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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第二章 ケツの毛羽まで毟られろ、学校生活編
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第二十一話 泡沫のク・リトゥ・リトゥ

21.



 生臭い。魚が大量に腐敗したような臭いがする。



 ここは、都市だろうか、周辺には荒れ果て苔むした石造りの建物が立ち並んでいる。空には闇が覆っている。


 そのため全体的に暗いが、光源が所々に設置されていて、ある程度の明るさを提供してくれている。光源の正体はなんだろうか。苔のように見えるし、その壁自体が輝いているようにも見える。汚い緑色に光って不気味だ。

 触手が蠢く様を表現された彫像、浅ましく子が親を貪る絵の掘られた道。掲げられる全ての装飾物に生理的嫌悪感を抱く。例えるならば、汚物塗れの便器に顔を突っ込んでいるような気持ち悪さだ。



「『ダンジョン』じゃ、取り込まれてしもうた……。わたしのせいじゃ、わたしが持って帰るなどといったばかりに」

 いつのまにか隣にいたグウェンちゃんが、そんな独り言を呟いている。頭を撫でておこう。


 ダンジョンは魔素の記憶とも呼ばれる、魔素が凝縮し突然現れる、泡沫の夢の様な存在であると教わった。

 通常は魔素の濃い場所に、いつのまにかに入口ができているそうだ。ダンジョンは、失われた古代の遺産が眠る宝物庫であり、恐ろしい魔物が繁茂する殺戮の宴会場だ。そして、またある時、煙が消えるようになくなってしまうのだそうだ。


「ダンジョンだって!? まさか、だろ?」

 キーちゃん無事だったのか。その後ろにはクームさんがカロちゃんを支えて歩いて来る。

「これがダンジョンでござるか……」

 興味深そうなクームさん。

「……気配がする。……彼奴らがいる」

 どうしたのカロちゃん!?口調が素になっているんだけど。何か知ってそうだな、説明してもらおうか。

 カロちゃんはゆっくりと話し始めてくれた。




「……某が、幼少のおり、父母とともにマッドスキッパー王国との行商を行っていたしだいで候。……ある時、商売を終え帰路についた時、ミズーリまであと一歩のところで、黒き風が吹いた。その風が吹いた後に、男とも女とも計り知れぬ、人型をしているだけの名状し難き魔物が現れたに候。……それは、黒き液体をまき散らしながら父上と母者を殺し、死骸を玩んだ」

 おぅふ、ヘビーだぜ。


「……そして、某には呪いが与えられたで候。この髪がその証、そして某の眼より、黒き涙が溢れだし装束を漆黒へと染め上げていったしだいで候。この呪いは絶えず、黒き装束以外を身につけると起るでありたもう。やつは、笑って去って行った……」

 黒く服を染め上げた事件はそういうことだったのか。物語の主人公みたいな人生を送っているのね。変に同情はしないよ、おっさんは友達だもん。

「……もうひとつ得たものがあるで候。彼奴らの気配が分かるようになったようであるな、此度のことで得心が行ったのだがで候」

 そうか、両親の敵だと思ったから急に戦いに行ったのね。黒い体液をばら撒く連中が他にもいるってことか。厄介だな。そして、このダンジョンにもいるってことっすか~。めんどくせぇ~。




 黒汁魔物が何かは、今は考えてもしょうがないか。とにかく、生き残らなければならない。


 まずは周囲を確認してみる。よかった、取り込まれたのは俺達だけみたいだ。『魔力探査』にも特に反応はなしと、周囲に魔物はいないのか。魔物の巣窟みたいに聞いていたけど、ダンジョンにも色々あるのかな。

「とりあえず、取り込まれたのは俺達だけみたいだから、ベア先生とナクアさんは無事だろう。よかったよかった。よし、安全な場所を探してキャンプ地にしようか。疲れているし、ケガの治療もしなくちゃね」

 そう四人に伝える。


「……ふふっ。そうじゃな。凹んでいても仕方のない話じゃ。よし、ズクタロウよ。わたしはへとへとじゃ~おんぶしてたもれ~」

 はいはい、仕方がないでちゅね~。ケガしているし、魔力もあれだけ使えばしょうがないか。

「おんぶしますけど、手は添えないので、しっかり捕まってくださいね」

 とグウェンちゃんに伝える。何があるかわからないから、両手は自由にしておこう。

「んっ!」

 といって俺に掴まるグウェンちゃん。子どもだね。アバラの感触が背中に伝わってくる。アバラか~。せめて、胸板ならな~。


「そっちはいいか? とりあえず、目の前に見えるでかい建造物にいってみようかと思うけどいいかな?」

 状態が比較的よさそうで、なおかつ、神殿の様な造りをしている。他の建造物よりは、期待が持てると思う。

「カロンはオレが背負う。了解した、あそこに向かおう。すまんがクームに先頭を頼んでいいか?」

 憔悴しているカロちゃんを背負ったキーちゃんが答える。

「りょ、了解したでござる……」

 緊張しているな、俺も隣を歩くことにしよう。

「あ、ありがとうでございまする。ズクタロウ殿!」

 はいはい、今はいいっこなしね。

 そして、俺達は神殿の様な建物へと向かっていった。




 建物は神殿という見たてで正解だったようだ。ただ、ここに入ったのは間違いだったかもしれない。街中より、醜悪度が増している。所変われば品変わるとは言うけど、酷過ぎる。


 特に、落し子とその崇拝者たち、と書かれた壁画が酷かった。タコの上半身を持った赤子と思わしき何かを、崇拝者であろう大人たちが舐めまわしている。

 そのおぞましい行為が、今ここで行われているかのような臨場感のある壁画だ。

 それを見たグウェンちゃんがゲーした、俺は肩から左半身にかけてぶっかけられた。くしゃい……。



 神殿の奥に入って行く、生物の気配は相変わらずない。

 他より少しだけ豪華な扉を開くとそこには、この都市であろう模型が飾られている部屋だった。荒れ方も、まあ、ましかな。この部屋をキャンプ地としよう。

「この模型はこの都市の……今はダンジョンとして現れたものゆえ、あてにはし過ぎない方がよさそうでござるな。あぁ、名前のプレートがあって、えっ、と……ク・リトゥ・リトゥでござるかな」

 どうやら、俺達はダンジョン『ク・リトゥ・リトゥ』にいるらしい。



 異次元鞄から、鍋と水と炎魔石と薪と敷物……。よし、お湯を沸かして、ポーション出して、とかしていたら、グウェンちゃんがまん丸おめめで俺を見つめていた。

「どうかしましたか?」

 そんな目で見られると困っちゃうな。とりあえず聞いてみる。

「いやはや、産廃袋を持っているのは知っていたのじゃがの、ここまで色々入れ込んでいるとは思わなかったのう。余人にはまねできぬよ。それに、ダンジョン探索を行うための装備など持っておらぬからのう、正直助かったのじゃ」

 産廃袋て……。まあ、こんな時に遠慮していたらいけないと思うから、気にしないでね、グウェンちゃん。頭を撫でておこう。嫌じゃなさそうだ、むしろされるがままだ。


 だが、崖の傍に荷物を置いてきた三人は少し反省してほしいな。重いし、焦っていたから仕方が無いと思うけどさ。

「わりぃ」

「あはは……すまんでござる」

「……申し訳ないで候」

 その言葉だけで十分だな。



 「そうだ、無事に帰れたら異次元鞄が使えるように訓練して見る?しばらくは失禁と気絶を繰り返すと思うけど」

 断られた、なぜだ、こんなに便利なのに。

 グウェンちゃんだけはすごく迷っていたから、無事に帰れたら、もう一押ししてみようかな。


 さて、治療を済ませて飯にするか。




「これを、わたしに、喰えというのじゃな……」

 そうだよ~おいしそうでしょ~昨日のゴブリンの軟骨と草を使った御御御付おみおつけだよ~。ぶっちゃけ、ただの出汁なし味噌汁だ。

 いや、ゴブリン出汁が効いている。効いちゃったか……もっと味噌がんばれよ。お湯に溶いたのが間違いだったかもしれないな、反省だ。


 もろゴブ、もろ草にすればよかったのだろうか。名前の響きが嫌だな。

 他のメンバーは文句もなく食べている。朝から結構な距離を走ったからな。腹が空いているのだろうな。空腹は最高の調味料だね。

「ほ~ら、グウェンちゃん、あーんして、あーん」

 食べさせてあげた。あれ、意外と平気なんですね。照れているけど、文句も言わずに食べている。女性は強いな。

 昔の俺なら、まずぅい!まずうぃっしゅ!しーましぇーん!と思うくらいの味なんだけどな。



 食事が終わると、グウェンちゃんとカロちゃんはおねむの時間だった。ケガをしたときは寝るのが一番だろう。俺は都市の模型を見ながら、これからのことを考える。

「なあ、キーちゃん、ここ見てくれよ」

 模型の一部を指し示す。

「うん、なんだここ? 水場にしては妙だな……もしかして、湖か海か?」

 同じことを考えたみたいだ。

「なるほど、よく考えると、この都市は磯臭いでござるな」

 クームさんも話に参加してきた。磯臭さがわかるってことは、海を見たことがあるのか。いいなぁ~。


「俺も海だと思う。正直、出口があるのか、それすらわからない。探すにしても食料と水は必須だろうな。それらを一度に得ることができる可能性がある。安定供給できるのなら尚更良い」

 長期戦の構えだ。

「だから、お前一人で様子を見てくるって言うんだな。殺してでも止めるぞ」

 なぜバレた。あと、殺さないで。

「!! だめでござる! 危険でござるよ!」

 焦っているな、すこし表情が分かるようになってきた気がする。めちゃめちゃかわいい。

「大丈夫だって、ちょっと様子を見てくるだけだからさ~」

 くっ、二人にこうも引き止められるとは!お茶を濁すぞ!一人で行った方が死ぬのも一人だ。

 俺が帰ってこなければ危険だとわかるはずだ。そうすれば、別の場所に活路を見いだせる。

 この世界の海は巨大な魔物が繁殖している、それ故に塩を得るのにも危険を伴う場所だ。


 喧々諤々としていると、グウェンちゃんの声がした。起こしてしまったのか……。

「だめじゃぞ……。行ってはだめじゃ……」

 涙を溜めた目で言わないでよ。分かった。俺の負けだな。俺も正直しんどい。

 全身が軋む、成長痛の様な痛みだ。こんなときに身長が伸びるのだろうか。今は、休もう。



 遠くで聞こえる波の音が、心に染み入った。




 次回、まぐろ!ご期待ください。


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