表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
60/64

第5期 第9話 「二人で歩く紅葉の道」

挿絵(By みてみん)


 十一月。


 街はすっかり秋色に染まっていた。


 木々は赤や黄色に色づき、朝の風は少し冷たい。


 今日は以前約束していた紅葉デートの日だった。


◇◇◇


 午前九時。


 駅前の時計台。


「お待たせ。」


 マミが笑顔で駆け寄ってくる。


 ベージュのコートに白いニット、えんじ色のマフラー。


 秋らしい落ち着いた服装だった。


「おはよう。」


「おはよう。」


 ユウキは少し見とれてしまう。


「……。」


「どうしたの?」


「似合ってる。」


「えっ。」


 マミは一瞬固まり、すぐに顔を真っ赤にした。


「朝からそんなこと言うの?」


「思ったから。」


「もう……。」


 照れながらも、とても嬉しそうだった。


◇◇◇


 二人は電車へ乗り、山あいにある紅葉の名所へ向かう。


「休日なのに。」


 マミが笑う。


「また電車。」


「落ち着く?」


「うん。」


「やっぱり。」


「ユウキと電車に乗るのが一番好き。」


 ユウキも微笑む。


「俺も。」


 運よく窓際の席へ並んで座る。


 車窓には赤や黄色の山々が流れていた。


◇◇◇


 目的地へ到着。


「すごい……。」


 一面の紅葉。


 真っ赤なモミジ。


 黄金色のイチョウ。


 秋の景色が二人を迎えていた。


「きれい。」


 マミは思わず立ち止まる。


「写真撮ろう。」


「うん。」


 二人は紅葉を背景に、何枚も写真を撮った。


◇◇◇


 遊歩道をゆっくり歩く。


 足元には落ち葉のじゅうたん。


 歩くたびに、カサッ、カサッと優しい音が響く。


「この音。」


 マミが笑う。


「好き。」


「秋しか聞けない。」


「そうだね。」


 自然と歩幅もそろっていく。


◇◇◇


 展望台へ着く。


 山一面に広がる紅葉。


「すごい……。」


 二人はしばらく言葉を失った。


「去年も。」


 マミが静かに言う。


「紅葉見たね。」


「ああ。」


「でも。」


「今年の方がもっときれい。」


「どうして?」


 マミが首をかしげる。


「隣にマミがいるから。」


 一瞬、静かな時間が流れる。


「……。」


 マミは耳まで真っ赤になり、小さく笑った。


「ずるい。」


「そんなこと言われたら。」


「私まで照れちゃう。」


◇◇◇


 昼食は古民家風のお店。


 温かい釜飯ときのこ汁。


「おいしい。」


「体が温まる。」


 マミは幸せそうに微笑む。


「毎年秋になったら。」


「ここ来たい。」


「いいな。」


「恒例行事。」


「約束。」


 二人は笑顔でうなずき合った。


◇◇◇


 帰る前。


 紅葉が一番きれいに見える橋の上。


 風が吹き、色づいた葉が一斉に舞い始めた。


「わぁ……。」


 赤や黄色の葉が空を舞う。


 まるで秋が二人を祝福しているようだった。


 マミはそっとユウキの手を握る。


「今日ね。」


「うん?」


「来てよかった。」


「俺も。」


「この景色も。」


「ユウキとの思い出になる。」


 ユウキは優しく握り返した。


「ああ。」


「ずっと忘れない。」


◇◇◇


 帰りの電車。


 窓の外には夕焼け。


 マミは少し眠そうに目を細めていた。


「疲れた?」


「少し。」


「でも。」


「幸せ。」


 そう言って、そっとユウキの肩にもたれる。


 ユウキは何も言わず、そのまま肩を貸した。


 車窓には夕日に照らされた紅葉が流れていく。


◇◇◇


 最寄り駅。


 改札前。


「今日はありがとう。」


「こちらこそ。」


「来年も。」


 マミが微笑む。


「また紅葉を見に来よう。」


「ああ。」


「来年は高校生じゃないけど。」


「恋人なのは変わらない。」


 その言葉に、マミは嬉しそうに笑った。


「うん。」


「ずっと。」


 二人は笑顔で手を振る。


 秋の景色は、やがて冬へと変わっていく。


 高校生活も残りわずか。


 それでも二人は、一つひとつの季節を大切に歩いていく。


 その隣には、いつも大切な人がいた。


**――第5期 第9話「二人で歩く紅葉の道」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ