第4期 第1話 「二年生、もう一度始まる春」
四月。
満開の桜が街を淡いピンク色に染めていた。
高校二年生、最初の朝。
ユウキは少し早めに駅のホームへ着いていた。
今日は始業式。
そして——クラス替えの日。
「おはよう。」
聞き慣れた優しい声がした。
「おはよう、マミ。」
振り向くと、マミが桜色の髪留めをつけて立っていた。
「緊張する?」
「少し。」
「クラス替え。」
「俺も。」
二人は顔を見合わせて笑う。
「でも。」
マミが優しく言う。
「朝はこうして会えた。」
「うん。」
「それだけで安心。」
ユウキも静かにうなずいた。
◇◇◇
快速電車がホームへ滑り込む。
「今日は久しぶりに本気で勝負。」
マミが楽しそうに言う。
「始業式だから人が多い。」
「負けない。」
「俺も。」
二人は別々のドアから乗車する。
人の流れ。
降車位置。
空席になりそうな場所。
一年かけて磨いた"座席争奪術"は健在だった。
数駅後。
「!」
「!」
二人は同じタイミングで席へたどり着く。
「引き分け。」
「今年も。」
マミが笑う。
「特等席、確保。」
「だな。」
◇◇◇
学校へ着く。
昇降口には新しいクラス表が貼り出され、多くの生徒が集まっていた。
「二年一組……。」
ユウキが自分の名前を探す。
「あった。」
二年一組。
そのすぐ近く。
「……!」
マミも自分の名前を見つけた。
「ユウキ!」
「一緒?」
「うん!」
二人は同時に笑顔になる。
「また同じクラス!」
「よかった。」
胸をなで下ろすマミ。
「安心した。」
◇◇◇
二年一組。
教室へ入ると、高橋が大きく手を振っていた。
「また同じクラスか!」
「おはよう。」
「お前ら、運命だな。」
「大げさ。」
ユウキが苦笑する。
「いや。」
高橋は笑う。
「一年間同じクラスで、二年も同じ。」
「しかも毎日一緒に登校。」
「すごい確率だぞ。」
マミは少し照れながら笑った。
「嬉しいけど。」
「運がよかっただけ。」
◇◇◇
ホームルーム。
担任の先生が教壇へ立つ。
「一年間よろしく。」
「まずは席を決める。」
くじ引きで席が決まっていく。
ユウキは窓側の後ろから二番目。
マミは——。
「……。」
二人とも思わず席表を見る。
「斜め前。」
「近いね。」
去年ほどではない。
でも、振り返ればすぐ話せる距離だった。
マミは嬉しそうに微笑む。
「十分。」
「うん。」
◇◇◇
昼休み。
もちろん向かう先は屋上だった。
「結局ここ。」
マミが笑う。
「変わらないな。」
「変わらない方がいい。」
二人はベンチへ座る。
春風が桜の花びらを運んでくる。
「ねぇ。」
マミが空を見上げる。
「去年の今頃。」
「初めて一緒にお弁当食べた。」
「そうだった。」
「一年でこんなに変わるなんて。」
恋人になり、思い出が増え、それでもこうして同じ場所にいる。
そのことが、何より幸せだった。
◇◇◇
放課後。
駅へ向かう道。
「二年生最初の日。」
「どうだった?」
ユウキが聞く。
「百点。」
「高いな。」
「だって。」
マミは照れながら笑う。
「同じクラスだったし。」
「屋上にも行けたし。」
「帰りも一緒。」
「全部そろったから。」
「俺も百点。」
その答えに、マミは嬉しそうに笑った。
◇◇◇
快速電車へ乗る。
今日も並んで座る。
「結局。」
マミが小さくつぶやく。
「クラスが変わっても。」
「変わらなかったね。」
「ああ。」
「朝のホームも。」
「電車も。」
「帰り道も。」
「全部。」
二人は窓の外に流れる桜並木を眺める。
新しい学年。
新しい教室。
少しだけ変わる毎日。
でも、一番大切なものは何も変わらない。
毎朝、同じホームで会うこと。
通学電車で隣に座ること。
そして、お互いの笑顔を見ながら一日を始められること。
高校二年生の春。
二人の恋は、新しい季節とともに、また一歩前へ進み始めた。
**――第4期 第1話「二年生、もう一度始まる春」 完**




