夢は壊れ、悪役の登場だった。
読者の皆さんコロナに負けないで…!
sideギル
俺は痺れて動けない身体になっても必死に上を向きながらレフを見つめる。
「ギル、僕はレナよりもずっと前からこの孤児院の本質を知っていたんだよ」
「なん、だ、と…」
俺は耳を疑った。レフの今の発言からすれば最初から孤児院の真実を知っていたという事だ。
「僕は生き残る為ならなんだってするさ…例え裏切り者と呼ばれてもね」
俺は身体を無理矢理動かしてでもレフを殴り倒さないと気が治らなかった。
「動かないでくれるかな?…ギルは高値のある奴なんだからさぁ…あぁ、レナが心配?」
レフは俺が当たり前に思っている事聞いて来ることにさらに苛立ちが上がる。
「安心してよ…ギル…僕がレナを助けてあげるよ…僕の物としてねぇ」
「レフ!テメェえええ!」
俺は身体の痺れを忘れてレフ目掛けて拳を握りながら殴りに掛かる。
「『スタンオーバー』」
「ガ…ふ、二つ目のま、魔法…だと!?」
俺はレフの二つ目の魔法でさらに動けなくなってしまう。
「終わりだよ…ギル」
痺れて動けない状態に元通りになっても俺はレフを殴るつもりで立ち上がろと足掻くが動けない。
「ギル、僕はね。最初から知ってたよ…孤児院の仕組みにね。でもさあ、僕は時よりこう思うだ」
レフはもう足掻く俺を敵として、見ておらず。その目はもう仕事を終えた様な目で俺に話す。
「人の幸せって誰かの犠牲から手に入れるものなんだってね」
「は?」
「人はね、一人生きるだけでも大変なんだよ。だから、誰かが犠牲にならなきゃ、人は幸せにはなれない…だからさぁ犠牲になってよギル」
俺は背筋が凍り付いた。こいつは一体何を言った。
犠牲?なんだよそれ…まるで俺たちは生まれた時から院長やレフみたいな奴らの幸せを得る為に犠牲になる為だけに生まれて来たみたいじゃあ無いか…。
「ふ、ざけ、るな…俺た、ちは」
「もう、諦めてくれないかな…何したって無駄だよ…それとも…レナがどうなってもいいの?」
「っ!」
レフは諦めの悪い俺を脅して来た。
「僕のものになれば、少なくとも普通に売られるよりは幸せになれるよ…ギルが犠牲になればの話だけどね」
「お、前!」
もう、そこに俺が知っているレフという仲間の顔の化けの皮が剥がれ、レフの本性を知って俺は怒りと恐怖が入り混じる。
裏切った事への怒りとレナを人質に取られ、レナが無理矢理歩まされるその未来へ恐怖…俺はどうしたらいいんだよ…。
そんな中、レフは何を思ったのか淡々と語り始めた。
「ギル…僕たちはね、絵本の様な英雄にならないんだよ」
やめろ…。
「そんな夢の様な英雄なんて、どこにもいないだ」
やめろ!
「もし、物語語りの英雄が本当にいるならもう既に助けの手が差し伸べられてるじゃあ無いか」
頼むからやめてくれ!
「夢の様な英雄は現れない」
俺はその言葉を言われた時、俺の何かが壊れた。
「ゔっゔゔ」
その言葉は俺にとって、一番痛い言葉だった。
こんな状況まで追い詰められば尚更、わかっているさ…勝てないというぐらい。
俺らは絵本の様な英雄になれない事ぐらいわかっている。それでも、誰もがその物語を読めば英雄の様な人が現れると思ってしまう。もしかしたら、それが自身かもしれないと思ってしまう事もあった。英雄では無くてもその仲間かもしれないと何度も思った。
けど、実際はどうだ…俺は…俺は物語の英雄やその仲間ですらなれなかった。
だからこそ、その言葉は俺にとっての一番の弱点でもあった。
「ギル、分かったなら諦めて売られてくれないかな…レナは僕が大切にしてあげるからさぁ…」
レフは心を折られた俺に追い詰めてくる。
「もし、此処でギルが諦めればレナは君にとって英雄だろうね」
もう、俺に言い返す力は無かった。
俺が最後に出来る事は嘆く事だけしか、出来なかった。
「あ"あ"あ"あ"!!」
なんでだよ…なんで俺は英雄になれないんだよ!神様!英雄様!俺たちを助けてくれないんだよ!
俺に何が足りないんだよ…強さか?それともそれ以上の何が必要なのかよ!
こんな理不尽な状況を誰か覆してくれよ!
レナは俺みたいな奴らの為に動いたじゃあ無いか!
少しぐらい手貸しても悪く無いだろが!なんでなんで!俺は何も無いんだよ!
俺は、俺は!レナ…お前を笑って助ける英雄になりたかった。
「あ"あ"あ"あ"」
俺は只ひたすら、涙を流しながら嘆くしか、なかった。
嘆く俺を見ているレフに殴りたくても身体が動かない。
レナを助けたくても助ける力も知識も無い。
それだけで、俺の心は絶望という黒色に塗りつぶされた。
「おやすみ…ギル。『スリー―』」
レフは俺に向かって手を掲げ、魔法を放とうとする。
俺の意識はそこで真っ黒に閉ざされ――
「『火の玉』」
sideレナ
私はもう何もかも諦めた…時間が無い中で頑張ったものは全て水の泡の如く無駄に終わった。
院長が鷲掴みで髪の毛を引っ張られながら歩かされながら私はこれから先に起こる未来への絶望に私は震えながら生きて行く事しか出来ないのだ。
私は院長に蹴られて青くなったあざを見て私は思った。きっと、神様はこんな汚い場所で育った子供なんて、助ける価値も無いのだろう。
あぁ、こんな事なら最初から諦めて入れば…どれだけ楽だったのか…。
そんな事を考えていると院長の様子が変わらる。
「ん?なんだこの焦げ臭い匂いは?」
院長は私を投げ捨てると近くの部屋の扉を開く。
「な、なんだこれは!?」
私は顔上げその部屋を目を向けると火の海となっていた。
「お前がやったのか!?」
院長は再び私の髪を鷲掴みにして、怒鳴り散らしながら私に聞き出そうとする。
「し、らない…わた、し、じゃ…ない」
「なら、誰がやった!?」
「ゔぅ…」
「クソが!」
院長の握りしめる力がさらに強くなる。
「何処のどいつがやりやがった!」
院長は燃え盛る部屋に向かって叫ぶほかなかった。
sideギル
「ゔぅがああ!熱い熱い!?」
俺は目を疑った。何せ先まで追い詰めていたレフがいきなり炎に包まれて火達磨になっているのだ。
「熱い熱い熱い熱い!?誰だ!いやそれより、助けて!」
レフはそのまま倒れて転がりながら火を消そうとするが炎は中々、消えない。
「いやだ!死にたく無い!熱い!」
俺は只燃え盛るレフを見ていることしか出来なかった。
「助け「『斬撃』」あ…」
遠くから誰かが何か語るとレフの頭が飛び、力が無くなった身体はドサリと倒れる。
そして、レフいた場所から誰か俺の元へ歩いて来た。
「お前はレナの仲間だったか?」
そこには俺より少し年上の奴がそこにいた。
「とりあえず、逃げるか」
俺は何が起こったのかは分からない…だが、助けが来たのは間違い無いと思った。




