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光龍騎士団長から指令。

投稿〜

 『人は敵と認識したものには徹底して避けるか攻撃的になる』


 五人の若い帝国軍人騎士の死体の酷い状態が目に入る。身体をバラバラにされた者や全身を焼かれた者と様々な状態で誰も目を背けたくなるほど酷い仕打ちだった。

 

 「…戦争になればこの光景は当たり前になるのは理解していた…だが、現実を前にすれば…」


 両手で致命傷を受けてこと切れた赤髪の少女を抱えながら俺は一人、立ち尽くす。


 「俺が一緒に同行していれば…」


 ポツポツと雨が降り始める。雨に浴びながら動けずにいた。

 その場にいる死んだ者達の生きていた頃の記憶が頭中で映し出される。


 『デザール上官殿、おはようであります!』『その剣術教えていただけないでしょうか』『俺にも剣術を教えてください』『頑張らせてもらいます』『自分は隊長の下につけて良かったです!』


 五人がかけてくれた言葉は俺にとってはじめての暖かい後輩という存在を失った俺はその場で愕然と動けなかった。


 「…何故こうなってしまったんだ」


 春の叛逆戦争『リペルの叛乱』が始まる二ヶ月前に遡る。


――――――――――――――――――――――――


 ピュルル大森林で起こったオークジェネラルが率いた魔物大繁殖(スタンピート)から五年の月日が経ち、俺ことデザールは十七歳になった。

 騎士の階級はピュルル大森林戦から第三級中級騎士から五年かけて第二級中級騎士へと一つ上の階級に昇格した。中級騎士からは事務関連の仕事が課せられる様になる。


 「デザール」

 「なんだセラータ」


 紙の書類を片手に話かけてきたのは黒髪とオッドアイが特徴的な女性、セラータだ。俺と同じ騎士階級。

 

 「この資料の見直しを手伝って」

 「構わないが…ホウズキは?」


 赤髪で糸目が特徴的な青年ことホウズキがこの場ないない事を聞くとセラータはため息を吐く。


 「他の仕事とか言ってどっかに行った」

 「…そうか」

 

 セラータの呆れ顔を見て、俺も納得した。ホウズキは資料関連の仕事はできない事ではないが、中途半端な仕事してから何処かへ消える。


 「だからと言って貴方も逃げないでよ、メーデン」


 セラータは俺の隣に座りながら書類の見直しを唸りながら挌闘するメーデンに言う。


 「逃げねぇよ…」

 「若、頑張って下さい」 


 メーデンは戦闘に関する事なら優秀だが、書類関連の仕事が苦手らしい。特に計算は大の苦手で悪戦苦闘している。何とか、バロッサに手伝ってもらいながら仕事をこなしている。


 「そこ計算間違ってる」

 「ぐっ…」


 メーデンは計算が出来るセラータには、この時ばかりは反論出来ない。


 「デザールに関しては仕事早くて助かる」

 「慣れれば、どうって事は無いが…だからと言って増やさないでくれ」


 セラータは何気にホウズキの分の仕事を置いてくるので一応言っておく。

 前世が事務的な仕事をこなしていたのでこなせるがパソコンなどがあった前世と比べれば時間がまだかかる方だが、五年も経てば慣れもする。


 「まぁ、構わないが…この書類は?」

 「どうしたの?」


 俺はセラータに渡された書類を見ていくと気になる書類の一枚が目に入った。そこには光龍騎士団の入団者のリストと俺やセラータ達の名前が記されていた。


 「これは去年の入団者達の名前」

 「それと私たちの名前が記されてる」


 書類を見ているとセラータも気になって横から書類を見ていると部屋の扉が開く。


 「失礼するよ」

 「ヨゼフ第一級中級騎士!」

 「「「ッ!」」」


 俺やセラータ、メーデンは立ち上がって部屋に入って来た上官のヨゼフに敬礼する。

 

 「うむ、新たな職場での仕事には慣れてきたようだね」

 「はい」

 

 ヨゼフ上官は顎から伸びた髭をさすりながら、俺達を見つめる。


 「それでヨゼフ上官殿は此度はどのような要件で」


 メーデンはヨゼフ上官が何故、自分達の部屋まで来たのかを聞く。確かに中級騎士になってもヨゼフ上官に出向く事はあってもヨゼフ上官自身が下の階級の者に会いに来る事はあまり無い。


 「えぇ、中級騎士階級…それも第二級になった君達に光龍騎士団長から直属の指令が来ました」

 「「「「!?」」」


 ヨゼフ上官から発言された『光龍騎士団長からの指令』という言葉に驚きを隠せない。なにせ、光龍騎士団の団長とは、即ち光龍騎士団のトップである。そんな上官からの指令となれば驚かずにはいられない。


 「近年、各騎士団は兵力増強が課題に挙げられていますがその成果は中々上がらない事に問題視されています」


 ヨゼフ上官は話を続けながら騎士団内での兵力増強の話をする。第二級中級騎士になってから騎士団内で話されていた課題だ。大帝国は膨大な土地を持っている国な為に五つの騎士団に分け、大帝国の領地を守っている。しかし、ある年を境に兵力増強が著しくなった時期が起こってしまう。それは未だ解決出来ず問題視されている事だった。


 「その為、各騎士団内での会議で議論の結果、第二級中級騎士を筆頭に一年下の騎士たちを部下に持って強化してもらうという案が各騎士団で決定されました」

 「…質問してよろしいでしょうか?」


 俺はヨゼフ上官の話を挟んでしまう事覚悟で質問する。


 「何ですかな?デザール君」


 ヨゼフ上官は俺に目を向ける。


 「何故、それをこの場でするのでしょうか?」

 

 先程の話を聞いていると、中級騎士それも第二級までの騎士が新兵達を鍛えると言う話は見えるがそれを何故この場に四人しか、いない者達に話す理由が無い。これでは他の第二級中級騎士達に話が回らない。


 「ふむ、当然の疑問ですね。それは光龍騎士団長が全体的に浸透するには時間がかかる為、徐々に増やしていく方針で決めました」

 「…なるほど」

 「想像通り、君達は光龍騎士団で最初の方針を行ってもらいます」


 ヨゼフ上官のその言葉に俺や他の三名も納得した。これは光龍騎士団長から若者に華を持たせる為の指令だけでは無い。今後の昇格を賭けられている可能性が高い上に俺達を試している。

 

 「この場にいる君達と他、六名にこの指令が渡されます。五日後の昼頃に集合命令が下るので準備しておくように」

 「「「「了解」」」」


 ヨゼフ上官はそれだけを言うと「失礼」と言い残して部屋から去って行った。

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