第4期 第9話 「修学旅行、一日目」
六月。
午前五時四十分。
まだ朝日が昇りきらない駅前には、大きな旅行バッグを持った生徒たちが集まっていた。
「おはよう!」
元気な声と笑い声があちこちから聞こえる。
ユウキも集合場所へ向かうと、すぐに見慣れた笑顔を見つけた。
「おはよう、マミ。」
「おはよう!」
マミは嬉しそうに手を振る。
「ちゃんと起きられた?」
「目覚まし三つ。」
「勝った。」
「私も三つ。」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
貸切バスで新幹線の駅へ向かう。
座席はくじ引きで決まり、ユウキとマミは別々になってしまった。
「残念。」
マミが小さくつぶやく。
「班行動まで我慢。」
「うん。」
離れていても、お互いに手を振り合った。
◇◇◇
新幹線。
「速い!」
初めて新幹線に乗る生徒も多く、車内は大盛り上がりだった。
窓の外の景色が次々と流れていく。
高橋が振り返る。
「ユウキ!」
「京都着いたら勝負だ!」
「何の?」
「お土産!」
「意味が分からない。」
周りは笑い声に包まれた。
◇◇◇
京都駅。
「着いたー!」
ホームへ降りると、独特の空気が二人を迎える。
「本当に京都だ。」
マミが駅舎を見回す。
「思ったより大きい。」
「観光客も多いな。」
班ごとに整列し、最初の目的地へ向かう。
◇◇◇
最初に訪れたのは清水寺。
「すごい……。」
舞台から京都の街並みを見下ろす。
「写真撮ろう!」
佐藤がスマートフォンを構える。
「はい、チーズ!」
班のみんなで記念撮影。
その後、高橋が笑いながら言う。
「今度はカップル。」
「え?」
「ユウキとマミ。」
二人は少し照れながら並ぶ。
カシャッ。
少し恥ずかしそうな、それでも自然な笑顔の一枚が撮れた。
「後で送る!」
「ありがとう。」
◇◇◇
昼食。
京都らしい湯豆腐定食だった。
「おいしい。」
マミが嬉しそうに微笑む。
「優しい味。」
「家ではあまり食べないな。」
「また来たら食べたい。」
二人は京都の味をゆっくり楽しんだ。
◇◇◇
午後は自由散策。
「まずどこ行く?」
マミが地図を広げる。
「抹茶パフェ。」
「最優先?」
「もちろん!」
笑いながら目的のお店へ向かう。
運ばれてきたのは、大きな抹茶パフェ。
「大きい!」
「半分こだな。」
「うん。」
二人は一つのパフェを分け合う。
「おいしい。」
「来てよかった。」
その笑顔を見るだけで、ユウキも嬉しくなった。
◇◇◇
夕方。
旅館へ到着。
畳の香りがする和室だった。
「修学旅行って感じ。」
高橋が荷物を置きながら笑う。
「温泉楽しみ!」
「夜更かしするぞ!」
「先生に怒られる。」
部屋中に笑い声が響いた。
◇◇◇
夕食後。
自由時間。
廊下で偶然マミと会う。
「今日は楽しかったね。」
「ああ。」
「明日は奈良だね。」
「鹿!」
「そこ?」
「絶対せんべいあげる。」
「噛まれるなよ。」
「大丈夫……たぶん。」
二人は笑い合う。
「じゃあ。」
マミは少し照れながら小さく手を振る。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
ほんの数分の会話。
それだけで十分幸せだった。
◇◇◇
部屋へ戻ると、高橋がにやにやしていた。
「廊下で会ってたな。」
「偶然だ。」
「偶然ねぇ。」
周りの男子も笑う。
ユウキは苦笑するしかなかった。
◇◇◇
布団へ入る。
今日一日を思い返す。
京都の景色。
清水寺。
抹茶パフェ。
そして、マミの笑顔。
(明日も楽しみだ。)
窓の外では京都の静かな夜が広がっていた。
修学旅行は、まだ始まったばかり。
忘れられない思い出は、これからもっと増えていく。
**――第4期 第9話「修学旅行、一日目」 完**




