第二十二話 人魚姫? 知らない子ですね……ゲプッ
22.
昼か夜かわからない、ダンジョンの中での目覚めだ。うん、今日も、いいてんき~? やる気に満ち満ちたすばらしい日和だね。ギャ○マンガ日和だったら助かったんだけど。いや、あの世界はあの世界で生きにくそうだ。
「……おはようで候、先刻は無様を晒した、ここからの働きに持って返すで候」
おや、カロちゃんも元気になったのね。さすが、男の子はそうでなくっちゃね。他のメンバーも元気いっぱいアンアンアンだ。さ~て、最後の水を配給して、草をしゃぶりながら海に行こうか。せっかくの海イベントなのに、すごく悲しいです。
「よっしゃ、出掛けるとするのじゃ~」
グウェンちゃんの号令で移動することになった。おそらくここから北東に向かうと海があると思われる。
魔物が出たら怖いが、食糧にもなるなぁ。うーむ、あっちが立てばこっちが立たず、だな。
あっさり海についた。堤防が伸びている、船着き場なのかな?色悪っ!そりゃそうか。水の色をしている分には、某国のカラフルな河川に比べると大分ましだな。
道中でちらほら魔物らしき気配を察知できたから、ここで成果が無くとも、そちらに向かってみよう。
「グウェンちゃん、海は危険だって聞いていたけど、この海はどう思う?」
こんなのでも先生だ。頼るときは頼る、それが大人の醍醐味。
「うむ、水中には大型の生物の反応が複数あるのぅ。小型のものは魔物でないのなら、わたしの探知では反応しきれんじゃろうから、油断はできんのう。わたしたちがこの距離まで来ても襲いかかって来んということは、近辺に魔物は居らんのかも知れんな」
なるほど、魔物はいなくても危険な生物はいるかもってことか。俺の『魔力探査』は水中に対しては無能さんだった。悲しい。悲しくない?
まずは海水から真水を作るか。これ普通にやるとめちゃくちゃ大変なんだけど、グウェンちゃんがいるから何とかなるかな。
風魔術で海水を気化してもらって、水蒸気を集めてもらおう。風魔術で気圧の変化とかできるのだろうか。
結果、できた。塩も取れた。苦汁も取れそう。言葉も出ねぇよ。技術の発達遅れちゃーう。
グウェンちゃん曰く、わたしが天才なだけなのじゃ~ほめてもよいのだぞ、だそうだ。お見それしました。でこピンしておいた。
確保していたゴブリンの皮などを使って、水筒を作った。臭そうじゃなくて、臭い。俺のじゃないから知らんね。
そこら辺にあった廃材を使って釣竿を作成した。廃都市ってサイコーだな、勇者し放題だ。調子にのっていたら、すっごくごつい逸品ができあがった。竿?釣り柱の間違いだな。
釣り糸はどうしたものだか。悩んでいると、グウェンちゃんが自らのマントを裂いて、糸? 縄? を作ってくれた。
迷彩効果が付与された布で十分に頑丈なものらしい、ありがたいことだが、責任を感じているのかもしれないな。
後でフォローしておこう。何がいいかな~。さすがにprprしたら怒るかな~。いかん、肉塊にされてしまう。自重しよう。
さっそく、釣りを行おう。釣り経験者はクームさんしかいなかった。
「クームさん、君のロット捌きを煌かせてくれるかい?」
経験者に聞くべきだろう。俺はこの世界では釣りをしたことがないのだ。
「無理無理無理無理カタツムリでござるよ! 拙者の腕力では絶対に揚がらないでござる」
海怖い。両手剣を難なく振り切る娘が無理って、この世界の海はなにが釣れるんだよ! あれか、マグロ喰ってそうなゴ○ラとか釣れんのか? ゴリラではないよ。というか、この娘さりげなくネタをぶっ込んできたな。壁がなくなっていくね。寝食を共にすると仲良くなる、これは本当だね。自棄になりつつあるだけかも知れないけど。
「キーちゃん! あれ? あいつどこ行った?」
あ、あんなに遠くから手を振っている。逃げ足が速い奴だ。襲われてしまえ。えっと、他には……
「カロちゃんは……、病み上がりだから勘弁してあげよう。てことは、グウェンちゃん、はいどうぞ」
噛みつかれた。カロちゃんは残念そうにしている。腕をケガしたのだから我慢して、どうぞ。
結局、俺がやるしかないのか……柱を持ち上げる。
針はきもい石像から、丁度いい形の触手をぶっこ抜いてつけた。餌はゴブリンの内臓だ。なんでも保管しておくものだな。
もったいないおばけも納得のエコっぷりだ。いくぞーーーーー!!
仕掛けを投げてからは、暇なものだな。気合いがウソみたいに沈静化してしまった。みんなも集まってきた。
「つれないの~」
「というか、釣れるのか?」
「果報は寝て待て、でござるよ」
「……眠いで候」
銘々好きなことを言っていらっしゃる。俺も暇だー、あ~防波堤ぶっ壊して~。
釣れない。当たり前かもしれないが、釣れない。このままじゃ土が食べられる俺はともかく、みんなは腹ペコで面倒なことになりそうだ。
土が食べられるってチートじゃない? ヤダ、小生ヤダ! こんなチートヤダ!
そんなことを考えていると待望のあたりがやってきた。
「ん? 引いているのか? ……きたっ! きたーーーーーーー!!」
猛然と柱を引っ張り上げる俺、しかし、重い、重すぎる。
「なんじゃと!?」
「絶対に逃がすんじゃねぇぞ!」
「お魚でござる~」
「……zzz、はっ!?」
銘々勝手なこと言ってくれるじゃないの! カロちゃんは眠いんだね、眠っていて、どうぞ。てか、他の衆は手伝う気はゼロですか、そうですか。
それにしたって、この魚は大物すぎるだろ。こなくそー!けっぱれー! 天国のオッペンハイマー先生、力を貸してください!! 力に善悪はないのだよ! 悪いのはいつだって人だ!!!
力を加え続ける。自分でも驚くほどの膂力を発揮していると思う、うぉぉん! 俺は今、人間火力発電所だぁ!!
ついに、スポーンという音がしそうなほど、勢いよく獲物が釣り上がった。
やり遂げた! ついにやったんだ! さて、今日のご飯はなんじゃろな~っと。
そこには、マグロがいた。完全にマグロだ。本マグロかな、良いサイズだ。マジでマグロだやったぜ、人間の足が生えているということを除けば、だがね。
マグロ? には、細く、長く、白い、美しい足が生えている。おう、バタバタ動いているじゃないか。
「これは、伝説の『生足魅惑のマーメイド』だ!」
俺は思わず、アホなことを叫んでいた。こんな生物、レボリューションだからしょうがないよね。
「ヒッ、ヒギィィ、気持ち悪すぎるのじゃ、オロロロロ」
嘔吐するグウェンちゃん、嘔吐する姿もかわいいな。かわいくねぇよ! すっぺぇよ!
「……ゴクリッ」
ん? キーちゃん、今生唾飲み込んだの? 足フェチなの? それでも、これはやばくないかな。人の趣味にはとやかく言わないけどさ。
「キモいでござる!! キモいでござるよ!!! もう嫌だーーーーー!!!! お家に帰りたいでござる~~~。キモいキモいキモキモキモキモ・・・・」
クームさんは壊れちゃった。可哀そう。可哀そうじゃない?
「……おいしそうで候」
さすが、カロちゃんは冷静だね。確かにおいしそうではあるな、一部特異な人種には意味が異なりそうだけど。
首筋に念願のロングソードを差し込んで締める。
ビクッ! と一際大きく動いた後に、動かなくなった。足を持ち上げてしっかり血抜きだな。ゴブリンなんかと比べても、たいして変わらないと思う。
気持ちが悪いと思うのは、二人には魚に対しての免疫があんまりないからかも知れないな。今晩はマグロステーキと行きますか。久しぶりの魚に思わず、ズビッ! っと、よだれがでちゃうよ。
それから、グウェンちゃんの指導のもとで、ダンジョン探索に必要な道具を探したり、製作したりした。この場所が過去に実在した都市であったためか、大体の必要なものが揃った。勇者行為万歳。
これで、明日からは出口を求めて探索が行えるな、と思っていたグウェンちゃんがとんでもないことを言いだした。
「出口を探すよりは、ダンジョンマスターを探し、そやつを殺した方が早そうじゃ」
何でも、ダンジョンには、それを構築している核のような役割を持つ魔物が存在しているらしい。そいつを殺せば、ダンジョンは消える。しかも、ダンジョン由来の存在以外は外に弾きだされるらしい。拾得物は持っておくことで一緒に出られるそうだ。これは良い便利機能だな。
ダンジョンマスターには強弱に一貫性はなく、一匹のゴブリンであったり、ドラゴンであったりしたそうだ。共通することは、今まで見た冒険者たちが、ボスっぽいと言っていることくらいらしい。なんじゃそりゃ!?
結局、両方採用することにした。ダンジョンマスターを探しながら、出口を探して探険だ。水は確保できたし、食糧は道すがら拾得できるだろうさ、魔物がいるし。
ヒャッハーー!! 見つけた魔物は皆殺しだぁ!!! ……そう言うことだ。
大丈夫なのだろうか。まあ、やばくなったらキャンプ地に戻ろう。長期戦、長期戦、焦りは禁物だ。
マグロかい? マグロはね。クジラの味がした。……糞が!!
次回、ダンジョンマスターを探せ! ダンジョンスマターではないよ。アバターではなくスマターって感じかな。




