話し合う二人と影に動く一人
投稿〜
ヨゼフ上官の話から夜になり、仕事を終えて羽ペンやインクの入った瓶を固く閉めそれらをバックに席から立ち上がり、絹製のロングコートを手に掴む。
「ねぇ、デザール」
後、二ヶ月も経てば春になるが外はまだ冷える時期な為にロングコートに腕を通して帰ろうとバックに手をするとセラータから呼びかけられる。
「なんだ?」
「色々と話がしたいから…一緒にどう?」
「分かった。なら、俺のいつもの行き付けでいいか?」
「えぇ、そこで構わない」
セラータが相談をするのは不思議なことでは無い。不思議なことでは無いがこの五年間見た方が彼女は何かと昇格に関わる事には俺かホウズキに話をする。
「じゃあ、あとは頼んだ」
「了解です」
光龍騎士団が保有する施設の警備兵に挨拶を済ませるとバックを肩にかけてからセラータと並びながら歩いて近くの工房ミズガルズにあるトーマスがいる食堂へとまっすぐ入って適当に注文を終えると食べ物が来るまで話し合う。
「それで相談はなんだ?」
「えぇ、単刀直入に言うと今回の兵力増強に関して貴方はどう思う?」
「いきなりだな…だが、そうだな」
セラータが話す兵力増強に関する事を考えると少し遅過ぎる話だと、俺は思っているがセラータも流石にそれは理解しているだろう。何せ、兵力増強の話は五年前から行われていた事だ。
「兵力増強を五年も遅くしたのは多分だが、兵士の数だな」
「やっぱりそうなるか…」
「あぁ、五年前のピュルル大森林掃討作戦での死者と二年前に起きたガラチュア山脈の土砂崩れで帝国の優秀な騎士が亡くなったからだろう」
二年前に起きたガラチュア山脈の土砂崩れで二つの騎士団が拠点としていたガラン砦が土砂崩れに巻き込まれて三百名の兵士とその近くにいた鉱山の村の人々が下敷きになった事故によって帝国は兵力増強がさらに著しくなり、帝国の金庫とも言える鉱山の土砂崩れはかなりの痛手だ。その為、早期復帰のために復興にも多額の資金が使われたと騎士団内で聞いた。
「その上、死んだ兵士はほぼ中級騎士達だ。尚更、焦りも出るんじゃないか?」
「そうなるよね…なんだかんだで優秀な騎士が離職が続いているからこそ、指揮力の低下が発生しかけていると、上級騎士の先輩方も言っていた」
この五年間で帝国軍は五つの騎士団の内から二つも指揮力低下している。特に一番指揮力低下をしているのは風龍騎士団は特にそうだ。
「災害続きで巻き込まれた風龍騎士団は他よりは兵士の数が多いが上官の離職率がこの五年間で多いせいで指揮が低下しているのは有名な話」
「二番目に指揮力が低下しているのは火龍騎士団だな…あそこは貴族同士の派閥争いが起きてしまっているらしいな」
「派閥争い?」
「あぁ」
セラータは火龍騎士団の派閥争いに興味を持った。興味を持つのも無理もないだろう。何せこの情報はたまたま都市の巡回任務を一人で受けていた際に聞いた情報だ。
「噂話だと、思っていたが興味があって色々調べたら本当らしい」
「…派閥争い。何処の貴族が争っているの?」
「イヴァリア派とクェイト派の二つが争っているらしい」
イヴァリア家は聖魔剣一族と呼ばれている貴族で帝国建国から代々忠誠を誓う貴族。そんな貴族に対立しているのがクェイト家は商人から成り上がり貴族の家系だが、火龍騎士団に入団してから強力な叡智に覚醒し大貴族と渡り合えるような力を付けたらしい。
「まぁ、他の団の話はここまでにして置こう」
「そうね」
他騎士団の内部については、調べれば調べるほど興味深くものが増える一方だ。特に光龍騎士団と並ぶ火龍騎士団はお互いに情報を探り合いながら落とそうとし合っている中だ。深入りは禁物だろう。
「はいよ、うさぎ肉のぶつ切り焼きと冬のとれたての山菜サラダに林檎酒全て二つずつだよ!」
話し合っていると食堂の店員に食事が運ばれる。
「とりあえず、乾杯」
「えぇ、乾杯」
俺とセラータは木製のカップに入った林檎酒で乾杯して少し飲んでからお互い出された食事に手をつける。
「今回は兵力増強策で重要なのはやはり、個人の能力だな」
「そうね」
人には不得意があるがあり、自分に向いているものに仕事をさせるか、逆に不得意なものをあえてやらせて、出来ない部分を見てからそこを指摘しながら育てるのは上の役目だ。そこから、信頼関係を築ける場合もある。
「準備まで五日ある。それまでに部下になる奴の情報を集めておく方がいいと俺は思う」
「部下になる人の情報を…参考にする」
人を育成するのは大変な作業だ。そもそも人に教え方によってはついていけない者出る場合もある。
「セラータとしては部下をどう育成するんだ?」
「方針としては、文武両道にしたいけど…最低でも私たちが今やっている簡単な書類作業が出来るまでと決めてる」
「そうか。なら、俺と一緒だな」
書類作業はこれから先重要になる作業だ。この世界では文字や計算はほぼ金に余裕がある家庭でしか、学べないものだ。負担を減らすのはこれから先重要なことになる事は間違いない。
「じゃあ次は――」
その後は食事が食べながら、お互いに五日後の話終えると食堂から出て別れる。
「それじゃあ、俺は帰る」
「えぇ、貴方の案は参考にさせてもらった。今日はありがとう」
「お互い様だ。おやすみ」
「おやすみ」
俺はセラータと別れるとククリ亭と呼ばれる元の世界ではアパートに近い宿屋へと帰る。
今思えば、寮暮らしから暮らしやすい環境まで出来たと実感しながら、今日という日が終わった。
sideホウズキ
夜の街の路地裏にフードを被った青年ホウズキがある場所で藁を咲いて寝そべっている老人の前で立ち止まる。
「魔神柱を制御し古き王は指にはめられは輪にて」
ホウズキは呟くと老人は瞑っていた目を薄らと開けてその言葉に続く様に話す。
「それら全てを制御をする」
老人はゆっくりと体制を整えてからホウズキを見つめる。
「最近、そちらからの呼び出しが多くないッスか?こちらにも任務がある。あまり不要な呼び出しはやめて貰いたいッスけど?」
「私は本部の使いだ。文句があるならそちらに言え、ホウズキ」
ホウズキは少し不機嫌になりながら話すが老人は涼しい顔で流される。
「…要件はなんッスか?」
「要件は二つ、一つは帝国軍の兵力強化についてだ」
「いつも通りッスね…二つ目は?」
ホウズキはいつも通りの仕事だと、思いさっさと話を終わらせようとする。
「二つ目は可能ならだ。リフェイス家の長男が最近武器を開発したらしい」
「武器?」
ホウズキは新たな武器が開発されたと聞いて眉間にシワを寄せながら話を聞く。
「詳しくはまだ分からないが…調べられるようで有ればその資料を回収して本部に届けよとの事だ」
「…了解」
「以上だ。私は本部に戻る」
老人はそう言うと影に飲み込まれるように沈んで行き消えとホウズキは暗くなって見える夜の星空を見上げる。
「やれやれ…厄介な情報をくれたな」
ボヤきながらホウズキはその場から去っていく。




