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第3期 第11話 「初めて迎える新年」

挿絵(By みてみん)


 十二月三十一日。


 今年最後の日。


 朝から街には、お正月の準備をする人たちの姿があった。


 スーパーには鏡餅やおせち料理。


 商店街には門松が飾られ、年末らしい空気が流れている。


 ユウキは部屋の掃除を終え、一息ついていた。


 すると、スマートフォンが震える。


『ユウキ、今ひま?』


 送り主はマミだった。


『大丈夫。』


『じゃあ初詣、一緒に行かない?』


『夜に?』


『うん!』


『年越しの瞬間、一緒に迎えたいな。』


 その一文を読んだユウキは、自然と笑みを浮かべた。


『行こう。』


 すぐに返信すると、


『やった!』


 というスタンプが返ってきた。


◇◇◇


 午後十一時。


 駅前の時計台。


「こんばんは。」


「こんばんは。」


 マミは白いコートに、クリスマスでも巻いていた赤いマフラーを合わせていた。


「寒いね。」


「かなり。」


 白い息を吐きながら笑い合う。


「神社まで歩こう。」


「ああ。」


 二人は並んで夜道を歩き始めた。


◇◇◇


 神社へ近づくにつれ、人も増えてきた。


 屋台から漂う甘酒や焼き鳥の香り。


 境内には長い参拝の列ができている。


「すごい人。」


「みんな初詣だな。」


 マミは少しだけユウキの袖をつまんだ。


「はぐれそう。」


「大丈夫。」


 ユウキは歩幅を少しだけゆっくりにする。


「これなら。」


「うん。」


 マミは安心したように微笑んだ。


◇◇◇


 やがて境内の鐘が鳴り始める。


 ゴーン……。


 静かな音が夜空へ響いた。


「あと少し。」


 マミが時計を見る。


「十秒前。」


「九。」


「八。」


 二人で小さく数え始める。


「三。」


「二。」


「一。」


 その瞬間。


 周囲から歓声が上がる。


「あけましておめでとう!」


 新しい一年が始まった。


「おめでとう。」


「今年もよろしく。」


 二人は笑顔で頭を下げ合う。


◇◇◇


 参拝を終え、おみくじを引く。


「せーの。」


 二人同時に開く。


「中吉。」


 ユウキが言う。


「私は大吉!」


 マミは嬉しそうに笑った。


「やった!」


「いい一年になりそう。」


「ユウキは?」


「中吉でも十分。」


「一緒なら大吉だよ。」


 さらりと言われ、ユウキは照れ笑いを浮かべた。


◇◇◇


 境内のベンチで甘酒を飲みながら休憩する。


「温まる。」


 マミは両手で紙コップを包み込む。


「今年のお願い。」


「もう決めた?」


「うん。」


「秘密。」


「教えてくれないの?」


「叶ったら教える。」


 いたずらっぽく笑う。


「ユウキは?」


「俺も秘密。」


「ずるい。」


 二人は笑い合った。


◇◇◇


 帰り道。


 夜空には冬の星座が広がっていた。


「今年も。」


 マミが空を見上げる。


「いっぱい思い出作ろうね。」


「ああ。」


「春はお花見。」


「夏は海。」


「秋は文化祭。」


「冬はクリスマス。」


「全部。」


 少し照れながら続ける。


「恋人として。」


 ユウキは優しくうなずいた。


「もちろん。」


◇◇◇


 帰りの電車。


 元日の深夜ということもあり、車内はとても静かだった。


 二人は窓際へ並んで座る。


「ねぇ。」


 マミが小さく笑う。


「去年の今頃。」


「まだ出会ってなかったね。」


「そうだな。」


「一年でこんなに変わるなんて。」


「思わなかった。」


 ユウキは窓の外を眺める。


「今年は。」


「もっと変わるかも。」


「どういう意味?」


「もっと思い出が増える。」


 マミは嬉しそうに微笑んだ。


「うん。」


◇◇◇


 改札前。


「今日はありがとう。」


「こちらこそ。」


「今年も。」


 マミは少し照れながら手を差し出した。


「よろしくね。」


 ユウキはその手を優しく握る。


「ああ。」


「よろしく。」


 そのまま少しだけ見つめ合い、二人は笑った。


 春に偶然出会い。


 夏に恋を知り。


 秋に恋人になり。


 冬を一緒に越えた。


 そして、新しい一年。


 二人の物語は、まだ始まったばかりだった。


**――第3期 第11話「初めて迎える新年」 完**


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