第4期 第10話 「修学旅行、二日目」
修学旅行二日目。
京都の朝は、澄んだ空気に包まれていた。
午前六時三十分。
旅館の食堂には、生徒たちが次々と集まってくる。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
マミは眠そうに目をこすりながら席へ座った。
「ちゃんと寝られた?」
「うん。」
「でも。」
少し笑う。
「みんな夜遅くまで話してたから。」
「寝不足。」
「男子も同じだった。」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
朝食を終え、バスで奈良へ向かう。
車窓にはのどかな田園風景が広がる。
「修学旅行って。」
マミが窓の外を見ながら言う。
「あっという間だね。」
「まだ二日目だけど。」
「もう終わってほしくない。」
ユウキは静かにうなずいた。
「俺も。」
◇◇◇
奈良公園。
「鹿だ!」
マミは目を輝かせる。
公園のあちこちで鹿がのんびり草を食べていた。
「かわいい。」
鹿せんべいを買う。
「はい。」
一枚差し出した瞬間。
数頭の鹿が一斉に集まってきた。
「えっ?」
「ちょっと待って!」
「きゃー!」
マミは慌ててユウキの後ろへ隠れる。
周りから笑い声が上がる。
「人気者だな。」
「鹿さん積極的すぎる!」
ユウキがせんべいを配ると、鹿たちは満足そうに離れていった。
「助かったぁ。」
「噛まれなかった?」
「大丈夫。」
「でもびっくりした。」
マミは胸をなで下ろした。
◇◇◇
東大寺。
大仏殿の大きさに、一同は圧倒される。
「すごい……。」
マミが見上げる。
「写真じゃ伝わらないね。」
「本当にな。」
班のみんなで記念写真を撮る。
高橋が笑う。
「今度は全員ジャンプ!」
「無理だろ。」
「せーの!」
シャッターの瞬間だけ、みんなが少しだけ飛び跳ねる。
あとで写真を見ると、全員の表情が笑顔だった。
◇◇◇
昼食後。
自由行動。
二人は班のみんなとお土産屋を回る。
「見て。」
マミが手に取ったのは、小さな鹿の根付。
「かわいい。」
「買う?」
「うん。」
「ユウキも。」
「じゃあ色違いで。」
また一つ、おそろいが増えた。
◇◇◇
その帰り道。
小さな坂道を歩いていると、マミが少し足を止めた。
「どうした?」
「下駄、慣れなくて。」
京都体験で借りた下駄が少し歩きづらそうだった。
「少し休もう。」
二人は木陰のベンチへ座る。
「ごめんね。」
「気にするな。」
「歩くの遅くなっちゃって。」
「ゆっくりでいい。」
ユウキの一言に、マミは安心したように微笑んだ。
「ありがとう。」
◇◇◇
夕方。
ホテルへ戻るバス。
疲れが出たのか、マミは座席で静かに眠ってしまう。
バスが揺れるたび、肩が少し触れる。
ユウキは窓側へ少し体を寄せ、マミが楽に眠れるように姿勢を整えた。
しばらくして。
「……ん。」
マミが目を覚ます。
「寝ちゃってた。」
「疲れたんだろ。」
「ごめん。」
「気にしなくていい。」
マミは少し照れながら笑った。
「ありがとう。」
◇◇◇
夜。
ホテルのロビー。
班のみんなで今日撮った写真を見返していた。
「この鹿の写真!」
「マミちゃん逃げてる!」
「やめてー!」
みんな大笑いする。
ユウキも思わず笑った。
「いい思い出。」
「うん。」
マミも笑顔でうなずいた。
◇◇◇
就寝前。
ホテルの廊下。
偶然また二人だけになった。
「明日で最後だね。」
マミが少し寂しそうに言う。
「ああ。」
「もっと続いてほしい。」
「でも。」
「最後まで楽しもう。」
「うん。」
二人は小さく笑い合う。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
それぞれの部屋へ戻る。
修学旅行も残り一日。
京都と奈良で過ごす時間は、終わりへ近づいていた。
だからこそ、一瞬一瞬が、二人にとってかけがえのない思い出になっていくのだった。
**――第4期 第10話「修学旅行、二日目」 完**




