第5期 第3話 「最後の体育祭」
五月。
校庭には色とりどりの団旗が立ち並び、高校生活最後の体育祭が近づいていた。
朝のホーム。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
マミは首から体育祭の実行委員用ネームカードを下げていた。
「準備、大変?」
「昨日は帰るの遅くなっちゃった。」
「でも楽しい。」
「最後だもん。」
その一言に、ユウキもうなずいた。
"最後"という言葉が少しずつ増えていく。
三年生になったことを改めて実感する朝だった。
◇◇◇
快速電車へ乗り込む。
「今日も。」
マミが笑う。
「勝負!」
「もちろん。」
数駅後。
「!」
「!」
二人はぴったり息を合わせて並んで座る。
「引き分け。」
「これだけは最後まで負けない。」
マミは嬉しそうに笑った。
「卒業まで無敗記録更新!」
「引き分けだけどな。」
二人は笑い声を響かせた。
◇◇◇
学校。
体育祭前日。
クラス全員でテントを組み立て、応援旗を飾る。
「ユウキ!」
高橋が大きく手を振る。
「こっち押さえて!」
「了解。」
一方マミは女子たちと装飾を担当していた。
「完成!」
色鮮やかなクラス旗が風になびく。
「いい感じ!」
教室中が拍手に包まれた。
◇◇◇
そして迎えた体育祭当日。
雲一つない青空。
開会式が始まり、校長先生の挨拶が終わる。
「選手宣誓!」
会場から大きな拍手が起こった。
◇◇◇
午前の競技。
ユウキは百メートル走へ出場する。
「位置について。」
ピストルの音が響く。
一斉に走り出す。
「頑張れー!」
応援席からマミの声が聞こえた。
ゴール。
二位。
「惜しかった!」
マミが駆け寄る。
「十分すごいよ!」
「あと少しだった。」
「かっこよかった。」
その一言だけで、悔しさは少しだけ軽くなった。
◇◇◇
午後。
今度はマミがクラス対抗リレーに出場する。
「マミ!」
「頑張れ!」
バトンを受け取る。
必死に前を追いかける。
最後まで全力で走り切った。
結果は一位。
「やったー!」
クラス全員が歓声を上げる。
ユウキも思わず大きく拍手を送った。
「すごかった。」
「足震えてる。」
マミは息を切らしながら笑った。
◇◇◇
最後の競技。
クラス対抗大縄跳び。
「せーの!」
一回。
二回。
三回。
最初は続かなかった。
「もう一回!」
何度も挑戦する。
そして最後。
「四十八回!」
自己最高記録だった。
順位は二位。
それでもクラス全員が笑顔だった。
◇◇◇
閉会式。
「今年の優勝は——。」
三年三組。
「やったー!」
校庭に歓声が響く。
みんなで肩を組み、喜び合う。
高橋は飛び跳ねながら叫んだ。
「最高!」
◇◇◇
放課後。
誰もいなくなった校庭。
二人はグラウンドをゆっくり歩いていた。
「終わっちゃったね。」
マミが空を見上げる。
「ああ。」
「最後の体育祭。」
「楽しかった。」
「うん。」
少しだけ寂しそうに笑う。
「最後って。」
「やっぱり寂しい。」
ユウキは静かに答えた。
「でも。」
「今日の思い出は。」
「ずっと残る。」
マミは優しくうなずいた。
「そうだね。」
◇◇◇
帰りの快速電車。
今日も並んで座る。
疲れていた二人は、しばらく黙って窓の外を眺めていた。
「ねぇ。」
マミが静かに言う。
「高校生活最後の体育祭。」
「一緒に過ごせてよかった。」
「俺も。」
「最後まで。」
「全部一緒だったな。」
「うん。」
マミはそっとユウキの肩へ頭を預けた。
「少しだけ。」
「こうしててもいい?」
「ああ。」
ユウキは優しく微笑む。
夕日が二人を包み込む。
体育祭の歓声はもう聞こえない。
でも今日という一日は、きっと何年経っても忘れない。
◇◇◇
最寄り駅。
改札を出る。
「次は文化祭かな。」
マミが笑う。
「高校最後の。」
「ああ。」
「まだ思い出は増やせる。」
「いっぱいね。」
二人は笑顔で手を振り合う。
高校生活最後の体育祭。
全力で走り、笑い、喜び合った一日。
そしてその思い出のすべてに、二人はお互いの姿を見つけることができた。
**――第5期 第3話「最後の体育祭」 完**




