝国内で起こっている内情を知る事ができる重要な事だ。


 「詳しく聞きたいが…今は小隊の事がある。落ち着いたら、話を聞かせてくれ」

 「了解ッス」


 とても興味深い話では、あったが今の俺には、明日の小隊模擬戦を控えている身である以上、時間を無駄に出来ない為、落ち着いた時に聞かせてくれた言って、ホウズキと別れ、廊下を歩き出す。


 「デザール隊長、おはようございます」

 「あぁ、おはよう」


 コルンは俺に敬礼をしながら挨拶をしたので、俺も敬礼して応える。


sideコルン


 「朝の鍛錬は見てやるが、夕方の鍛錬は無しだ。理由は、明日の模擬戦の為に身体を休める事だ」

 「わかりました」


 デザール隊長への挨拶が終わると鍛錬について話を聞き、明日のために今日の鍛錬は朝の鍛錬しか、出来ない事を言われる。


 「…なにか話したい事があるか?」

 「はい」


 何かを察したのか、デザール隊長は私の目を合わせて、話す。


 「昨日の事で、私なりに一人で考えました」

 「そうか…答えは出たのか?」

 「はい」


 昨日、デザール隊長に『失敗を恐れ過ぎれば、前には進めなくなる』という言葉に深く突き刺さった。

 確かに、私はこれまで没落を回避する為に焦る事が多くあった。

 この一ヶ月間も余裕なんて、無い中でメルドという男に告げられたデザール隊長の出身に悩み事だらけだった。


 「…私は、デザール隊長に剣術を志願しました」

 「そうだな」


 あの日、デザール隊長は私の志願を許してくれたのかは、そんなのは分からない。

 帝国の平民は貴族を好ましく思わないのが当たり前の中、私の実家は存続が危うい貴族だ。

 それでも、私は貴族の一人娘として、実家の助けになるべきだと、考えた上で騎士になった。

 その決意に後悔をした事は一度もない。

 貴族の一人として、役目を果たす為に生きると誓った以上、私は此処で強くならなければならない。


 「私は学びを乞うた人に対して、失礼な考えをするというのは、あまりにも無作法な考えであると思いました」

 「…」


 デザール隊長との最初の出会いは、最悪と言っていいだろう。

 なにせ、私は実家の事に焦りすぎて、貴族階級が高いドラグラーツ家の一人娘でもあるセラータ様への異動を志願した。

 それはあまりにも、印象を悪くする酷い発言をしたと、後悔をしている。だけどーー

 

 「だからこそ、私は貴方から剣術を学んだ事に後悔はしてません」

 

 この人はこんな私の願いを受けれてくれた恩人でもある人だ。

 デザールという人は、どんな育ちであれ、光龍騎士団という名のついた入団し、実績を残すまで成り上がった人。

 それはどれだけの失敗を繰り返して来たのか、それはきっと、私にも知り得ない険しい道のりだったことに間違いはないだろう。

 だから、今度は私に剣術を教えて後悔がなかったと…言えるように示す。


 「キュアス家の長女である、コルン・キュアスは学びを乞うた師に間違えがなかったと、明日の模擬戦だけでなく…これからも、そう言える様に精進します!」


 この人に強くしてもらった事を誇りに思える様になる為に…私は、私が出せる敬意をこの言葉に込めた。


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