第5期 第2話 「進路希望と、二人の未来」
四月中旬。
桜の花びらも散り始め、新緑が顔をのぞかせる季節になった。
朝のホーム。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
今日も二人は自然に並んで立つ。
「眠そうだね。」
ユウキが笑う。
「昨日ね。」
マミは少し照れながら答える。
「進路希望調査を書いてた。」
「もうそんな時期か。」
「三年生だもん。」
二人は少しだけ大人になった現実を感じていた。
◇◇◇
快速電車へ乗り込む。
数駅後。
「!」
「!」
今年も変わらず、二人掛けの席を確保する。
「引き分け。」
「もうこれが日課。」
マミは笑った。
「卒業しても。」
「つい空席探しちゃいそう。」
「職業病みたいだな。」
「座席争奪病です。」
二人は声を上げて笑った。
◇◇◇
ホームルーム。
担任が一枚の紙を配る。
「進路希望調査票だ。」
「第一希望を書いて、来週までに提出。」
教室の空気が少し引き締まる。
高校生活最後の一年。
卒業後が、少しずつ現実になってきていた。
◇◇◇
昼休み。
屋上。
お弁当を食べ終えると、マミが静かに口を開いた。
「ユウキ。」
「うん?」
「大学。」
「決めた?」
「第一志望は。」
ユウキは少し照れながら答える。
「○○大学。」
「本当?」
マミは目を丸くした。
「私も。」
「同じ。」
二人はしばらく顔を見合わせる。
「偶然?」
「たぶん。」
「でも。」
マミは嬉しそうに笑った。
「ちょっと安心した。」
「俺も。」
◇◇◇
放課後。
図書室。
二人は大学案内のパンフレットを並べて読んでいた。
「キャンパス広い。」
「高校の何倍あるんだろ。」
「学食もおいしそう。」
「そこか。」
「大事です。」
ユウキは苦笑する。
「マミらしい。」
「えへへ。」
ページをめくるたび、未来の生活が少しずつ現実味を帯びていく。
◇◇◇
帰り道。
夕日に照らされた川沿いを歩く。
「ねぇ。」
マミが静かに言う。
「大学生になっても。」
「毎日会えるかな。」
ユウキは少し考える。
「大学が同じなら。」
「今ほどじゃなくても会える。」
「違っても。」
「会いに行く。」
「約束。」
マミはほっとしたように笑った。
「ありがとう。」
◇◇◇
帰りの快速電車。
今日も窓際へ並んで座る。
「高校卒業したら。」
マミが窓の外を眺めながら言う。
「この電車。」
「乗る回数減るかもしれないね。」
「ああ。」
「でも。」
ユウキは微笑む。
「乗れなくなるわけじゃない。」
「休日に。」
「二人で乗ればいい。」
マミの表情がぱっと明るくなる。
「そうだね!」
「通学じゃなくても。」
「デートで乗れる。」
「その方が楽しそう。」
二人は笑い合った。
◇◇◇
最寄り駅。
改札前。
「今日ね。」
マミが少し照れながら言う。
「大学のパンフレット見て。」
「怖いより。」
「楽しみの方が大きくなった。」
「俺も。」
「未来が。」
「マミと一緒なら。」
「楽しみだ。」
その言葉に、マミは耳まで赤く染めた。
「私も。」
「ユウキとなら。」
「どんな未来でも。」
「幸せだと思う。」
春風が二人の間を優しく吹き抜ける。
高校生活最後の一年。
卒業という終わりは近づいている。
でも、それは二人にとって、新しい未来の始まりでもあった。
通学電車で始まった恋は、少しずつ「その先」の景色へ向かって歩き始めていた。
**――第5期 第2話「進路希望と、二人の未来」 完**




