表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/64

第3期 第3話 「初めてのおそろい」

挿絵(By みてみん)


 恋人になってから二週間。


 ユウキとマミは、少しずつ恋人としての距離に慣れ始めていた。


 朝のホーム。


「おはよう。」


「おはよう、ユウキ。」


 以前のようなぎこちなさはなくなり、自然に隣へ並ぶ。


「今日も早いね。」


「マミも。」


「早く会いたかったから。」


 さらりと言うマミに、ユウキは苦笑する。


「もう慣れた?」


「……少しだけ。」


「えへへ。」


 マミは満足そうに笑った。


◇◇◇


 快速電車へ乗り込む。


「今日は勝負。」


「まだ続けるの?」


「もちろん!」


 二人は別々のドアから車内へ。


 人の流れを読む。


 降りる人を見極める。


 数駅後。


「!」


「!」


 今日も隣同士。


「引き分け。」


「もう運命だね。」


「その台詞、何回目?」


「数えてません。」


 二人は笑い合う。


◇◇◇


 昼休み。


 屋上でお弁当を食べ終えた頃だった。


「ユウキ。」


「ん?」


「今度の日曜日って空いてる?」


「たぶん。」


「じゃあ、お買い物付き合ってほしいな。」


「いいよ。」


「本当?」


「何買うの?」


 マミは少しだけいたずらっぽく笑った。


「秘密。」


◇◇◇


 日曜日。


 駅前のショッピングモール。


「お待たせ。」


 マミは淡いピンク色のワンピース姿だった。


「待った?」


「今来た。」


「その返事好きだね。」


「もう定番。」


 二人は笑いながら館内へ入る。


「で、何買うんだ?」


「実はね。」


 マミはアクセサリーショップを指差した。


「ストラップ。」


「スマホ?」


「うん。」


 店内には色とりどりのストラップやキーホルダーが並んでいた。


◇◇◇


「かわいい……。」


 マミは一つひとつ手に取って眺める。


「迷う。」


「いっぱいあるな。」


「ユウキも選んで。」


「俺?」


「うん。」


 二人で棚を見ていると、小さな動物のストラップが目に入った。


 一つは白いうさぎ。


 もう一つは茶色いくま。


「あっ。」


 二人同時に声を上げる。


「花火大会。」


「ゲームセンター。」


 あの日のぬいぐるみと同じ組み合わせだった。


 マミは嬉しそうに微笑む。


「覚えてた?」


「もちろん。」


「これにしようかな。」


 ユウキも手に取る。


「じゃあ俺も。」


 二人は顔を見合わせた。


「おそろい?」


「いいんじゃない。」


「うん!」


 マミは心から嬉しそうに笑った。


◇◇◇


 買い物を終えたあと。


 二人はフードコートでジュースを飲んでいた。


「見て。」


 マミがスマホを取り出す。


 白いうさぎのストラップが揺れている。


「かわいい。」


「ユウキも。」


 ユウキのスマホには茶色いくま。


「並べると。」


 マミが二つを近づける。


「友達みたい。」


「いや。」


 ユウキは少し笑った。


「恋人だろ。」


「……!」


 マミは一瞬固まり、それから耳まで真っ赤になった。


「そういうこと急に言う!」


「思っただけ。」


「もう……。」


 恥ずかしそうに笑いながらも、どこか嬉しそうだった。


◇◇◇


 夕方。


 帰りの快速電車。


 今日も窓際の席へ並んで座る。


「ねぇ。」


 マミがストラップを見つめながら言う。


「これね。」


「うん。」


「毎日持ち歩く。」


「俺も。」


「学校も。」


「休日も。」


「ずっと一緒。」


 マミは微笑んだ。


「離れてても、おそろいって思うだけで嬉しい。」


 ユウキは静かにうなずく。


「そうだな。」


 電車が夕焼けの中を走る。


 最初は、電車で偶然隣に座った二人。


 次は、同じクラスになった。


 恋人になった今は、おそろいの小さなストラップが二人をつないでいる。


 決して高価なものではない。


 それでも二人にとっては、世界で一番大切な宝物だった。


◇◇◇


 改札前。


「今日はありがとう。」


「こちらこそ。」


 マミはスマホを胸に抱きながら笑う。


「明日も。」


「うん。」


「おそろい持って、電車乗ろうね。」


「もちろん。」


 二人は笑顔で手を振り合った。


 秋風が少しだけ涼しく感じる帰り道。


 その風の中で揺れる二つのストラップは、これからも二人の毎日を優しく見守り続けるのだった。


**――第3期 第3話「初めてのおそろい」 完**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ