第5期 第11話 「最後のお正月」
一月一日。
高校生活最後のお正月。
午前零時。
街には新しい年を迎えた人々の笑い声が響いていた。
駅前の時計台。
「お待たせ。」
マミが白いコートに赤いマフラー姿で駆け寄ってくる。
「あけましておめでとう。」
「あけましておめでとう。」
二人は笑顔で新年の挨拶を交わした。
「今年。」
マミが少しだけ寂しそうに笑う。
「高校生最後のお正月だね。」
「ああ。」
「あと少しなんだな。」
二人は静かにうなずいた。
◇◇◇
神社へ向かう道。
冷たい冬の空気の中、二人は肩を並べて歩く。
屋台から漂う甘酒や焼きそばの香り。
「去年も来たね。」
「一昨年も。」
「三年連続。」
マミが笑う。
「恒例行事。」
「来年も。」
「もちろん。」
◇◇◇
参拝の列へ並ぶ。
「何お願いする?」
ユウキが尋ねる。
「秘密。」
「また?」
「お願いは言わない方が叶うって聞いた。」
「なるほど。」
ユウキも笑った。
やがて順番が来る。
二人は静かに手を合わせた。
マミは心の中で願う。
(これから先も、ずっとユウキと笑って過ごせますように。)
ユウキも静かに願った。
(どんな未来でも、マミの隣にいられますように。)
◇◇◇
参拝を終え、おみくじを引く。
「せーの。」
二人同時に開く。
「大吉!」
マミが嬉しそうに声を上げる。
「俺も。」
「本当に?」
「本当。」
二人は顔を見合わせて笑った。
「今年はいい年になりそう。」
「ああ。」
◇◇◇
境内のベンチ。
温かい甘酒を飲みながら休憩する。
「ねぇ。」
マミが静かに言う。
「高校生活。」
「あと少し。」
「うん。」
「寂しい?」
「少し。」
ユウキは正直に答えた。
「でも。」
「終わりじゃない。」
「始まりでもある。」
マミは優しく微笑む。
「大学生。」
「楽しみ。」
「俺も。」
◇◇◇
帰り道。
まだ人通りの少ない商店街を歩く。
「今年の目標。」
マミが言う。
「第一志望合格。」
「ああ。」
「それと。」
「?」
「卒業まで毎日笑う。」
「いい目標だ。」
「ユウキは?」
「同じ。」
「あと。」
少し照れながら笑う。
「最後まで座席争奪戦無敗。」
「引き分けだけど。」
「それも含めて。」
二人は声を上げて笑った。
◇◇◇
朝になり、初売りが始まったショッピングモールへ寄る。
「福袋!」
マミが目を輝かせる。
「そんなに欲しい?」
「運試し!」
小さな雑貨店で一つだけ購入する。
「開けるよ。」
中には、おそろいで使えそうなマグカップが色違いで入っていた。
「すごい!」
「当たりだ。」
白いマグカップには小さなくま。
ピンク色には白いうさぎ。
二人は顔を見合わせる。
「また増えたね。」
「おそろい。」
自然と笑顔になる。
◇◇◇
帰りの電車。
元日の車内は静かだった。
窓際の席へ並んで座る。
「この景色。」
マミが窓の外を眺める。
「あと何回見られるかな。」
「卒業まで。」
「毎日見よう。」
「うん。」
「一日も無駄にしたくない。」
ユウキは静かにうなずいた。
「俺も。」
◇◇◇
最寄り駅。
改札前。
冬の空はどこまでも青く澄んでいた。
「今年も。」
マミが手を差し出す。
「よろしくね。」
ユウキはその手を優しく握る。
「ああ。」
「よろしく。」
手を離す前に、二人は笑い合う。
高校生活最後のお正月。
卒業まで残された時間は少なくなってきた。
それでも二人は、焦らず、一日一日を大切に歩いていく。
春に出会い。
恋をして。
たくさんの思い出を重ねてきた。
そして新しい一年もまた、二人の笑顔とともに始まるのだった。
**――第5期 第11話「最後のお正月」 完**




