森のスナイパークラス討伐
sideセラータ
オークジェネラルから大きく離れ、森へと一直線に剣を片手に走るセラータとホウズキはゴブリン達を斬り伏せながらピュルル大森林へと向かう。
「はぁはぁ」
やっぱり、私自身の叡智自体が強いのは理解していてもそれを制御するには、まだまだ未熟なところが多過ぎる。
「はぁはぁ…ふぅー」
「大丈夫ッスか?」
息を整えていると後を追ってきたホウズキが私を心配する様に話し掛ける。
「えぇ、まだ何とか…それより、スナイパークラスの場所は掴めた?」
「掴めるには掴めてるッスけど…」
「?」
ホウズキにスナイパークラスの位置聞くがホウズキは眉間に皺を寄せながら気難しそうに応える。
「森の中に三体が弓を持ったゴブリンがいるッス。これらのどれかがスナイパークラス…こちらに気付いたのか、三体とも弓を構えて止まってるッス」
「三体…ッ」
数が多い魔物は厄介というのはこの事なんだろうと私はこの戦場で理解していたがここまで厄介になるとは、思いもしなかった。
「つまり、その三体の内のどれか…」
「そうッス」
どうするべきか考えろ私。
ちまちまと一体ずつ倒す…いや、それだと時間がかかり過ぎるし、逃げられる可能性が高いや不意打ちの可能性も…どうする。
セラータは頭を剣を持っていない片手で押さえながら考えているとふと、ある言葉を思い出す。
『セラータ、もし貴女が戦場に出る時が来たらこれだけは覚えておきなさい』
それはセラータに剣を教えた師の言葉であり、自身と同じ野望を持っていた人の言葉。
『戦場は常に駆け引きが追及される。だから、その時の選択は常に早く選択を選びなさい。答えが無い場所に正しい答えは自身が出すしか無いの…だから、迷うなら己がもってる力全てを使って前に進みなさい」
セラータは師が教えたその言葉を思い出すと真っ直ぐ先に見えるピュルル大森林に潜んでいるスナイパークラスに思考を尖らせる。
「ホウズキ」
「なんッスか?」
今までのスナイパークラスの行動を改めると狙ったのはほぼ現場指揮官、リーダーのどれかしか、分からなかったけど…あの時、メーデンが飛ばした岩を砕いた矢を撃つぐらいの威力を出すなら相当な集中力と溜めが必要。
「弓を持っているゴブリン達の場所を全て教えて」
「ぜ、全部ッスか!?」
ホウズキはあまりの極端な質問に驚くが時間が無い為話を続ける。
「えぇ…策が一つだけあるけど、場所が分からないとこの策は成り立たない」
「その策、大丈夫ッスか?」
勝率ははっきり言えば魔物方が上だが、位置を把握出来るホウズキの索敵能力とその敵へ向かい殺す力があれば出来る。
「えぇ、貴方と私の力が有れば勝率はまだある」
「了解ッス…作戦は」
――――――――――――――――――――――――
私はホウズキに作戦を教えると反論されたがこれしか無いと言い意見を通した。
「フー…魔力はまだ残っている。策を練ったからには成功の一文字しか無い」
セラータはそう言うとただひたすらに剣を片手に走りながら向かって来るゴブリン達を手に斬り伏せるながらセラータは舞う。
「剣舞『雷太鼓・迅雷』」
ドン!
強い太鼓の音が響くと同時にセラータが立っていた場所の地面が捲れ上がり、セラータが走る速度が大きく上がる。
「ぎゃ!?」
ゴブリン達はセラータの凄まじ過ぎる速さに追い付けずに何も出来ずに斬られて死ぬか蹴り殺され、足場にされて通り抜ける。
『策はシンプルに正面突破』
『無茶苦茶な策じゃあ無いッスか!?』
『そう、でもこれしか無い。スナイパークラスは岩をも貫く剛弓の持っている』
セラータは慌てるホウズキに自身の策を語る。
『けど、そいつは魔物癖に考えて行動する奴、そんな奴はそう簡単に矢を撃たないはず…だから、そこを狙う』
『まさか、三体同時の攻撃を交わしながら向かう気ッスか!?』
私はホウズキのその言葉に頷く。無茶と無謀な策だが、私の叡智を目と耳に集中すれば、後は剣舞で雑魚の矢は撃ち落とせる。
『これしか、策が無いの…』
『無謀過ぎるッス!』
『なら、これ以外の方法はあるの?』
『ゔぐっ…』
私がホウズキにそう言うと否定出来なくなる。
頭を抱えたホウズキは諦めた様に力を抜いて、腰に付けていたポーチを開けて何かを取り出す。
『わかったッスよ! それならこれを使ってくださいッス!』
『これって魔力札?』
魔力札は確か、強い魔力を浴びて育った木を札に切り分け、そこに魔法を書き込んで完成する道具の一つ。魔法が使え無い人でも魔法を書き込まれた木の札を割ることで使えるが使い捨ての道具。
『魔法はただの『煙』ッスけど、やばい時に使うッス』
『わかった』
ホウズキと話した策の話を思い出しながら一直線に向かって行くと乾いた音がセラータに左から向かって来るのを理解するとその方向に向かって剣を振るい撃ち落とす。
「弱い、お前は違う」
今度は林に隠れていたゴブリンの攻撃が見えるところからの飛んでくる矢を片足を主軸にして回って撃ち落とす。
「お前も違う。なら、そこ!」
さっきの二体目の攻撃も容易く撃ち落とせる矢なら、まだ撃って来ない奴が本命のスナイパークラス持ち! 最後の一体は平野からでも見える巨大な岩の上に陣取る一体のゴブリンが弓を堂々と構えていた。
「剣舞『雷太鼓・迅雷』」
岩山にまだ弓を構えるゴブリンに目を向けて、セラータは放たれた矢の様に向かう。
(まだ、撃って来ないという事は強力な一撃が来る! 喰らえば死…矢が放たれるタイミングを見極めて、強力な一撃を喰らわせる!)
セラータは林に入るがゴブリンスナイパーはまだ矢を放たない。
「剣舞――」
走り出しながら次の舞を片手で構えるセラータを前にしてもまだ放たない。
「雷太鼓――ッ!」
ゴブリンスナイパーは矢を放たれ、セラータの胸を目掛けて飛んでいく。
パキッ
向かってくる矢が直前にセラータを前にして魔力札を折り、煙が噴き出すが同時に打ち付けられる音が響く。
「ぎゃぎゃ…」
ゴブリンスナイパーはセラータを殺したと思いすぐに次の矢を矢筒から取り出そうする。
ドーン…
「ぎぃ!?」
太鼓の様な音が聞こえ、ゴブリンスナイパーはまだ煙が出るところに矢を二発いるであろう場所を読んで放つ。
ドーン…
「ぎぃいい!?」
今度は先程の場所の右から太鼓の様な音が聞こえ、矢を放つが手応えがない。
ドーン…
「ぎぃいい!?ぎぃいい!」
今度は左から聞こえ瞬時に放つが手応えがなく、ゴブリンスナイパーは混乱して、取り乱す。
ドン!
「ぎぃいい!?」
今度は強い太鼓が響くと岩の下から両目が紫の瞳を持ったセラータがバチバチと雷を派生させる剣を片手に現れる。
「『雷太鼓・春雷(落)』」
「ぎゃぁああ―――」
セラータの強力な雷を纏った突きの一撃を顔面に突き刺される。
強力な雷を纏う一撃はゴブリンスナイパーの上半身を焼き尽くし半身だけを残して絶命する。
「はぁはぁ…後はオークジェネ…」
ゴブリンスナイパーを討ち取ったセラータはフラつき、自身の叡智『龍姫の瞳』が強制的に解け意識が遠のいて行く。
「だ…め…まだ、敵が…のこ…」
力が抜けて跪く様に倒れて薄れゆく中、セラータは師の言葉を思い出す。
『セラータ、貴女の叡智は凄い力だけど、それと同時に大きな欠点がある」
『欠点?』
『強力な力を使えば必ず反動が大きい。貴女の力は魔力が無くなれば戦闘不能…私の見立てだと、完全解放すれば三日は動けなくなるでしょうね。死にはしないけど、反動が大き過ぎる力』
『…』
『だから、その時、守ってくれる仲間を集めなさい。これ師である私の最後の教え』
セラータは魔力を使い切ったせいで意識を失い地面に倒れる前にホウズキに支えられるのがわかるとセラータは目を閉じる。
「十分な働きッスよ…流石、あの人の弟子ッス」




