第4期 第11話 「修学旅行、最後の日」
三日目。
修学旅行、最終日。
朝六時。
ホテルの窓から差し込む朝日で、ユウキは目を覚ました。
「もう最終日か……。」
昨日までの賑やかさが嘘のように、少しだけ寂しさが胸に広がる。
◇◇◇
朝食会場。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
マミは少し眠そうに笑った。
「もう終わっちゃうね。」
「あっという間だった。」
「もっと京都にいたかった。」
「俺も。」
パンを食べながら、二人は昨日撮った写真をスマートフォンで見返す。
「この写真好き。」
マミが画面を見せる。
清水寺を背景に、二人が自然に笑っている一枚だった。
「送って。」
「もちろん。」
◇◇◇
ホテルを出発し、最後の見学地へ向かう。
嵐山。
竹林の小径には、朝の光が差し込んでいた。
「きれい……。」
マミは足を止める。
「静か。」
風が吹くたび、竹がさらさらと音を立てる。
「この音。」
「落ち着く。」
「ずっと歩いていたい。」
二人は班のみんなと一緒に、ゆっくり竹林を進んでいった。
◇◇◇
自由時間。
お土産店が並ぶ通り。
「何買おうかな。」
マミが棚を眺める。
「家族には八つ橋。」
「友達には?」
「キーホルダー。」
「ユウキは?」
「家にはお菓子。」
少し考えてから続ける。
「あと。」
「?」
「マミにも。」
「え?」
「内緒。」
「また秘密?」
「帰ってから渡す。」
マミは嬉しそうに笑った。
「楽しみにしてる。」
◇◇◇
昼食を終え、新幹線の時間まで少し余裕があった。
駅のホームで班のみんなと写真を撮る。
「最後にもう一枚!」
高橋がスマートフォンを掲げる。
「せーの!」
「修学旅行、最高ー!」
シャッターが切られる。
全員が笑顔だった。
◇◇◇
帰りの新幹線。
今度は座席が近くになり、通路を挟んで向かい合う位置だった。
「眠い?」
ユウキが尋ねる。
「少し。」
「でも寝るのもったいない。」
「景色見たい。」
窓の外を眺める。
京都の街並みが少しずつ遠ざかっていく。
「また来たいね。」
「うん。」
「今度は。」
マミは少し照れながら笑う。
「二人だけで。」
ユウキも微笑む。
「ああ。」
「約束。」
◇◇◇
夕方。
学校へ戻るバス。
先生がマイクを持つ。
「みんな、お疲れさま。」
「修学旅行は家に帰るまでが修学旅行です。」
その言葉に、車内は笑いに包まれた。
◇◇◇
学校で解散。
夕焼けに染まる校門を出る。
「なんだか。」
マミがぽつりと言う。
「終わっちゃったね。」
「そうだな。」
「でも。」
「思い出は残る。」
マミは静かにうなずく。
「写真も。」
「お土産も。」
「全部宝物。」
◇◇◇
帰りの快速電車。
修学旅行のあとでも、二人は自然と並んで座っていた。
「やっぱり。」
マミが笑う。
「この席が一番落ち着く。」
「三日ぶりだからな。」
「新幹線も楽しかったけど。」
「やっぱり。」
二人は同時に笑う。
「この電車。」
声が重なる。
「一緒だ。」
「だな。」
◇◇◇
最寄り駅。
改札前。
ユウキはバッグから小さな紙袋を取り出した。
「これ。」
「京都で買った。」
マミが開けると、中には桜模様のしおりが入っていた。
淡いピンク色の組紐が付いた、上品なデザインだった。
「きれい……。」
「本読むの好きだから。」
「ありがとう。」
マミは大切そうに両手で包む。
「ずっと使う。」
「その代わり。」
マミもバッグから小さな包みを取り出す。
「はい。」
中には青い組紐のお守り。
「交通安全のお守り。」
「毎日電車に乗るから。」
ユウキは少し驚いたあと、優しく笑った。
「ありがとう。」
「毎日持ち歩く。」
◇◇◇
二人は駅前で手を振る。
「修学旅行。」
「最高だった。」
「ああ。」
「でも。」
マミは少し照れながら微笑む。
「また二人で京都に行こうね。」
「もちろん。」
春に始まった二年生。
その最初の大きな思い出となった修学旅行は、こうして幕を閉じた。
けれど、二人の物語はまだ続く。
今度は学校行事ではなく、自分たちの足で、もう一度あの街を歩く日を夢見ながら。
**――第4期 第11話「修学旅行、最後の日」 完**




