第5期 第7話 「最後の文化祭」
九月。
長い夏休みが終わり、学校には再び活気が戻ってきた。
三年生にとっては、高校生活最後の文化祭。
教室の黒板には大きく書かれている。
『文化祭まであと7日!』
「もう一週間か。」
ユウキが黒板を見上げる。
「早いね。」
マミも隣で微笑んだ。
◇◇◇
朝のホーム。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
まだ夏の暑さは残っているものの、風には少しだけ秋の気配が混じっていた。
「文化祭。」
「最後だね。」
「ああ。」
「悔いなく終わりたい。」
「うん。」
二人は同時にうなずく。
◇◇◇
快速電車へ乗り込む。
「勝負!」
「もちろん。」
数駅後。
「!」
「!」
今日も並んで座る。
「引き分け。」
「卒業まで更新中。」
マミは笑う。
「何回連続なんだろう。」
「もう誰にも破れない記録。」
「公式記録じゃないけど。」
二人は楽しそうに笑った。
◇◇◇
文化祭準備。
三年三組の出し物は「昔ながらの喫茶店」。
「ユウキ!」
高橋がエプロンを投げてくる。
「看板作って!」
「了解。」
一方、マミは女子たちと制服風の接客衣装の準備をしていた。
「マミ、そのリボン似合う!」
「ありがとう。」
教室中が笑顔であふれていた。
◇◇◇
文化祭当日。
朝から校内は大勢の来場者でにぎわう。
「いらっしゃいませ!」
マミが笑顔で接客する。
「こちらへどうぞ。」
ユウキは厨房担当としてドリンクを運ぶ。
「アイスコーヒーです。」
二人は忙しく動き回っていた。
◇◇◇
昼過ぎ。
ようやく休憩時間。
「疲れた?」
ユウキが聞く。
「少し。」
「でも。」
マミは笑う。
「すごく楽しい。」
「最後だから。」
「全部思い出にしたい。」
◇◇◇
文化祭の終盤。
クラスのみんなで記念撮影。
「三年三組!」
「最高ー!」
シャッターが切られる。
そのあと、高橋が笑いながら言う。
「最後にカップル写真!」
「またか。」
「当然!」
クラスメイトたちに背中を押される。
ユウキとマミは照れながら並ぶ。
「もっと近く!」
「近い近い!」
みんなに笑われながら、一枚の写真が撮られた。
そこには、少し恥ずかしそうに笑う二人が写っていた。
◇◇◇
夕方。
後夜祭。
校庭には提灯が並び、音楽が流れている。
「綺麗。」
マミが空を見上げる。
「文化祭も終わりだね。」
「ああ。」
「寂しい?」
「少し。」
ユウキも正直に答えた。
「でも。」
「みんな笑って終われた。」
「それが一番。」
マミは嬉しそうに微笑んだ。
◇◇◇
帰りの快速電車。
今日も並んで座る。
文化祭の疲れで、二人とも少し静かだった。
「ねぇ。」
マミがぽつりと言う。
「一年前の文化祭。」
「ここで。」
「付き合うことになった。」
「ああ。」
「もう二年以上前だ。」
「早いね。」
少しだけ沈黙が流れる。
「ありがとう。」
マミが静かに言う。
「文化祭の日。」
「勇気を出してくれて。」
ユウキは照れながら笑った。
「俺も。」
「マミが返事してくれたから。」
「今がある。」
◇◇◇
最寄り駅。
改札前。
「最後の文化祭。」
「終わっちゃった。」
「でも。」
ユウキは微笑む。
「一番大事な思い出は。」
「文化祭そのものじゃない。」
「?」
「文化祭で。」
「マミと恋人になれたこと。」
マミは目を潤ませながら笑った。
「……うん。」
「私も。」
少しだけ涙をこらえながら、笑顔を見せる。
「ありがとう。」
二人はゆっくり手をつなぐ。
高校生活最後の文化祭。
新しい思い出が増えた日。
そして、二人が恋人になった原点を、改めて大切に思い返した一日だった。
**――第5期 第7話「最後の文化祭」 完**




