表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/64

第5期 第3話 「最後の体育祭」

挿絵(By みてみん)


 五月。


 校庭には色とりどりの団旗が立ち並び、高校生活最後の体育祭が近づいていた。


 朝のホーム。


「おはよう。」


「おはよう、ユウキ。」


 マミは首から体育祭の実行委員用ネームカードを下げていた。


「準備、大変?」


「昨日は帰るの遅くなっちゃった。」


「でも楽しい。」


「最後だもん。」


 その一言に、ユウキもうなずいた。


 "最後"という言葉が少しずつ増えていく。


 三年生になったことを改めて実感する朝だった。


◇◇◇


 快速電車へ乗り込む。


「今日も。」


 マミが笑う。


「勝負!」


「もちろん。」


 数駅後。


「!」


「!」


 二人はぴったり息を合わせて並んで座る。


「引き分け。」


「これだけは最後まで負けない。」


 マミは嬉しそうに笑った。


「卒業まで無敗記録更新!」


「引き分けだけどな。」


 二人は笑い声を響かせた。


◇◇◇


 学校。


 体育祭前日。


 クラス全員でテントを組み立て、応援旗を飾る。


「ユウキ!」


 高橋が大きく手を振る。


「こっち押さえて!」


「了解。」


 一方マミは女子たちと装飾を担当していた。


「完成!」


 色鮮やかなクラス旗が風になびく。


「いい感じ!」


 教室中が拍手に包まれた。


◇◇◇


 そして迎えた体育祭当日。


 雲一つない青空。


 開会式が始まり、校長先生の挨拶が終わる。


「選手宣誓!」


 会場から大きな拍手が起こった。


◇◇◇


 午前の競技。


 ユウキは百メートル走へ出場する。


「位置について。」


 ピストルの音が響く。


 一斉に走り出す。


「頑張れー!」


 応援席からマミの声が聞こえた。


 ゴール。


 二位。


「惜しかった!」


 マミが駆け寄る。


「十分すごいよ!」


「あと少しだった。」


「かっこよかった。」


 その一言だけで、悔しさは少しだけ軽くなった。


◇◇◇


 午後。


 今度はマミがクラス対抗リレーに出場する。


「マミ!」


「頑張れ!」


 バトンを受け取る。


 必死に前を追いかける。


 最後まで全力で走り切った。


 結果は一位。


「やったー!」


 クラス全員が歓声を上げる。


 ユウキも思わず大きく拍手を送った。


「すごかった。」


「足震えてる。」


 マミは息を切らしながら笑った。


◇◇◇


 最後の競技。


 クラス対抗大縄跳び。


「せーの!」


 一回。


 二回。


 三回。


 最初は続かなかった。


「もう一回!」


 何度も挑戦する。


 そして最後。


「四十八回!」


 自己最高記録だった。


 順位は二位。


 それでもクラス全員が笑顔だった。


◇◇◇


 閉会式。


「今年の優勝は——。」


 三年三組。


「やったー!」


 校庭に歓声が響く。


 みんなで肩を組み、喜び合う。


 高橋は飛び跳ねながら叫んだ。


「最高!」


◇◇◇


 放課後。


 誰もいなくなった校庭。


 二人はグラウンドをゆっくり歩いていた。


「終わっちゃったね。」


 マミが空を見上げる。


「ああ。」


「最後の体育祭。」


「楽しかった。」


「うん。」


 少しだけ寂しそうに笑う。


「最後って。」


「やっぱり寂しい。」


 ユウキは静かに答えた。


「でも。」


「今日の思い出は。」


「ずっと残る。」


 マミは優しくうなずいた。


「そうだね。」


◇◇◇


 帰りの快速電車。


 今日も並んで座る。


 疲れていた二人は、しばらく黙って窓の外を眺めていた。


「ねぇ。」


 マミが静かに言う。


「高校生活最後の体育祭。」


「一緒に過ごせてよかった。」


「俺も。」


「最後まで。」


「全部一緒だったな。」


「うん。」


 マミはそっとユウキの肩へ頭を預けた。


「少しだけ。」


「こうしててもいい?」


「ああ。」


 ユウキは優しく微笑む。


 夕日が二人を包み込む。


 体育祭の歓声はもう聞こえない。


 でも今日という一日は、きっと何年経っても忘れない。


◇◇◇


 最寄り駅。


 改札を出る。


「次は文化祭かな。」


 マミが笑う。


「高校最後の。」


「ああ。」


「まだ思い出は増やせる。」


「いっぱいね。」


 二人は笑顔で手を振り合う。


 高校生活最後の体育祭。


 全力で走り、笑い、喜び合った一日。


 そしてその思い出のすべてに、二人はお互いの姿を見つけることができた。


**――第5期 第3話「最後の体育祭」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ