第4期 第4話 「未来の約束」
四月下旬。
桜の季節が過ぎ、新緑が街を鮮やかな緑色へと染め始めていた。
朝のホーム。
「おはよう。」
「おはよう、マミ。」
今日も二人は自然と隣へ並ぶ。
恋人になって半年以上。
もう、この距離が当たり前になっていた。
「今日は暖かいね。」
「ああ。」
「もうコートはいらないかな。」
「昼は暑いくらいかも。」
そんな何気ない会話をしながら、快速電車を待つ。
◇◇◇
電車へ乗り込む。
数駅後。
「!」
「!」
今日も息ぴったりで二人掛けの席を確保する。
「勝負。」
マミが笑う。
「引き分け。」
「今年も全然勝てない。」
「俺も。」
二人は笑いながら窓の外を眺めた。
去年はこの"勝負"が二人をつないだ。
今では、それは恋人同士の小さな習慣になっている。
◇◇◇
学校。
二年生になって最初の進路ガイダンスが行われた。
「まだ二年生だけど。」
進路指導の先生が話し始める。
「一年後には進路を決める時期になる。」
「今から少しずつ考えておこう。」
教室は静まり返る。
授業が終わると、高橋が伸びをした。
「もう進路かぁ。」
「早いな。」
「ユウキは大学?」
「たぶん。」
「マミは?」
「私も。」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
◇◇◇
昼休み。
屋上。
春風が心地よく吹いている。
「進路。」
マミが空を見上げる。
「急に現実って感じだったね。」
「ああ。」
「まだ先だけど。」
「考えないとな。」
少しだけ沈黙が流れる。
マミはお弁当箱を閉じると、静かに言った。
「ねぇ。」
「うん?」
「もし。」
「大学が違っても。」
「友達じゃなくなることはないよね。」
ユウキは少し笑った。
「友達?」
「……。」
マミは首をかしげる。
「違う。」
ユウキは優しく答えた。
「恋人だろ。」
一瞬、マミは目を丸くした。
そして頬を赤く染める。
「そうだった。」
「もう。」
「忘れてたわけじゃないよ?」
「分かってる。」
二人は笑い合った。
◇◇◇
放課後。
駅へ向かう途中、公園へ寄り道する。
ベンチへ座ると、小さな子どもたちが元気に遊んでいた。
「平和だね。」
「うん。」
マミはその光景を眺めながら微笑む。
「私ね。」
「?」
「今日、進路の話を聞いて。」
「少し不安になった。」
「離れちゃうかもしれないって。」
ユウキは少し考え、静かに答えた。
「離れても。」
「毎日会えなくなっても。」
「終わりじゃない。」
マミはユウキを見つめる。
「会いに行けばいい。」
「電話もできる。」
「今はいくらでもつながれる。」
「だから。」
一度だけ言葉を区切る。
「距離なんかに負けない。」
マミの瞳が少し潤んだ。
「……うん。」
「ありがとう。」
◇◇◇
帰りの電車。
夕日が窓から差し込む。
今日も隣同士。
「ねぇ。」
マミが静かに言う。
「私。」
「うん。」
「将来のこと考えた時。」
「最初に浮かぶ人。」
「ユウキだった。」
その言葉に、ユウキは照れながら笑う。
「俺も。」
「本当?」
「ああ。」
「未来を考えたら。」
「隣にマミがいた。」
マミはゆっくりとうなずく。
「えへへ。」
「嬉しい。」
◇◇◇
改札前。
夕焼けが街を優しく染めていた。
「今日は少し真面目な話だったね。」
「たまには。」
「うん。」
マミは小指を差し出す。
「約束。」
「?」
「どんな未来でも。」
「隣にいよう。」
ユウキは小さく笑い、小指を重ねる。
「約束。」
二人は指切りを交わした。
その約束は、子どもの頃のような無邪気なものではない。
お互いを信じる気持ちから生まれた、大切な約束だった。
春風が優しく吹き抜ける。
高校二年生の春。
恋人になった二人は、少しずつ「今」だけではなく、「未来」も一緒に歩いていこうとしていた。
**――第4期 第4話「未来の約束」 完**




