表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/64

第4期 第10話 「修学旅行、二日目」

挿絵(By みてみん)


 修学旅行二日目。


 京都の朝は、澄んだ空気に包まれていた。


 午前六時三十分。


 旅館の食堂には、生徒たちが次々と集まってくる。


「おはよう。」


「おはよう、ユウキ。」


 マミは眠そうに目をこすりながら席へ座った。


「ちゃんと寝られた?」


「うん。」


「でも。」


 少し笑う。


「みんな夜遅くまで話してたから。」


「寝不足。」


「男子も同じだった。」


 二人は顔を見合わせて笑った。


◇◇◇


 朝食を終え、バスで奈良へ向かう。


 車窓にはのどかな田園風景が広がる。


「修学旅行って。」


 マミが窓の外を見ながら言う。


「あっという間だね。」


「まだ二日目だけど。」


「もう終わってほしくない。」


 ユウキは静かにうなずいた。


「俺も。」


◇◇◇


 奈良公園。


「鹿だ!」


 マミは目を輝かせる。


 公園のあちこちで鹿がのんびり草を食べていた。


「かわいい。」


 鹿せんべいを買う。


「はい。」


 一枚差し出した瞬間。


 数頭の鹿が一斉に集まってきた。


「えっ?」


「ちょっと待って!」


「きゃー!」


 マミは慌ててユウキの後ろへ隠れる。


 周りから笑い声が上がる。


「人気者だな。」


「鹿さん積極的すぎる!」


 ユウキがせんべいを配ると、鹿たちは満足そうに離れていった。


「助かったぁ。」


「噛まれなかった?」


「大丈夫。」


「でもびっくりした。」


 マミは胸をなで下ろした。


◇◇◇


 東大寺。


 大仏殿の大きさに、一同は圧倒される。


「すごい……。」


 マミが見上げる。


「写真じゃ伝わらないね。」


「本当にな。」


 班のみんなで記念写真を撮る。


 高橋が笑う。


「今度は全員ジャンプ!」


「無理だろ。」


「せーの!」


 シャッターの瞬間だけ、みんなが少しだけ飛び跳ねる。


 あとで写真を見ると、全員の表情が笑顔だった。


◇◇◇


 昼食後。


 自由行動。


 二人は班のみんなとお土産屋を回る。


「見て。」


 マミが手に取ったのは、小さな鹿の根付。


「かわいい。」


「買う?」


「うん。」


「ユウキも。」


「じゃあ色違いで。」


 また一つ、おそろいが増えた。


◇◇◇


 その帰り道。


 小さな坂道を歩いていると、マミが少し足を止めた。


「どうした?」


「下駄、慣れなくて。」


 京都体験で借りた下駄が少し歩きづらそうだった。


「少し休もう。」


 二人は木陰のベンチへ座る。


「ごめんね。」


「気にするな。」


「歩くの遅くなっちゃって。」


「ゆっくりでいい。」


 ユウキの一言に、マミは安心したように微笑んだ。


「ありがとう。」


◇◇◇


 夕方。


 ホテルへ戻るバス。


 疲れが出たのか、マミは座席で静かに眠ってしまう。


 バスが揺れるたび、肩が少し触れる。


 ユウキは窓側へ少し体を寄せ、マミが楽に眠れるように姿勢を整えた。


 しばらくして。


「……ん。」


 マミが目を覚ます。


「寝ちゃってた。」


「疲れたんだろ。」


「ごめん。」


「気にしなくていい。」


 マミは少し照れながら笑った。


「ありがとう。」


◇◇◇


 夜。


 ホテルのロビー。


 班のみんなで今日撮った写真を見返していた。


「この鹿の写真!」


「マミちゃん逃げてる!」


「やめてー!」


 みんな大笑いする。


 ユウキも思わず笑った。


「いい思い出。」


「うん。」


 マミも笑顔でうなずいた。


◇◇◇


 就寝前。


 ホテルの廊下。


 偶然また二人だけになった。


「明日で最後だね。」


 マミが少し寂しそうに言う。


「ああ。」


「もっと続いてほしい。」


「でも。」


「最後まで楽しもう。」


「うん。」


 二人は小さく笑い合う。


「おやすみ。」


「おやすみ。」


 それぞれの部屋へ戻る。


 修学旅行も残り一日。


 京都と奈良で過ごす時間は、終わりへ近づいていた。


 だからこそ、一瞬一瞬が、二人にとってかけがえのない思い出になっていくのだった。


**――第4期 第10話「修学旅行、二日目」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ