第三十七話 早すぎないし、腐ってもいない
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山岳地帯を西へと抜けた先には、湿地帯が広がっていた。マッドスキッパー王国はその周辺のほとんどが湿地帯であると聞いている。どうにか、近くまでは来ているようだ。
しかし、ここからが問題だ。近くとはいえ、どの方角に行けばいいかがまったくわからない。ここで、妙へ方向へと歩き出してしまえば離れていくことになりかねないだろう。もともと、正確な位置を知っていたわけではないから何れは浮上してくる問題ではあったのだけれど。
湿地帯を歩く、沼というより干潟みたいだ。良い粘土層をしていらっしゃる。背の高い植物が生い茂っているから、危険度は高いかもしれないな。周囲に警戒しながら歩こう。おや、『魔力感知』に反応ありと、方向は下か!
その時、うにょうにょと泥が成形して行く、人形、動物形、ゴブリン形、その他様々な形をしたものが立ち上がってきた。これが噂に聞く泥造形という魔物だな。魔石を核として、体を構築していて、魔石を砕くか奪うかしなければ倒すことが難しいと授業で習ったな。
「…………」
無言で襲いかかってきた! うおっ! 試合開始の合図くらいしてほしいものだ、ええい、動物形が意外と素早く動くぞ、泥のくせに! 踏みつぶせば魔石も砕けてしまうから儲けが無いな。泥だから得る物もなさそうだし、おいしくない魔物だ。いや、泥がおいしいかもしれない、後で食べてみよう。人形もどこに魔石があるかがわからないから、全部ぶっ飛ばすことになって面倒だな。
「シッ!!」
足を潰してみる。やっぱりだめか、地面の泥を吸い上げてすぐに再生して襲いかかってくる。やっかいだ。やわらかいから、直接攻撃の脅威度は低いかも知れないけど泥の中に引きずり込まれると窒息死してしまうかも。どうしたものかな。
「クーケッ!!」
うん? 何? 今忙しいのだけど、なるほど、自分に魔力を注げ、と言っているのかな。注ぐってどうやるの? ふむ、循環に巻き込めばいいのですか、そうですか、賢いですね。というか、めちゃくちゃ意思疎通取れているのですけど、それは大丈夫なのですかね。
えーい、ままよ。持っていけ、あたいの魔力!! 魔力循環に巻き込んでみると、ぐんぐんと魔力がクーに吸い込まれていくのがわかる。
なんだろう、快感を伴う虚脱感があるな、魔術を使うと感じる感覚とはこんな感じなのだろうか? となると、魔術師は快感を得るために魔術を使っていたのか!? なんてスケベな連中だ!! えっちなのは行けないと思いますよ、でもおっぱいは良いと思います。
なんだか、クーが白く輝き始めた。充電完了したのかな。目に見えてわかる年寄りにも優しい設計ですね。
「クケェェェェェェーーーーー!!!!!!」
うおぉぉぉぉ!!! クーが光線を吐き出しやがった! ふ、普段はライターくらいの火しか出せないのに。クーの吐き出した光線によって次々に泥造形どもが薙ぎ払われていく。巨神兵かお前は!!
ひ、ひでぇ、泥造形どもが蒸発しやがった。泥のくせに火属性に弱いなんて軟弱な連中だ。どうせなら陶器にでも成ってしまえばよかったのに。
「あの、クーさん、これ一体なんですかね?」
ちょっと、敬ってしまった。
「く~♪」
あ、ふーん、ご機嫌ですね……あ、魔石。いいや、土に帰りなさい。
「くけ、くー、くけけ、く~け~、けけけ♪」
ふむ、何と言っているかわからないけど、薙ぎ払ったからすっきりしたみたいですね。俺は知らない。知らないぞ~。もしかして、クーさんは結構危険な魔物なのでしょうか。
あ~あ~、周囲の草まで火が回ってしまっているよ。これ大丈夫かな? まあ、湿地帯だから延焼もそれほどは広がらないとは思うけど、特に火を消す様な道具を持っていなし放置しかない。
「クー、さすがに火事には注意してね。大切なご飯が燃えるのは嫌でしょ?」
野菜が燃えるのは困る。
「く! け!! く! け!!!」
なに?その辺の草を野菜と呼ぶなだって? 知らんな。俺が野菜だと思うものが、全て野菜なのだよ。毒があろうが、消化できなからろうが、関係なかろうなのだ!! まあ、クーは肉派みたいだけど、野菜もいいものだよ? うんちがいっぱいでるよ? 食物繊維は大切だよ。
「クケケケケ!!」
はいはい、肉ね肉。じゃあ、さっきクーが消し飛ばした連中を晩ご飯にするのはまた今度ね。
「くけ……」
その、土を食うのだけは勘弁してもらえませんかね、という表情を止めなさい! 慣れると良いものなんだよ? 場所によって味が違うし、水分も取れるし。
「くけ~……」
ちぇ、いいよいいよ、ひとりで楽しむからね! クーが言っても分けてあげないからね!
「くけ!」
そうして、また湿地帯を進んでいく俺達。困ったな、キャンプ地にできそうな場所がない。日が暮れそうだし、夜に進むのは方向がわからなくなりそうで不安だ。
その時、遠くから争う様な物音が聞こえてきた。
「ふむ、クーさんや、どうみるかね?」
「くっけ! けけっ!」
とりあえず行ってみろ、遠巻きから見つからないよう観察しろ、ですか。素晴らしい判断ですね、それに倣うとしましょう。
・・・これ大丈夫?おっさん、この小動物に頼りきりになってない? クーさんがどんどん賢くなっている気がする、間違いない。ごめんねぇ、おっさんが頼りないせいで、賢くならざるを得なくて、ごめんねぇ。
しばらく、進んだ先で見たものは、人同士が争っている最中だった。
次回、おっさんが久しぶりに人語を話せる生物と接触します。最近、ボケからツッコミに転向していることに気づき、愕然としていると、さらにボケ倒すものたちが現れる!! おっさんはツッコまずに生きられるのか!




