第3期 第2話 「初めての放課後デート」
恋人になってから最初の一週間。
ユウキとマミは、これまでと同じように毎日一緒に登校し、一緒に帰っていた。
変わったことといえば――。
「おはよう、マミ。」
「おはよう、ユウキ。」
挨拶をするたび、お互い少し照れてしまうこと。
そして、目が合う時間が少し長くなったことだった。
◇◇◇
朝の快速電車。
「今日は勝負する?」
マミがいつものように笑う。
「恋人になっても?」
「もちろん。」
「負けたら?」
「ジュース一本。」
「安い勝負だな。」
二人は笑いながら車内へ乗り込む。
人の流れを読み、空席を探す。
数駅後。
「!」
「!」
今日も同じ席へたどり着く。
「引き分け。」
「まただね。」
隣同士に座ると、マミが小さく笑った。
「最近思うんだけど。」
「ん?」
「私たち、本当に息ぴったりだね。」
「長い付き合いだからな。」
「まだ半年くらいなのに。」
そう言って笑い合った。
◇◇◇
昼休み。
屋上でお弁当を食べ終えた頃。
「そうだ。」
マミが思い出したように言う。
「今日って部活休みだよね?」
「ああ。」
「放課後、少し寄り道しない?」
「いいよ。」
「駅前に新しいパンケーキのお店ができたんだって。」
「甘いものか。」
「たまには付き合って。」
「分かった。」
マミは嬉しそうに笑った。
「やった!」
◇◇◇
放課後。
二人は制服のまま駅前へ向かった。
小さなカフェは、木目調の落ち着いた雰囲気だった。
「かわいいお店。」
マミが店内を見回す。
二人は窓際の席へ案内される。
「何にする?」
「期間限定の栗パンケーキ!」
「もう秋だからか。」
「ユウキは?」
「普通の。」
「冒険しないね。」
「失敗したくない。」
「ユウキらしい。」
二人は笑った。
◇◇◇
運ばれてきたパンケーキは、ふわふわで湯気が立っていた。
「いただきます。」
一口食べたマミが目を輝かせる。
「おいしい!」
「そんなに?」
「一口食べる?」
マミがフォークを差し出しかけて、ぴたりと止まる。
「あ……。」
恋人同士がするようなことだと気づいたらしい。
「ご、ごめん!」
「気にしなくていい。」
「でも……。」
耳まで赤くなっている。
ユウキは少し笑って、自分の皿を差し出した。
「じゃあ交換。」
「え?」
「一口ずつ。」
マミは少し驚いたあと、嬉しそうにうなずいた。
「うん。」
二人は照れながら、お互いのパンケーキを一口ずつ味わう。
「どう?」
「おいしい。」
「よかった。」
ほんの少しの出来事なのに、胸がどきどきした。
◇◇◇
店を出ると、夕日が街をオレンジ色に染めていた。
二人はゆっくり歩きながら駅へ向かう。
「ねぇ。」
マミが隣を見上げる。
「恋人になって思ったことがあるの。」
「何?」
「特別なことをしなくても。」
「?」
「こうして一緒に歩いてるだけで幸せ。」
ユウキは静かに笑う。
「俺も同じ。」
「本当?」
「ああ。」
「電車に乗って。」
「学校で話して。」
「帰りに寄り道して。」
「それだけで十分。」
マミは安心したように笑った。
「よかった。」
◇◇◇
ホームへ着く。
快速電車が滑り込んできた。
二人は乗り込み、今日も隣同士の席へ座る。
窓の外には夕焼け。
「ユウキ。」
「ん?」
マミは少しだけ遠慮がちに言った。
「今日は。」
「?」
「手、つないでもいい?」
ユウキは少し照れながら微笑む。
「ああ。」
二人は膝の上で、そっと手を重ねた。
誰にも気づかれない、小さな恋人だけの時間。
電車は静かに夕暮れの街を走っていく。
最初は座席を奪い合うライバルだった。
今は、隣で手をつなぐ恋人。
それでも二人にとって一番大切なのは、変わらない。
今日も、明日も、その次の日も。
ユウキの隣にはマミがいて、マミの隣にはユウキがいる。
それが二人にとって、一番幸せな日常だった。
**――第3期 第2話「初めての放課後デート」 完**




