第3期 第5話 「初めてのクリスマスの約束」
十月も終わりに近づき、朝の空気はずいぶん冷たくなっていた。
駅のホームには温かい飲み物を片手に電車を待つ人が増えている。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
マミは両手で缶ココアを包み込むように持っていた。
「寒いね。」
「もう秋というより冬が近い。」
「手が冷たい。」
そう言いながら、息をふっと白く吐く。
ユウキは少し考えてから、自分が持っていた缶コーヒーを差し出した。
「温かいぞ。」
「え?」
「まだ開けてない。」
「でもユウキが飲むんじゃ……。」
「自販機でもう一本買う。」
マミは少し迷ってから受け取った。
「ありがとう。」
缶を両手で包むと、ほっとしたように微笑む。
「温かい。」
その笑顔を見て、ユウキも自然と笑った。
◇◇◇
快速電車へ乗り込む。
今日も人の流れを読んで、並んで席へ座る。
「最近。」
マミが窓の外を見ながら話す。
「寒くなったからかな。」
「?」
「電車の中が前より暖かく感じる。」
「暖房が入ったから。」
「それもあるけど。」
少し照れながら続ける。
「ユウキの隣だから。」
「……。」
ユウキは照れ笑いを浮かべた。
「そういうこと言うな。」
「本当だもん。」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
昼休み。
屋上は風が冷たく、今日は教室で昼食を取ることにした。
「もう屋上は寒いね。」
マミが窓際の席でお弁当を広げる。
「春は毎日行ってたのに。」
「季節が変わったな。」
教室では、クリスマスの話題で盛り上がっていた。
「駅前、大きなイルミネーションやるらしい!」
「去年見に行った!」
「きれいだったよ!」
マミはその話に耳を傾けていた。
◇◇◇
放課後。
いつもの帰り道。
「ねぇ、ユウキ。」
「ん?」
「クリスマスって予定ある?」
「まだ。」
「本当?」
マミは少し安心したように笑う。
「じゃあ。」
少し勇気を出すように続ける。
「今年、一緒に過ごさない?」
「クリスマス?」
「うん。」
「イルミネーション見たり。」
「ケーキ食べたり。」
「……その。」
照れながら笑う。
「恋人らしいこと、してみたいなって。」
ユウキは迷わずうなずいた。
「行こう。」
「本当に?」
「ああ。」
「約束。」
マミの笑顔がぱっと明るくなる。
「やった!」
◇◇◇
駅へ着く前。
小さな雑貨屋の前で、マミが立ち止まった。
「見て。」
ショーウィンドウには、クリスマス仕様のオルゴールや雪だるまの置物が並んでいる。
「もう飾ってる。」
「早いな。」
「でも、かわいい。」
マミはガラス越しに眺めながら微笑む。
「今年は楽しみがいっぱい。」
「文化祭も終わって。」
「次はクリスマス。」
「その次はお正月。」
「全部ユウキと一緒がいい。」
その言葉は、あまりにも自然だった。
ユウキも笑って答える。
「俺も。」
◇◇◇
帰りの快速電車。
窓の外は少しずつ暗くなり始めていた。
車内には暖房が入り、ほんのり暖かい。
「そうだ。」
マミがバッグから小さな袋を取り出した。
「はい。」
「?」
「この前のお礼。」
中には、小さな手作りのクッキーが入っていた。
「昨日焼いたの。」
「ありがとう。」
一枚食べる。
「おいしい。」
「本当?」
「本当。」
マミは嬉しそうに笑った。
「よかった。」
◇◇◇
改札前。
「今日は約束が増えたね。」
マミが指を折りながら数える。
「花火大会。」
「海。」
「文化祭。」
「そしてクリスマス。」
「全部大事な思い出。」
「これからも増える。」
ユウキがそう言うと、マミは優しくうなずいた。
「うん。」
「いっぱい増やそう。」
二人は笑顔で手を振る。
春、電車の席から始まった二人の物語。
夏、恋を知った。
秋、恋人になった。
そして冬。
初めて恋人として迎える季節が、静かに近づいていた。
**――第3期 第5話「初めてのクリスマスの約束」 完**




