第4期 第12話 「変わらない特等席」
修学旅行から一週間。
学校生活は、いつもの日常へ戻っていた。
朝のホーム。
電車を待つ人の流れ。
聞き慣れた発車ベル。
そして――。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
いつもの笑顔。
修学旅行が終わっても、二人の日常は何も変わらなかった。
◇◇◇
快速電車がホームへ滑り込む。
「勝負。」
マミが小さく笑う。
「受けて立つ。」
二人は別々のドアから乗車する。
降りる人を見極める。
歩く速さを合わせる。
そして数駅後。
「!」
「!」
今日も並んで席へ座る。
「引き分け。」
「何連続だ?」
「もう数えてない。」
二人は笑い合う。
「でも。」
マミが窓の外を眺めながら言う。
「この時間。」
「一番好き。」
ユウキも静かにうなずいた。
◇◇◇
教室。
休み時間。
「ユウキ!」
高橋が写真を見せてくる。
「修学旅行の写真できた!」
みんなで集まってアルバムを見る。
「この鹿!」
「マミちゃん逃げてる!」
「もう忘れて!」
教室中が笑いに包まれる。
「この写真もいいな。」
ユウキが指差したのは、清水寺で撮った集合写真。
全員が笑顔だった。
「青春だね。」
マミも嬉しそうに微笑んだ。
◇◇◇
昼休み。
屋上。
風が少しだけ夏の匂いを運んでくる。
「もうすぐ夏だね。」
「去年の夏。」
「花火大会。」
「海。」
マミが懐かしそうに笑う。
「一年って本当に早い。」
「ああ。」
「今年の夏も。」
「いっぱい思い出作ろう。」
「もちろん。」
◇◇◇
放課後。
駅へ向かう途中。
商店街には七夕飾りが並び始めていた。
「短冊。」
マミが足を止める。
「書けるみたい。」
「書く?」
「うん。」
二人はそれぞれ短冊を受け取る。
少し離れた場所で書き始めた。
書き終えると、お互い見せないように笹へ結ぶ。
「何書いた?」
「秘密。」
「また?」
「願い事だから。」
「叶わなくなるかも。」
「そういうものか。」
二人は笑った。
実は。
マミは『これからもユウキとたくさん笑えますように』と書き、
ユウキは『これからもマミの隣にいられますように』と書いていた。
もちろん、お互いそのことは知らない。
◇◇◇
帰りの快速電車。
今日も窓際へ並んで座る。
夕日が車内を優しく照らしていた。
「ねぇ。」
マミが静かに言う。
「修学旅行でね。」
「うん。」
「ホテルで思ったの。」
「早く帰りたいって。」
「え?」
「もちろん楽しかったよ。」
「でも。」
「この電車。」
「いつもの帰り道。」
「ユウキの隣。」
「全部恋しくなった。」
ユウキは少し驚き、それから微笑んだ。
「俺も。」
「京都も奈良も楽しかった。」
「でも。」
「やっぱり。」
「この席が一番落ち着く。」
二人は自然に笑い合った。
◇◇◇
最寄り駅。
改札前。
「明日も。」
マミが微笑む。
「ホームで。」
「ああ。」
「また座席争奪戦。」
「負けないよ。」
「引き分けだけどな。」
二人は声をそろえて笑った。
特別な旅行も楽しい。
遠くの景色も美しい。
でも二人にとって、一番大切なのは。
毎朝会うホーム。
毎日乗る快速電車。
そして、隣同士で過ごす何気ない時間。
その"特等席"は、これから先も変わることはない。
**――第4期 第12話「変わらない特等席」 完**




