第4期 第6話 「付き合って一年」
五月。
柔らかな日差しが降り注ぐ朝。
今日はユウキとマミにとって、特別な一日だった。
文化祭の日。
あの公園で、お互いの気持ちを伝え合ってから、ちょうど一年。
二人が恋人になって、一年が経った。
◇◇◇
朝のホーム。
「おはよう。」
「おはよう、マミ。」
目が合った瞬間、二人は少し照れたように笑う。
「今日だね。」
マミが小さく言った。
「ああ。」
「一年。」
「早かった。」
「うん。」
それ以上の言葉は必要なかった。
お互いに同じことを考えていると分かっていたから。
◇◇◇
快速電車がホームへ滑り込む。
「一年経っても。」
マミが笑う。
「勝負する?」
「もちろん。」
二人は別々のドアから乗り込む。
人の流れを読み、降りる人を見極める。
そして数駅後。
「!」
「!」
今日も並んで座ることに成功する。
「引き分け。」
「一年間、全部引き分け。」
「すごい記録だ。」
ユウキが笑う。
「でも。」
マミも笑顔で続ける。
「それでよかった。」
「隣に座れるから。」
◇◇◇
昼休み。
屋上。
春風が心地よく吹いている。
「覚えてる?」
マミがお弁当を食べながら尋ねる。
「一年前。」
「ここで。」
「初めて一緒にお昼食べた。」
「ああ。」
「まだ友達だった。」
「その頃から。」
マミは少し照れながら笑う。
「ちょっと気になってた。」
「本当?」
「うん。」
「ユウキは?」
ユウキは少し考えてから答えた。
「俺も。」
「花火大会より前から?」
「ああ。」
「毎日一緒にいるのが楽しかった。」
マミは嬉しそうに微笑んだ。
「同じだったんだ。」
◇◇◇
放課後。
二人は学校帰りに、あの公園へ向かった。
文化祭の日に告白した場所。
春の木々が風に揺れている。
「懐かしい。」
マミがブランコへ座る。
「ここで。」
「『好きです』って言った。」
「緊張した。」
「私も。」
二人は思わず笑った。
◇◇◇
夕焼けが公園を優しく染める。
「はい。」
ユウキが小さな箱を差し出した。
「え?」
「一年記念。」
「プレゼント。」
マミは驚きながら受け取る。
箱の中には、小さな銀色のブレスレットが入っていた。
飾りは控えめで、中央には小さな星のチャーム。
「きれい……。」
マミは目を輝かせる。
「ありがとう。」
「すごく嬉しい。」
「派手なのは苦手だと思って。」
「うん。」
「私にぴったり。」
マミは大切そうに胸へ抱いた。
◇◇◇
「私も。」
今度はマミがバッグから細長い箱を取り出す。
「一年記念。」
ユウキが開けると、中にはシンプルな腕時計が入っていた。
文字盤の裏側には、小さく刻印がある。
『Always beside you』
「"いつもあなたの隣に"。」
マミが少し照れながら説明する。
「英語だけど。」
「意味は分かるよね。」
ユウキは時計を見つめ、静かに笑った。
「ありがとう。」
「毎日着ける。」
「本当に?」
「ああ。」
「学校も。」
「休日も。」
マミは嬉しそうにうなずいた。
◇◇◇
帰りの快速電車。
今日も窓際に並んで座る。
夕日が二人を優しく照らしていた。
「一年前。」
マミが窓の外を見ながらつぶやく。
「告白するの、すごく怖かった。」
「俺も。」
「もし断られたらって。」
「考えた。」
「でも。」
二人は同時に笑う。
「言ってよかった。」
声が重なった。
「ふふっ。」
「一緒。」
「だな。」
◇◇◇
最寄り駅。
改札を出る。
夕焼け空の下で立ち止まる。
「ユウキ。」
「ん?」
マミは少しだけ近づく。
「一年間。」
「ありがとう。」
「こちらこそ。」
「これからも。」
「ずっとよろしく。」
ユウキは優しく微笑む。
「ああ。」
「これからも。」
「毎朝ホームで会って。」
「電車に乗って。」
「隣に座って。」
「一緒に帰ろう。」
マミは笑顔でうなずいた。
「約束。」
二人は自然に手をつなぐ。
春風が優しく吹き抜けた。
偶然隣に座った日から始まった恋。
友達になり、恋人になり、一年という時間を一緒に歩いてきた。
そしてその歩みは、まだ終わらない。
これからも。
来年も。
その先も。
二人だけの「特等席」は、きっと変わらず隣にあり続ける。
**――第4期 第6話「付き合って一年」 完**




