知らない感情。
お久しぶりです。
ようやく書けました…。
sideデザール
「キュアス家の長女である、コルン・キュアスは学びを乞うた師に間違えがなかったと、明日の模擬戦だけでなく…これからも、そう言える様に精進します!」
コルンの言葉に温もりの様な感覚を感じ、俺は動揺してしまった。
「そ、そうか」
この感覚は何なのかは分からない。ただ悪いものではないかとなのは分かる。
だが、今はそれを置いておき、次の言葉をかけなければならない。
「…期待しておく」
「はい!」
コルンは俺の少し上から目線すぎたと思える発言を気にせず、元気良く真っ直ぐな目で応えた。
迷いが少し晴れたのかは俺にはわからないがその変わりようが何処か眩しく感じた。
「少し、取り忘れたものがある事を思い出した。先に訓練所へ向かってくれ」
「わかりました!」
俺は初めて感じた感覚に考える時間が欲しくなり、コルンに先に訓練所へ先に向かうように言う。
その命令にコルンは従って先に訓練所へと向かっていくのを見届ける。その姿が消えるまで見届ける。
その姿が消えた事が分かってすぐに冷静に考えた。
「この感覚は一体?」
どう考えても分からない問題を出されたような自身の問いにどうすればいいのかがわからなかった。
この暖かさは一体なんだ?
前世の俺が見ていた世界とは全く別の何かだという事は分かる。
しかし、それが何なのか何度考えてもこの感情が俺には分からなかった。
「だが、悪くない」
考えてもわからない感情は不思議と悪い感じではないという事だけは理解できる。
そして、何故かこの感情が少しずつ消えていく事に寂しさも感じた。
まるで前世の俺が見ていた幸せそうに手を繋ぐ親子の姿を一人で見ていた時の様な寂しさを感じる。
少し深呼吸をして、窓から見える晴れた空に視線を向けながら俺はこの感覚が夢でない事を願う。
もし、これが夢だというのならどうか醒めないで欲しい。
一度死んだ俺が転生して初めて感じた感情が夢であってほしくない。
そう思える程、俺は少しずつ消えていくこの感情を失いたく無いと思えた。
「失敗はもうしたくない」
感情を失った前世と変わった世界で人との関わりが増えた事で悩む事は多い。それでもまた、俺自身が変われるかもしれないチャンスが来た以上、失敗せずに誰かと関わりながら生きてみたい。
今度こそ、俺は――変われるかもしれない。
この感覚は夢では無い。コルン・キュアスという誇りを持った騎士がくれた言葉がその通りになったら、手を伸ばしても届かなかった前世で見たあの人との繋がり合う様な生き方を出来るかもしれない。
「…そう願いたいな」
だから、俺はコルンの誇りが叶うことを俺は願いながら迷うことなく訓練所へと向かうことにした。
―――
光龍騎士団団長室にヨゼフは団長であるマルスに明日行われる模擬戦について話していた。
「――遂に明日か…」
「えぇ、明日ですな。マルス様」
膨大な広さを持つ帝国領に軍である騎士団の存在は必要不可欠だ。
しかし、その軍隊である騎士団は増えすぎの為か騎士団員全体の質が低さが問題視された事で今回のような小規模に小隊の区分けが行われた。
いままでは全体に的に訓練を行なっていたが、「それでは強い兵が現れないでは?」と考えられた。よって今回のような一部の兵士達による小隊に分かられた。
「今回の小隊区分けは、順調ですが…なにか、ご不安な点でも?」
ヨゼフは眉間にシワを寄せている騎士団長のマルスに何か問題点でもあるのかと、質問する。
「いや、その事では無い。確かに騎士団内の成長は良くなる事はいいが…」
「やはり、報告にあったカーラッシュ家の領土であるリペル領土の貴族達が謀反を起こそうとしているという噂が気になりますか?」
「あぁ」
マルスとヨゼフが話すリペル領土のカーラッシュ家を筆頭にした貴族達による謀反を起こそうという噂がたっていた。
この問題に対して、ヨゼフは団員であるホウズキという青年に調査を出した。
その結果は、灰色という結果だった。
「俺の予想では、早いうちにこの問題を潰して起きたいと考えているが…証拠や理由なく、行動に移せない」
「そうですな。しかし、放っておくことも野放しにもできない。困りましたな」
マルスとヨゼフは現状では、この問題に対して、決定的な証拠が無い上に噂程度では、騎士団を動かさないことに互いにため息を吐く。
「全くそうだ。だから、今回の模擬戦が終われば、リペル領土付近の警戒を強める」
「御意」
マルスの命令を聞き入れるとヨゼフは団長室から去っていく。
座っていたマルスはゆっくりと立ち上がって暗くなった夜空を見上げる。
「帝国は領土を広げ過ぎた結果か…。上が腐れば反旗の狼煙も上がるのは、当然だな。だが、そんな輩…この私が一人残らず殺してやろう」




