表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/64

第3期 第4話 「秋の遠足と恋人の距離」

挿絵(By みてみん)


 十月。


 朝の空気はすっかり涼しくなり、制服の上にカーディガンを羽織る生徒も増えてきた。


 いつもの駅のホーム。


「おはよう、ユウキ。」


「おはよう、マミ。」


 マミは胸元で揺れる白いうさぎのストラップを見せるようにスマートフォンを取り出した。


「今日も一緒。」


「俺も。」


 ユウキも茶色いくまのストラップを軽く持ち上げる。


 二人は自然と笑顔になった。


◇◇◇


 快速電車へ乗り込む。


「今日は勝負?」


 マミが首をかしげる。


「久しぶりに。」


「負けないよ。」


 数駅後。


「!」


「!」


 やはり今日も並んで座ることになった。


「引き分け。」


「もう勝敗つかないね。」


「最初から隣を狙ってるから。」


 ユウキが言うと、マミは照れながら笑った。


「私も。」


◇◇◇


 学校へ着くと、担任が教室でプリントを配り始めた。


「来週の金曜日、校外学習を行う。」


 教室がざわめく。


「行き先は市内の自然公園。」


「班ごとにウォークラリーをする。」


「お弁当持参。」


「やったー!」


 教室は一気に盛り上がった。


 マミは後ろを振り返る。


「ユウキ。」


「ん?」


「同じ班だよね?」


「もちろん。」


「よかった。」


 その笑顔だけで、遠足が楽しみになった。


◇◇◇


 そして迎えた校外学習当日。


 青空が広がる絶好の遠足日和だった。


 自然公園には色づき始めた木々が並び、秋風が心地よく吹いている。


「きれい。」


 マミが紅葉を見上げる。


「もう秋だね。」


「夏が終わるの早かった。」


「でも。」


 マミは笑う。


「秋も好き。」


「どうして?」


「ユウキと見る景色が増えるから。」


 その一言に、ユウキは少し照れながら笑った。


◇◇◇


 ウォークラリーが始まる。


「最初はこっち!」


 高橋が地図を広げる。


「チェックポイントまで五百メートル!」


 一行は山道を歩き始めた。


 途中、小さな丸太橋が現れる。


「気をつけて。」


 先生が声をかける。


 マミが慎重に渡ろうとした、その時。


「わっ。」


 足元が少し滑った。


 ユウキはすぐに手を差し出す。


「大丈夫?」


「ありがとう。」


 マミはその手を握り、ゆっくり橋を渡る。


 向こう岸へ着いても、少しだけ手をつないだままだった。


「……。」


「……。」


 高橋が後ろから笑う。


「もう隠す気ないな。」


「違っ!」


 マミは慌てて手を離す。


 班のみんなが笑い出した。


「仲良しだな。」


 その言葉に、二人とも照れ笑いするしかなかった。


◇◇◇


 昼休み。


 芝生の広場。


 班のみんなで輪になってお弁当を食べる。


「マミのお弁当、おいしそう。」


 女子が言う。


「ありがとう。」


「ユウキは?」


「いつも通り。」


「交換しよう!」


 気づけば、みんなでおかず交換大会になっていた。


「ユウキ。」


 マミが小さな卵焼きを差し出す。


「これ。」


「ありがとう。」


「その唐揚げ、一個ください。」


「どうぞ。」


 二人のやり取りを見ていた高橋が笑う。


「もう夫婦みたい。」


「ぶっ!」


 ユウキはお茶を吹きそうになった。


「高橋!」


「冗談冗談!」


 周りも笑い声に包まれる。


 マミは顔を真っ赤にしながらも、小さく笑っていた。


◇◇◇


 帰り道。


 学校へ戻るバス。


 二人は隣同士の席になった。


 歩き疲れたのか、マミは窓にもたれながら小さくあくびをする。


「眠い?」


「少し。」


「寝てもいいよ。」


「でも。」


「起こして。」


「分かった。」


 数分後。


 マミは静かに眠ってしまった。


 バスが揺れるたびに肩が触れる。


 ユウキはそっと姿勢を変え、マミが揺れないように支えた。


「……。」


 窓から差し込む秋の日差し。


 穏やかな寝息。


 その時間が、とても愛おしかった。


◇◇◇


 学校へ戻り、解散。


 駅へ向かう道。


「ごめんね。」


 マミが照れながら笑う。


「寝ちゃった。」


「疲れてたんだろ。」


「肩、大丈夫だった?」


「問題ない。」


「ありがとう。」


 マミは少しだけ立ち止まる。


「ねぇ。」


「?」


「恋人になってから。」


「うん。」


「毎日もっと好きになってる。」


 ユウキは驚きながらも微笑んだ。


「俺も。」


 短い言葉。


 でも、その一言だけでマミは嬉しそうに笑った。


 夕暮れのホームに電車が滑り込む。


 二人は今日も並んで席へ座る。


 最初は偶然だった隣の席。


 今は、自分たちで選ぶ「特等席」。


 秋風とともに、二人の恋も少しずつ深まっていくのだった。


**――第3期 第4話「秋の遠足と恋人の距離」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ