表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/64

第3期 第13話 「春は、また君の隣で」

挿絵(By みてみん)


 二月も終わりに近づき、朝の空気は少しだけ柔らかくなっていた。


 駅へ向かう道端には、小さな花が咲き始めている。


「おはよう。」


「おはよう、ユウキ。」


 マミはいつものように笑顔で駆け寄ってきた。


「もうすぐ春だね。」


「ああ。」


「去年の今頃は。」


「まだ出会ってなかった。」


 二人は自然と笑った。


◇◇◇


 快速電車へ乗り込む。


 今日も二人は、息を合わせるように車内を見回す。


「!」


「!」


 数駅後。


 並んだ二つの席へ同時に腰を下ろす。


「一年経っても。」


 マミが笑う。


「この勝負だけは負けない。」


「もう勝負じゃないだろ。」


「そうだった。」


 少し照れながらユウキを見る。


「ユウキの隣を取るゲーム。」


「名前変わってる。」


「こっちの方が好き。」


 二人は笑い合った。


◇◇◇


 昼休み。


 屋上。


 今日は春らしい暖かな日差しが降り注いでいた。


「久しぶり。」


 マミがベンチへ座る。


「屋上。」


「冬は寒かったからな。」


「やっぱりここ好き。」


 風が優しく吹く。


 初めて二人でお弁当を食べた日のことを思い出す。


「懐かしい。」


「うん。」


「ここで。」


「いっぱい話した。」


「いっぱい笑った。」


「いっぱい約束した。」


 マミはフェンス越しに空を見上げる。


「全部、大切な思い出。」


◇◇◇


 放課後。


 帰り道。


 川沿いの桜並木を歩く。


 まだつぼみは固い。


「あと一か月くらいかな。」


「咲くの。」


「去年は一人で見た。」


 マミが小さくつぶやく。


「今年は。」


「?」


「ユウキと見られる。」


 ユウキは静かに笑う。


「来年も。」


「その次も。」


「毎年見よう。」


 マミは少し照れながらうなずいた。


「約束。」


◇◇◇


 駅へ着く。


 ホームで電車を待ちながら、マミがバッグをごそごそ探し始めた。


「はい。」


「?」


 一枚の写真だった。


「これ。」


 遊園地で撮った写真。


 イルミネーションを背景に、笑顔の二人が写っている。


「現像したの。」


「一枚はユウキ。」


「もう一枚は私。」


 ユウキは写真を大切そうに受け取る。


「ありがとう。」


「部屋に飾る。」


「私も。」


 二人は照れながら笑った。


◇◇◇


 帰りの電車。


 今日も並んで座る。


 夕日が車内を優しく照らしていた。


「ねぇ。」


 マミが静かに言う。


「一年って早いね。」


「本当に。」


「春に出会って。」


「夏に恋して。」


「秋に恋人になって。」


「冬を一緒に越えた。」


「全部。」


 少し照れながら微笑む。


「幸せだった。」


 ユウキもゆっくりとうなずく。


「俺も。」


「マミがいたから。」


「毎日が楽しかった。」


◇◇◇


 最寄り駅。


 改札を出ると、夕焼け空が広がっていた。


「ユウキ。」


「ん?」


「来月で。」


「私たち。」


「二年生だね。」


「ああ。」


「クラス替え。」


 少しだけ不安そうな表情になる。


「離れちゃうかな。」


 ユウキは少し考えてから笑った。


「たとえクラスが別でも。」


「同じ学校。」


「同じ電車。」


「毎朝ホームで会える。」


「放課後も一緒に帰れる。」


 マミの表情が少しずつ明るくなる。


「……そうだね。」


「私たち。」


「最初から電車でつながってたもんね。」


「ああ。」


 ユウキは優しくうなずく。


「クラスが変わっても。」


「隣の席だけは変わらない。」


「?」


「電車の。」


 マミは吹き出した。


「それ、本当にユウキらしい。」


「事実だから。」


 二人は笑い合う。


◇◇◇


 別れ際。


 マミはそっとユウキの手を握る。


「ありがとう。」


「一年間。」


「こちらこそ。」


「来年も。」


「よろしく。」


 ユウキは優しく握り返した。


「ああ。」


「ずっと。」


 二人は手を離し、それぞれの帰り道へ歩き出す。


 春、偶然隣に座った二人。


 夏、恋を知った。


 秋、恋人になった。


 冬、たくさんの思い出を重ねた。


 そして、また春がやってくる。


 新しい学年。


 新しい景色。


 でも変わらないものがある。


 毎朝のホーム。


 通学電車。


 そして、お互いの隣という特等席。


 その席は、これからもずっと。


 二人だけの場所だった。


**――第3期 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ