第5期 第10話 「高校最後のクリスマス」
十二月二十四日。
高校生活最後のクリスマスイブ。
駅前には大きなクリスマスツリーが飾られ、街中が色とりどりのイルミネーションに包まれていた。
午後四時。
時計台の前で待っていると、マミが小走りでやって来る。
「お待たせ。」
白いロングコートに赤いマフラー。
雪の結晶を模した小さなイヤリングが冬の光を受けて輝いていた。
「待った?」
「今来たところ。」
「その返事、三年前から変わらないね。」
マミはくすっと笑う。
「変わらない方がいい。」
ユウキも笑ってうなずいた。
◇◇◇
イルミネーションが輝く並木道を歩く。
無数の光が冬の街を彩っている。
「きれい……。」
マミが立ち止まる。
「一年生の頃は。」
「こうして歩くなんて思わなかった。」
「ああ。」
「隣に座るだけだった。」
「それだけで嬉しかった。」
二人は自然に手をつないだ。
もう、人前で照れて手を離すことはない。
◇◇◇
ショッピングモール。
毎年恒例になったプレゼント交換の日。
「はい。」
ユウキが小さな紙袋を差し出す。
「メリークリスマス。」
「ありがとう。」
マミも笑顔でプレゼントを渡す。
「メリークリスマス。」
近くのベンチに座り、同時に袋を開けた。
ユウキが受け取ったのは、上質な革のブックカバーだった。
「これ……。」
「大学でも使えるように。」
マミが少し照れながら言う。
「ユウキ、本好きだから。」
「ありがとう。」
「大事にする。」
一方、マミが箱を開ける。
中には、小さな銀色のネックレス。
トップには、小さく寄り添う星と月。
「きれい……。」
「一年生の時。」
ユウキが笑う。
「電車で見た朝の空、覚えてる?」
「もちろん。」
「その景色をイメージした。」
マミはそっとネックレスを胸元に当てる。
「宝物。」
◇◇◇
予約していたレストラン。
窓際の席からは、イルミネーションがよく見えた。
「乾杯。」
二人はジュースのグラスを軽く合わせる。
「三年間。」
マミが微笑む。
「毎年クリスマスを一緒に過ごしてきたね。」
「ああ。」
「来年は。」
少し照れながら続ける。
「高校生じゃない。」
「でも。」
「恋人なのは変わらない。」
ユウキも静かにうなずく。
「もちろん。」
◇◇◇
食事を終え、公園へ向かう。
大きなクリスマスツリーの前。
雪が静かに降り始めた。
「ホワイトクリスマス。」
マミが空を見上げる。
「今年も。」
「一緒だね。」
「ああ。」
白い雪が肩に積もる。
二人はしばらく黙って景色を眺めていた。
◇◇◇
「ねぇ。」
マミが小さな声で言う。
「高校生活最後のクリスマス。」
「終わっちゃうね。」
「少し寂しい。」
ユウキは優しく微笑んだ。
「終わるけど。」
「来年も。」
「再来年も。」
「その先も。」
「クリスマスは来る。」
「全部。」
「一緒に過ごそう。」
マミの瞳が少し潤む。
「……うん。」
「約束。」
◇◇◇
帰りの電車。
夜の快速電車は空いていた。
二人は窓際へ並んで座る。
「やっぱり。」
マミが笑う。
「ここが一番落ち着く。」
「三年間。」
「毎日座ってきた。」
「思い出が詰まってる。」
窓には寄り添う二人の姿が映っていた。
◇◇◇
最寄り駅。
改札を出ると、雪は少しだけ強くなっていた。
「ありがとう。」
マミがネックレスを大切そうに握る。
「一生大事にする。」
「俺も。」
ユウキはブックカバーを胸に抱く。
「ずっと使う。」
少しだけ見つめ合う。
「メリークリスマス。」
「メリークリスマス。」
二人は笑顔で手を振る。
高校生活最後のクリスマス。
派手な出来事はなくても、お互いを想う気持ちは三年前よりずっと深くなっていた。
季節は静かに冬を進み、卒業の日は少しずつ近づいてくる。
それでも二人は信じていた。
この先も、毎年クリスマスを隣で迎えられることを。
**――第5期 第10話「高校最後のクリスマス」 完**




