第3期 第7話 「恋人たちの遊園地」
十一月最後の日曜日。
今日は、前から約束していた遊園地へ行く日だった。
朝九時。
駅前の時計台で待っていると、小走りでマミがやって来る。
「お待たせ!」
「おはよう。」
「おはよう!」
マミはベージュのコートに、白いニットとロングスカートという冬らしい装いだった。
首元には淡いピンク色のマフラー。
「寒くない?」
ユウキが尋ねる。
「大丈夫。」
そう言った直後、小さくくしゃみをする。
「……。」
「……。」
二人は顔を見合わせて笑った。
「全然大丈夫じゃない。」
「ばれちゃった。」
ユウキは自分のバッグから使い捨てカイロを取り出した。
「はい。」
「え?」
「予備。」
マミは受け取ると、両手で大事そうに包み込んだ。
「ありがとう。」
「今日は一日寒いらしいから。」
「準備いいね。」
「この前風邪ひいたから。」
その言葉に、マミは優しく微笑んだ。
◇◇◇
遊園地へ到着すると、園内は家族連れやカップルで賑わっていた。
「まず何乗る?」
マミが園内マップを広げる。
「あれ!」
指差した先には、大きな観覧車。
「最後じゃない?」
「え?」
「締めに乗りたい。」
「なるほど。」
「じゃあジェットコースター!」
マミが元気よく言う。
「本当に平気?」
「もちろん!」
◇◇◇
十分後。
「きゃあああーーー!」
絶叫が園内に響く。
ジェットコースターを降りたマミは、ふらふらと歩いていた。
「む、無理……。」
「平気じゃなかったな。」
「高いところ苦手なの忘れてた……。」
ユウキは思わず笑ってしまう。
「笑わないでぇ……。」
マミは少し頬を膨らませた。
◇◇◇
その後はメリーゴーランドやコーヒーカップなど、穏やかなアトラクションを楽しむ。
「こっちの方が安心。」
「さっきと全然違うな。」
「もう絶叫系は卒業します。」
「一時間で?」
「今日で。」
二人は笑い合った。
◇◇◇
昼食を食べ終えたあと、お土産ショップへ立ち寄る。
「見て!」
マミが指差した先には、小さなペアキーホルダーが並んでいた。
一つは星。
もう一つは月。
「きれい。」
「おそろいにする?」
「また増えるね。」
二人は相談して、それぞれ一つずつ購入した。
「スマホにつけよう。」
「うん。」
白いうさぎと茶色いくまのストラップの隣に、小さな星と月が揺れる。
◇◇◇
夕方。
園内のイルミネーションが点灯し始めた。
「すごい……。」
マミは思わず足を止める。
木々には無数の光が灯り、まるで別世界のようだった。
「クリスマスみたい。」
「来月が楽しみ。」
「うん。」
二人はゆっくり歩く。
自然と手をつなぐ。
もう、照れて離すことはなかった。
◇◇◇
最後に観覧車へ乗る。
ゴンドラがゆっくりと空へ昇っていく。
街並みが小さくなり、夕焼けとイルミネーションが一望できた。
「きれい。」
マミは窓の外を見つめる。
「こんな景色、初めて。」
「俺も。」
静かな時間が流れる。
観覧車だけがゆっくり回っていた。
「ねぇ。」
マミが小さな声で言う。
「恋人になってよかった。」
「……。」
「ユウキといるとね。」
「毎日が特別になる。」
ユウキは優しく笑った。
「俺も。」
「本当に?」
「ああ。」
「普通の日も。」
「電車も。」
「学校も。」
「全部楽しい。」
マミは嬉しそうに微笑んだ。
◇◇◇
観覧車が頂上へ差しかかる。
マミはそっとユウキの肩へ頭を預けた。
「少しだけ。」
「こうしててもいい?」
ユウキは照れながらもうなずく。
「ああ。」
静かな空間。
聞こえるのは観覧車の小さな駆動音だけ。
夕日が沈み始め、街にはイルミネーションの光が広がっていく。
恋人になってから初めて過ごす、少し特別な時間だった。
◇◇◇
帰りの電車。
今日も二人は並んで座る。
遊び疲れたマミは、ふっと笑う。
「今日も楽しかった。」
「うん。」
「でもね。」
「?」
「結局、一番好きなのは。」
マミはユウキの肩に軽く寄りかかりながら微笑む。
「遊園地でも観覧車でもなくて。」
「ユウキの隣。」
ユウキは少し照れながら笑った。
「俺も。」
電車は静かに夜の街を走る。
どんな場所へ行っても。
どんな景色を見ても。
二人にとって一番大切なのは、お互いの隣にいられること。
その幸せは、今日も変わらず続いていた。
**――第3期 第7話「恋人たちの遊園地」 完**




