叡智
今年の初投稿〜
sideセラータ
状況は最悪…切り札の使わずして、生き延びるのは不可能。
「時間を少し稼げる?」
「構わないがが…なにか策があるのか?」
デザールの言う通り、数は敵が多い上にオークジェネラルという存在のせいで魔物達の指揮力は大幅に上がっている。
「…私の切り札を使う」
「切り札…叡智か」
「えぇ」
デザールは剣を構えながら私の切り札の事に察したようだ。
理解が早くて、助かるがすぐに叡智に気が付かれた事には驚いたが無駄な時間を敵に稼がせない為にすぐに説明をする。
「私の叡智は発動させるために魔力の調整が必要。だから、ほんの少しだけ時間を稼いで欲しい」
「…わかっ――「待つッス」ホウズキ?」
sideデザール
「スナイパークラスがまだ森中にいるッス!」
「そうだった…オークジェネラルの存在が強過ぎて忘れてた」
セラータの言う通り、状況はほぼオークジェネラルに目が向いていた。
確かにスナイパークラスを残すのは愚策にも等しい上にオークジェネラルの余裕な態度は後ろに回り込んでも安心しているのかもしれないな。
「…この状況でヨゼフ指揮官は動かないと思うか?」
「それは無いッスね…デザールさん? まさかですけど」
俺が出来る最善の行動は一つ。
「時間を稼ぐ。 セラータとホウズキでスナイパークラスを倒してくれるか?」
スナイパーは真っ先に殺さなければ戦うにもスナイパーにも目を向けながら戦うのは無理がある。
真っ先に倒せばならなければならないのはオークジェネラルでは無く、スナイパークラスの魔物だ。
ヨゼフ指揮官が駆け付けるまで攻撃を交わしながら戦えばあるいは生き残れる筈…。
「その作戦聞かせてもらったぞ! 仮面の男よ!ならばこのラインハルトが共にオークジェネラルと戦ってやろう!」
「あぁ、助かる」
片腕を怪我をしているがラインハルトも協力してくれるならまだ生存率はあるな。
「おい、テメェらの作戦を詳しく聞かせろ」
「メーデンだったか」
以外な事にメーデンも協力的な姿勢で話しかけてきた。
「この状況、俺達が出来るのは時間稼ぎが限界だ。だが、森からの攻撃を無視すれば生存率は低いままだ…生き残る為ならテメェらの手伝いをしてやるよ」
メーデンは荒々しい青年だが、状況下での瞬時の分析する力は本当に十二歳なのかと思えるぐらいだ。
まぁ、前世が三十代の男が青年の身体をしている事に関して、言えた義理ではないか。
「どんな状況でも貴方の態度は気に食わない…けど今だけは我慢する」
「はっ、文句があるなら俺が狙撃クラスを相手してやろうか?」
「は?」
「あ?」
俺はセラータとメーデンの会話を聞いてわかった事が一つ、この二人は水と油だということがよくわかった。
前衛の指揮が崩れてしまった事で立て直しを急いだメーデンが先に出てしまった事に関しては良くも悪くもという判断だ。
俺も指揮が崩壊すれば立て直しに大幅な時間がかかる為、メーデンの様な行動とまでは行かないように行動を心掛けるが今回はメーデンの方が正しかったと俺は思っている。
セラータもそれは理解しているとは、思う。
「…俺はセラータにスナイパークラスを任せたい」
「「!」」
セラータとメーデンは俺の発言に聞いて、見つめてくる。
俺の考えとしては、二人は指揮官に向いていると思っている。
判断と決断力が高いメーデンに持っている力で如何に戦うべきかを考えた上で最善の答えを出して戦うセラータの二人は指揮官よりの考えだ。
俺は多くの人を指揮する力は無いが前世では、指揮が上手な人を多く見てきたからこそ。
「俺とホウズキのリーダーはセラータだ。 任せるなら長い間、背中を預けた者に頼みたい」
二人が対立する大きな理由はやはり、指揮官の資質がある二人いて、どちらも最善の答えを持っているが二つとも答えが違うから険悪な状況を作る。
強大な敵を前にそんな状況下では、満足に戦えないのならお互いに違う戦いをさせれば良い。
丁度、敵も森のスナイパークラス持ちの魔物とオークジェネラルだ。
「わかった。確実に仕留めてから戻るから…死なないでよ」
「あぁ」
セラータは俺にそう言うと剣を地面に刺して、息を整え始める。
「ブモォオオオオオオ!」
「風切り」
俺は制御魔法無しの風魔法で向かってくるオークジェネラルに放って時間を稼ぐ。
「オラ!こっちにもいるぞ!」
メーデンも五尺棒を両手に攻撃を仕掛ける。
「『斬撃』!」
ラインハルトも分厚い鎧の中でも防御の薄い関節部分に武技で仕掛ける。
sideセラータ
時間を割ってもらった分、私は叡智と魔法を発動させる。
セラータが息を整え、自身の叡智を発動させる。
「叡智『龍姫の瞳』開眼」
セラータのアメシストとサファイアの宝石のようなオッドアイの両眼がアメシスト特有の紫色へと揃うと同時に地面に突き刺した剣を片手に抜き取り歩き出す。
大きく吸って吐くと白い息が出ると剣を握る片手の力を入れ舞う。
「剣舞『鈴雪・粉雪』」
チリン…
鈴の音が一度鳴り響く。
「ぎゃ?」
「ぎゃ――」
二匹のゴブリンは一人で向かって来るセラータにニタニタ笑いながら自分たちも向かって行くが鈴の音を聴くとセラータはすでに通り過ぎて二匹のゴブリンを斬り殺した。
チリン…。
また、鈴の音が響くとセラータは走りだし、魔物が密集する前に突っ込んだ。
チリン…。
ゴブリン達は鈴の音を聞くたびに一体、また一体と隣にいた仲間が背後にいた仲間が首筋を脚の腱を次々と斬られていく。
気が付けば先程までの魔物達の熱気が寒空の様な冷気が一直線に走る頃には、セラータは既にオークジェネラルからかなりの距離が離れていた。
「やっぱ、早いッスね…」
ホウズキは離れて行くセラータを追いかけてながら呟く。
ここで少し、セラータが使う剣舞について語ろう。
セラータが使う剣舞は全て天気を表す剣舞天雲と呼ばれる魔力を必要としない剣士が魔力を使用して戦う為、魔力を使い編み出した剣の舞。
発せられる魔力から水、風、雷、氷を剣に纏う強力な剣舞…この剣舞は武技などのスキルでは無い。どちらかと言うと魔法の『魔力制御』でしか無い。
だが、この魔法のおかげで剣舞天雲の適正が大幅に上がり、叡智のお陰でその舞の威力も更に上がった。
その叡智『龍姫の瞳』その能力は膨大な魔力と振われる力を何倍にも引き上げる強力な叡智である。
本来、セラータが剣舞を学ばなくてもこの叡智さえ、有れば非力な彼女でも大人と同等の力を引き出せる叡智であるが剣舞をちゃんと学んだ彼女は第一級上級騎士への道はほぼ近いと一体ほどの彼女にはあるのだ。
後はそこに多くの経験があればの話だが。
「ッ!」
セラータは少し立ち絡んで剣を止める。
(魔力を出し過ぎた…)
そう、彼女はまだ若い少女でしか過ぎない。
魔力の制御と判断力は未だ未完成に近い子供でしか過ぎないところがセラータの欠点である。
「剣舞『鈴雪・粉吹雪』」
そんな欠点があるセラータだが、剣の舞は止まらないように前へ前へと走り出す。




