入団試験(観戦)。
「模擬戦は試験官が『そこまで』と言うまで行ってもらう!…それでは始めぇ!」
試験官がそう言うと闘技場内にいた受験者達は声を上げて、周りにいる同じ受験者と戦い始める。
「…少し聞いていいか?」
「なんッスか?」
俺はこの試験に置いて情報を集めるためにホウズキに聞いて置きたい事を聞く。
「今回の試験に貴族や名の通った奴はいるか?」
「…!」
俺が何故ホウズキに聞いたかは、理由があるがそれはまたの機会でいいだろう。
帝国は軍事力に力を入れている事は前世のゲームで知っている…しかし、俺は原作開始のゲーム説明の部分をやっていただけだ。また、パッケージに載っているキャラクター達は主人公の仲間や敵だと、わかるがあくまでもそれは一部で過ぎない。
俺は一応、主人公の仲間の一部は知っているが敵については知らない…それ故に情報を集める必要がある。
「ずいぶん変わった質問ッスね…」
「まぁ、確かにそうかもな…けど合格した上で相手を知らないというのは愚策だと、思ったからだ」
「……」
「おかしいか?」
「いやいや!確かにそうッスね!」
少しの沈黙があったがホウズキは明るい表情で俺に話す。
「一応、聞きたいんッスけど?」
「何だ?」
「何故に俺っちに?」
「特に理由は無い…何となく知ってそうな顔をしてたからだ」
「そうッスか」
ホウズキは少し考える様に試合に顔を向ける。俺も試合を見る事にした。
「そうッスね…俺っちが知っているとしたら、あの黒髪の少女とか、スキンヘッドに入れ墨を入れた男辺りッスね」
「…スキンヘッドの男は見つけたが黒髪の少女はどいつの事だ?」
俺はホウズキが言う二人を探し出しスキンヘッドの男は見つけた。スキンヘッドに炎の入れ墨が入った男は特徴的だった。戦い方は大雑把かつ豪快と言ったところだ。
男の武器の形状は槍だ。槍の長さは俺が見るに五尺はある槍でスキンヘッドの男には丁度いい長さだった。
戦い方は槍で叩きつけては槍の先端を相手の服に引っ掛けては投げ飛ばして周りに乱戦に巻き込む戦い方だった。
「スキンヘッドの男はずいぶん荒い戦い方をしているな…」
「そうッスね。スキンヘッドの男はバロッサという男で傭兵崩れの奴ッスね」
「…傭兵崩れという事は何かあったのか?」
俺は当然の疑問を聞く。
ホウズキもその疑問に率直に答える。
「詳しくは知らないッスがバロッサは在籍していた傭兵団で問題を起こして追放されたそうッス」
「なるほど、働き口が無くなったから騎士団に入団試験を受けに来たというわけか」
「そうの考えて正しいと思うッスね…」
俺は改めてスキンヘッドの男、バロッサを観察する。戦い方の癖や弱点になる様な部分を予想しておく。万が一敵になってしまった時のために。
「それで、黒髪の少女はどいつの事だ?見た感じ四人近くいるが」
「それならあそこの子ッス!黒髪の赤と紫色のオッドアイを持った彼女ッス!」
俺はホウズキがテンション高くなった事に同様するがホウズキはそのまま黒髪の少女を紹介してくる。
「あ、あぁ…」
「透き通った長い黒髪に宝石の様な二つの目を持ち得ながらの凄まじい剣術を持っている美少女ッス!」
「…」
俺はホウズキの熱烈に少女の話をしてくる行動に呆気を取られる。とにかく、ホウズキがその少女が好きな事はわかった。
「…で?肝心の名前は?」
「セラータちゃんッス!」
ホウズキは熱烈に紹介するのでその少女、セラータがいる場所に目を向ける。俺は目を疑うほどセラータという少女の実力は凄まじかった。
ホウズキの言う通り、少女の剣術は凄まじいと言いようしか無かった。人で一気に五人の男達を剣術で突風で吹き飛ばされる様に倒して、次の相手に向かっていく姿を見て驚いた。
「……世界は広くて狭いとは言えたものだな」
俺は前世の言葉を思い出す。世界は人が一人で歩くには広すぎるが一人でなければ狭く感じると聞く。
天才や凡人もそうだ、近くにいる様でいない。
セラータの剣術は明らかにまだ何かを隠していると俺は思っている。
この世界は女、子供であろうと軍人になる事ができる世界だ。弱さを補うための魔法というものがある。
事実、戦いで大切な事は自身がどれだけの力を持ち把握しながら、情報を知り得るかが問われる。
俺も此処まで来るには大変な目に合って来たが何とか乗り越えて来た。だが、それはギリギリまでの事が多い。
それ故、今の俺には強さに余裕を持つ事が必要だ。
どれだけ強くなってもこの世界には主人公という存在がいる…また、ホウズキが教えてくれた二人もそうだ。
元傭兵のバロッサという男は俺より年上で実戦経験を持っているのは間違いない。
黒髪の少女セラータは剣術は俺の知らないこの世界の剣術だ。
どちらも俺からすれば強敵に変わり様が無い二人だ。大帝国内で生き抜く為には俺はまだ強くならなければならない。また、この二人以外の強者にも気を配らなければならない。
俺は人を殺した因果がいつ来るのか、わからない。
だからこそ、今は知れる情報は出来るだけ取り入れる事が必要だ。
俺は二人の他にも強者がいないか観察している内に第一試験を受けていた者達の終了の合図を入れる為に試験官が入り、息を吸い込み大声で叫ぶ。
「そこまでぇええええ!!!」
試験官の声の声量は闘技場中に伝わり、第一試験を受けていた者達の手が止まる。
「試験は終了だ!合格者は控え室で発表する!次に試験を受ける者は速やかに闘技場中に集まる様に!解散!」
試験官はそう言い終えると去って行き、受験者達も闘技場の控え室に向かう。
これで最初に受けた受験者達の試験はこれにて終了した。
また、この試合で死んだ者もいた。木剣で人は死なないと思っているだろうが木剣もれっきとした武器だ。力が強い人間が振って辺りどころが悪ければ骨だって折る武器となる。
故に死んだ者はそのまま放置される。勝者と生き残った者達は此処から出れても敗者である死者は出られないのが現実だ。
帝国軍は実力主義…強かろうが弱かろうが関係ない。実力を出し切らねば生き残れない世界だ。
それでも俺は強くならねばならない。
軽くなった筈の脚はまた、重くなるが俺は構いもせずに闘技場中に向かった。




