↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/64

第5期 第1話 「三度目の春、変わらない朝」

挿絵(By みてみん)


 三年生の春。


 桜並木は今年も満開だった。


 高校へ向かう道を歩きながら、ユウキはゆっくりと空を見上げる。


「もう三年生か。」


 入学した日のことが、昨日のように思い出される。


 あの日も、こんな春だった。


◇◇◇


 いつもの駅。


 いつものホーム。


 そして——。


「おはよう。」


 聞き慣れた優しい声。


「おはよう、マミ。」


 マミは春らしい薄桃色のカーディガンを制服の上に羽織り、嬉しそうに笑った。


「今日から三年生だね。」


「ああ。」


「高校最後の一年。」


 その言葉に、二人は少しだけ静かになる。


「楽しもう。」


 マミが微笑む。


「悔いが残らないように。」


「もちろん。」


◇◇◇


 快速電車がホームへ滑り込む。


「最後の一年も。」


 マミが笑う。


「勝負!」


「受けて立つ。」


 二人は別々のドアから乗り込む。


 人の流れを読む。


 降りる人の位置を見極める。


 そして数駅後。


「!」


「!」


 今年最初の座席争奪戦も、結果は同じだった。


「引き分け。」


「今年もだね。」


「もう何百回目だろ。」


「数えきれない。」


 二人は笑いながら並んで座る。


 車窓を流れる桜並木が、新しい一年の始まりを祝福しているようだった。


◇◇◇


 学校へ到着すると、昇降口には新しいクラス表が貼り出されていた。


「見に行こう。」


「ああ。」


 人混みをかき分けながら名前を探す。


「三年三組……。」


 ユウキが見つける。


「俺はここ。」


「私も!」


 マミが思わず声を上げた。


「また同じクラス!」


 二人は驚いたあと、同時に笑顔になる。


「三年連続。」


「本当にすごい。」


 そこへ高橋が走ってきた。


「おーい!」


「俺も同じクラス!」


「今年もよろしく!」


「結局みんな一緒か。」


 教室は笑い声に包まれた。


◇◇◇


 ホームルーム。


 担任が教壇に立つ。


「いよいよ高校生活最後の一年だ。」


「勉強も進路も大切だが、それ以上に、一日一日を大切に過ごしてほしい。」


 教室が静かになる。


 その言葉は、誰の胸にもまっすぐ届いていた。


◇◇◇


 昼休み。


 屋上。


 去年と同じベンチ。


「ここも三年目。」


 マミがお弁当を開きながら笑う。


「変わらないな。」


「変わってほしくない。」


 春風が二人の間を吹き抜ける。


「ねぇ。」


 マミが桜を見上げる。


「高校生活、あと一年なんだね。」


「あっという間だ。」


「卒業したら。」


 少しだけ寂しそうに笑う。


「毎日この電車には乗れなくなるのかな。」


 ユウキは少し考えたあと、穏やかに答えた。


「通学は終わるかもしれない。」


「でも。」


「会えなくなるわけじゃない。」


 マミはその言葉に安心したように微笑んだ。


「うん。」


◇◇◇


 放課後。


 駅へ向かう道。


 校門を出ると、新入生たちが楽しそうに歩いていた。


「去年の私たちも。」


「こんな感じだったかな。」


「もっと緊張してた。」


「確かに。」


 二人は思わず笑う。


 あの頃は、こんな未来が待っているなんて想像もしていなかった。


◇◇◇


 帰りの快速電車。


 今日も窓際の席に並んで座る。


「三年生になっても。」


 マミがつぶやく。


「何も変わらなかったね。」


「いいことだ。」


「うん。」


 マミは小さくうなずく。


「変わらない朝。」


「変わらない帰り道。」


「変わらない特等席。」


 そして。


「変わらない、大好きな人。」


 ユウキは少し照れながら笑った。


「俺も。」


「これからも。」


「ずっと隣にいる。」


 マミは嬉しそうに微笑んだ。


「約束。」


 二人は小さく小指を重ねる。


 高校最後の春。


 新しい一年が始まった。


 でも、二人の毎日は何も変わらない。


 朝はホームで待ち合わせをして。


 通学電車で隣に座って。


 学校で笑い合い。


 また一緒に帰る。


 その何気ない日常こそが、二人にとって何よりも大切な宝物だった。


**――第5期 第1話「三度目の春、変わらない朝」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。