第3期 第3話 「初めてのおそろい」
恋人になってから二週間。
ユウキとマミは、少しずつ恋人としての距離に慣れ始めていた。
朝のホーム。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
以前のようなぎこちなさはなくなり、自然に隣へ並ぶ。
「今日も早いね。」
「マミも。」
「早く会いたかったから。」
さらりと言うマミに、ユウキは苦笑する。
「もう慣れた?」
「……少しだけ。」
「えへへ。」
マミは満足そうに笑った。
◇◇◇
快速電車へ乗り込む。
「今日は勝負。」
「まだ続けるの?」
「もちろん!」
二人は別々のドアから車内へ。
人の流れを読む。
降りる人を見極める。
数駅後。
「!」
「!」
今日も隣同士。
「引き分け。」
「もう運命だね。」
「その台詞、何回目?」
「数えてません。」
二人は笑い合う。
◇◇◇
昼休み。
屋上でお弁当を食べ終えた頃だった。
「ユウキ。」
「ん?」
「今度の日曜日って空いてる?」
「たぶん。」
「じゃあ、お買い物付き合ってほしいな。」
「いいよ。」
「本当?」
「何買うの?」
マミは少しだけいたずらっぽく笑った。
「秘密。」
◇◇◇
日曜日。
駅前のショッピングモール。
「お待たせ。」
マミは淡いピンク色のワンピース姿だった。
「待った?」
「今来た。」
「その返事好きだね。」
「もう定番。」
二人は笑いながら館内へ入る。
「で、何買うんだ?」
「実はね。」
マミはアクセサリーショップを指差した。
「ストラップ。」
「スマホ?」
「うん。」
店内には色とりどりのストラップやキーホルダーが並んでいた。
◇◇◇
「かわいい……。」
マミは一つひとつ手に取って眺める。
「迷う。」
「いっぱいあるな。」
「ユウキも選んで。」
「俺?」
「うん。」
二人で棚を見ていると、小さな動物のストラップが目に入った。
一つは白いうさぎ。
もう一つは茶色いくま。
「あっ。」
二人同時に声を上げる。
「花火大会。」
「ゲームセンター。」
あの日のぬいぐるみと同じ組み合わせだった。
マミは嬉しそうに微笑む。
「覚えてた?」
「もちろん。」
「これにしようかな。」
ユウキも手に取る。
「じゃあ俺も。」
二人は顔を見合わせた。
「おそろい?」
「いいんじゃない。」
「うん!」
マミは心から嬉しそうに笑った。
◇◇◇
買い物を終えたあと。
二人はフードコートでジュースを飲んでいた。
「見て。」
マミがスマホを取り出す。
白いうさぎのストラップが揺れている。
「かわいい。」
「ユウキも。」
ユウキのスマホには茶色いくま。
「並べると。」
マミが二つを近づける。
「友達みたい。」
「いや。」
ユウキは少し笑った。
「恋人だろ。」
「……!」
マミは一瞬固まり、それから耳まで真っ赤になった。
「そういうこと急に言う!」
「思っただけ。」
「もう……。」
恥ずかしそうに笑いながらも、どこか嬉しそうだった。
◇◇◇
夕方。
帰りの快速電車。
今日も窓際の席へ並んで座る。
「ねぇ。」
マミがストラップを見つめながら言う。
「これね。」
「うん。」
「毎日持ち歩く。」
「俺も。」
「学校も。」
「休日も。」
「ずっと一緒。」
マミは微笑んだ。
「離れてても、おそろいって思うだけで嬉しい。」
ユウキは静かにうなずく。
「そうだな。」
電車が夕焼けの中を走る。
最初は、電車で偶然隣に座った二人。
次は、同じクラスになった。
恋人になった今は、おそろいの小さなストラップが二人をつないでいる。
決して高価なものではない。
それでも二人にとっては、世界で一番大切な宝物だった。
◇◇◇
改札前。
「今日はありがとう。」
「こちらこそ。」
マミはスマホを胸に抱きながら笑う。
「明日も。」
「うん。」
「おそろい持って、電車乗ろうね。」
「もちろん。」
二人は笑顔で手を振り合った。
秋風が少しだけ涼しく感じる帰り道。
その風の中で揺れる二つのストラップは、これからも二人の毎日を優しく見守り続けるのだった。
**――第3期 第3話「初めてのおそろい」 完**




