第5期 第9話 「二人で歩く紅葉の道」
十一月。
街はすっかり秋色に染まっていた。
木々は赤や黄色に色づき、朝の風は少し冷たい。
今日は以前約束していた紅葉デートの日だった。
◇◇◇
午前九時。
駅前の時計台。
「お待たせ。」
マミが笑顔で駆け寄ってくる。
ベージュのコートに白いニット、えんじ色のマフラー。
秋らしい落ち着いた服装だった。
「おはよう。」
「おはよう。」
ユウキは少し見とれてしまう。
「……。」
「どうしたの?」
「似合ってる。」
「えっ。」
マミは一瞬固まり、すぐに顔を真っ赤にした。
「朝からそんなこと言うの?」
「思ったから。」
「もう……。」
照れながらも、とても嬉しそうだった。
◇◇◇
二人は電車へ乗り、山あいにある紅葉の名所へ向かう。
「休日なのに。」
マミが笑う。
「また電車。」
「落ち着く?」
「うん。」
「やっぱり。」
「ユウキと電車に乗るのが一番好き。」
ユウキも微笑む。
「俺も。」
運よく窓際の席へ並んで座る。
車窓には赤や黄色の山々が流れていた。
◇◇◇
目的地へ到着。
「すごい……。」
一面の紅葉。
真っ赤なモミジ。
黄金色のイチョウ。
秋の景色が二人を迎えていた。
「きれい。」
マミは思わず立ち止まる。
「写真撮ろう。」
「うん。」
二人は紅葉を背景に、何枚も写真を撮った。
◇◇◇
遊歩道をゆっくり歩く。
足元には落ち葉のじゅうたん。
歩くたびに、カサッ、カサッと優しい音が響く。
「この音。」
マミが笑う。
「好き。」
「秋しか聞けない。」
「そうだね。」
自然と歩幅もそろっていく。
◇◇◇
展望台へ着く。
山一面に広がる紅葉。
「すごい……。」
二人はしばらく言葉を失った。
「去年も。」
マミが静かに言う。
「紅葉見たね。」
「ああ。」
「でも。」
「今年の方がもっときれい。」
「どうして?」
マミが首をかしげる。
「隣にマミがいるから。」
一瞬、静かな時間が流れる。
「……。」
マミは耳まで真っ赤になり、小さく笑った。
「ずるい。」
「そんなこと言われたら。」
「私まで照れちゃう。」
◇◇◇
昼食は古民家風のお店。
温かい釜飯ときのこ汁。
「おいしい。」
「体が温まる。」
マミは幸せそうに微笑む。
「毎年秋になったら。」
「ここ来たい。」
「いいな。」
「恒例行事。」
「約束。」
二人は笑顔でうなずき合った。
◇◇◇
帰る前。
紅葉が一番きれいに見える橋の上。
風が吹き、色づいた葉が一斉に舞い始めた。
「わぁ……。」
赤や黄色の葉が空を舞う。
まるで秋が二人を祝福しているようだった。
マミはそっとユウキの手を握る。
「今日ね。」
「うん?」
「来てよかった。」
「俺も。」
「この景色も。」
「ユウキとの思い出になる。」
ユウキは優しく握り返した。
「ああ。」
「ずっと忘れない。」
◇◇◇
帰りの電車。
窓の外には夕焼け。
マミは少し眠そうに目を細めていた。
「疲れた?」
「少し。」
「でも。」
「幸せ。」
そう言って、そっとユウキの肩にもたれる。
ユウキは何も言わず、そのまま肩を貸した。
車窓には夕日に照らされた紅葉が流れていく。
◇◇◇
最寄り駅。
改札前。
「今日はありがとう。」
「こちらこそ。」
「来年も。」
マミが微笑む。
「また紅葉を見に来よう。」
「ああ。」
「来年は高校生じゃないけど。」
「恋人なのは変わらない。」
その言葉に、マミは嬉しそうに笑った。
「うん。」
「ずっと。」
二人は笑顔で手を振る。
秋の景色は、やがて冬へと変わっていく。
高校生活も残りわずか。
それでも二人は、一つひとつの季節を大切に歩いていく。
その隣には、いつも大切な人がいた。
**――第5期 第9話「二人で歩く紅葉の道」 完**




