第4期 第7話 「修学旅行へ行こう」
六月。
梅雨入りしたばかりの朝。
ホームの屋根を雨粒が静かに叩いていた。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
マミは折りたたみ傘を閉じながら笑う。
「今日は楽しみだね。」
「ああ。」
今日は二年生最大のイベントの発表がある日だった。
◇◇◇
快速電車へ乗り込む。
雨の日は乗客が多い。
「今日は座れるかな。」
マミが周りを見回す。
「たぶん。」
ユウキは乗客の動きを見て小さくうなずく。
数駅後。
「!」
「!」
今日も二人掛けの席へ並んで座る。
「成功。」
「やっぱり。」
マミは笑う。
「もう職人だね。」
「褒め言葉として受け取る。」
二人は楽しそうに笑い合った。
◇◇◇
ホームルーム。
担任が一枚のプリントを掲げる。
「今日は二年生最大の行事について説明する。」
教室がざわつく。
「修学旅行だ。」
「おおー!」
歓声が上がる。
「行き先は——」
一拍置いて先生が言う。
「京都・奈良。」
教室中が盛り上がった。
「京都!」
「楽しみ!」
「鹿せんべい!」
高橋はもう旅行気分だった。
◇◇◇
昼休み。
屋上。
「京都だって。」
マミが嬉しそうにパンフレットを見る。
「行ったことある?」
「小さい頃に一回だけ。」
「私は初めて。」
ページをめくるたびに、寺院や竹林、町並みの写真が並ぶ。
「全部きれい。」
「楽しみだな。」
「うん!」
マミは目を輝かせた。
◇◇◇
午後。
班決めが始まる。
「自由に決めていいぞ。」
担任が言うと、一斉に教室が動き始めた。
「ユウキ!」
高橋が手を挙げる。
「一緒の班な!」
「もちろん。」
「マミちゃんも!」
「うん。」
さらに佐藤たちも加わり、仲の良い六人グループが完成した。
「これなら楽しそう!」
マミが笑顔になる。
◇◇◇
放課後。
駅へ向かう帰り道。
「修学旅行か。」
ユウキが空を見上げる。
「まだ一か月先だけど。」
「待ちきれない。」
マミはパンフレットを抱きしめる。
「京都のお団子食べたい。」
「そこ?」
「八つ橋も!」
「食べ物ばかり。」
「旅行の楽しみです。」
ユウキは思わず笑った。
◇◇◇
帰りの快速電車。
今日も並んで座る。
「そういえば。」
マミが思い出したように言う。
「ホテルって部屋別々だよね。」
「男子と女子だから。」
「当たり前だけど。」
「少し寂しい。」
その一言に、ユウキは少し笑った。
「昼は一緒に回れる。」
「うん。」
「写真もいっぱい撮ろう。」
「約束。」
マミは嬉しそうにうなずく。
◇◇◇
最寄り駅。
改札を出ると、雨は止み、空には夕焼けが広がっていた。
「ねぇ。」
マミが立ち止まる。
「修学旅行。」
「最高の思い出にしようね。」
「ああ。」
「高校生活で一番って言えるくらい。」
「うん!」
二人は笑顔で手を振り合う。
春に出会い。
夏に恋を知り。
秋に恋人になり。
冬を越え、また春を迎えた。
そして次に待っているのは、高校生活最大のイベント。
京都・奈良への修学旅行。
その旅が、二人の恋をさらに大きく動かすことを、この時の二人はまだ知らなかった。
**――第4期 第7話「修学旅行へ行こう」 完**




