表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/64

第4期 第11話 「修学旅行、最後の日」

挿絵(By みてみん)


 三日目。


 修学旅行、最終日。


 朝六時。


 ホテルの窓から差し込む朝日で、ユウキは目を覚ました。


「もう最終日か……。」


 昨日までの賑やかさが嘘のように、少しだけ寂しさが胸に広がる。


◇◇◇


 朝食会場。


「おはよう。」


「おはよう、ユウキ。」


 マミは少し眠そうに笑った。


「もう終わっちゃうね。」


「あっという間だった。」


「もっと京都にいたかった。」


「俺も。」


 パンを食べながら、二人は昨日撮った写真をスマートフォンで見返す。


「この写真好き。」


 マミが画面を見せる。


 清水寺を背景に、二人が自然に笑っている一枚だった。


「送って。」


「もちろん。」


◇◇◇


 ホテルを出発し、最後の見学地へ向かう。


 嵐山。


 竹林の小径には、朝の光が差し込んでいた。


「きれい……。」


 マミは足を止める。


「静か。」


 風が吹くたび、竹がさらさらと音を立てる。


「この音。」


「落ち着く。」


「ずっと歩いていたい。」


 二人は班のみんなと一緒に、ゆっくり竹林を進んでいった。


◇◇◇


 自由時間。


 お土産店が並ぶ通り。


「何買おうかな。」


 マミが棚を眺める。


「家族には八つ橋。」


「友達には?」


「キーホルダー。」


「ユウキは?」


「家にはお菓子。」


 少し考えてから続ける。


「あと。」


「?」


「マミにも。」


「え?」


「内緒。」


「また秘密?」


「帰ってから渡す。」


 マミは嬉しそうに笑った。


「楽しみにしてる。」


◇◇◇


 昼食を終え、新幹線の時間まで少し余裕があった。


 駅のホームで班のみんなと写真を撮る。


「最後にもう一枚!」


 高橋がスマートフォンを掲げる。


「せーの!」


「修学旅行、最高ー!」


 シャッターが切られる。


 全員が笑顔だった。


◇◇◇


 帰りの新幹線。


 今度は座席が近くになり、通路を挟んで向かい合う位置だった。


「眠い?」


 ユウキが尋ねる。


「少し。」


「でも寝るのもったいない。」


「景色見たい。」


 窓の外を眺める。


 京都の街並みが少しずつ遠ざかっていく。


「また来たいね。」


「うん。」


「今度は。」


 マミは少し照れながら笑う。


「二人だけで。」


 ユウキも微笑む。


「ああ。」


「約束。」


◇◇◇


 夕方。


 学校へ戻るバス。


 先生がマイクを持つ。


「みんな、お疲れさま。」


「修学旅行は家に帰るまでが修学旅行です。」


 その言葉に、車内は笑いに包まれた。


◇◇◇


 学校で解散。


 夕焼けに染まる校門を出る。


「なんだか。」


 マミがぽつりと言う。


「終わっちゃったね。」


「そうだな。」


「でも。」


「思い出は残る。」


 マミは静かにうなずく。


「写真も。」


「お土産も。」


「全部宝物。」


◇◇◇


 帰りの快速電車。


 修学旅行のあとでも、二人は自然と並んで座っていた。


「やっぱり。」


 マミが笑う。


「この席が一番落ち着く。」


「三日ぶりだからな。」


「新幹線も楽しかったけど。」


「やっぱり。」


 二人は同時に笑う。


「この電車。」


 声が重なる。


「一緒だ。」


「だな。」


◇◇◇


 最寄り駅。


 改札前。


 ユウキはバッグから小さな紙袋を取り出した。


「これ。」


「京都で買った。」


 マミが開けると、中には桜模様のしおりが入っていた。


 淡いピンク色の組紐が付いた、上品なデザインだった。


「きれい……。」


「本読むの好きだから。」


「ありがとう。」


 マミは大切そうに両手で包む。


「ずっと使う。」


「その代わり。」


 マミもバッグから小さな包みを取り出す。


「はい。」


 中には青い組紐のお守り。


「交通安全のお守り。」


「毎日電車に乗るから。」


 ユウキは少し驚いたあと、優しく笑った。


「ありがとう。」


「毎日持ち歩く。」


◇◇◇


 二人は駅前で手を振る。


「修学旅行。」


「最高だった。」


「ああ。」


「でも。」


 マミは少し照れながら微笑む。


「また二人で京都に行こうね。」


「もちろん。」


 春に始まった二年生。


 その最初の大きな思い出となった修学旅行は、こうして幕を閉じた。


 けれど、二人の物語はまだ続く。


 今度は学校行事ではなく、自分たちの足で、もう一度あの街を歩く日を夢見ながら。


**――第4期 第11話「修学旅行、最後の日」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ