第2期 第13話 「君に伝えたい、この気持ち」
文化祭当日。
朝から校内はいつも以上の熱気に包まれていた。
教室の飾り付け。
廊下を行き交う来場者。
笑い声とアナウンスが校舎中に響いている。
「ユウキ!」
振り向くと、マミが駆け寄ってきた。
クラスの出し物用のエプロン姿で、少し額に汗を浮かべながら笑っている。
「おはよう。」
「おはよう!」
「今日は忙しくなりそう。」
「でも終わったら。」
マミは小さく笑う。
「約束だからね。」
「ああ。」
二人は目を合わせ、それぞれの持ち場へ向かった。
◇◇◇
午前中は大忙しだった。
接客をしたり、準備をしたり、クラスメイトと笑い合ったり。
気づけば昼休みになっていた。
「ユウキ!」
「お疲れ。」
「少しだけ休憩しよ。」
二人は屋上へ向かった。
春から何度もお弁当を食べた場所。
風が心地よく吹き抜ける。
「ここへ来ると落ち着くね。」
「思い出がいっぱいあるからかな。」
「うん。」
マミはフェンス越しに校庭を眺める。
「入学したばかりの頃は。」
「毎日緊張してた。」
「俺も。」
「でも。」
マミは優しく笑った。
「ユウキがいてくれたから、高校が好きになった。」
その言葉は、ユウキの胸にまっすぐ届いた。
◇◇◇
午後。
文化祭は大盛況のまま終わりを迎えた。
片付けが終わる頃には、夕焼けが校舎を赤く染めていた。
クラスメイトたちが帰り支度を始める。
「おーい!」
高橋が笑いながら声をかける。
「ユウキ!」
「今日はちゃんと送ってやれよ!」
「え?」
マミが真っ赤になる。
「高橋くん!」
「じゃあな!」
高橋たちは笑いながら帰っていった。
「……。」
「……。」
二人は顔を見合わせ、苦笑する。
「行こうか。」
「うん。」
◇◇◇
駅へ向かう道。
いつもの帰り道。
いつもの景色。
でも今日は、どこか違って見えた。
改札を通り、快速電車へ乗る。
今日も窓際の席が二つ空いていた。
並んで座る。
「文化祭、楽しかったね。」
「うん。」
「また一つ思い出が増えた。」
「そうだな。」
マミは静かに笑った。
「ユウキ。」
「ん?」
「今日ね。」
「?」
「話したいことがあるの。」
その言葉に、ユウキはゆっくりとうなずく。
「……俺も。」
電車は最寄り駅へ到着した。
◇◇◇
二人は改札を出ても、そのまま歩き続けた。
分かれ道ではなく、春に初めて話した駅近くの小さな公園まで。
夕暮れの公園。
ブランコが風に揺れている。
「懐かしいね。」
マミが微笑む。
「ここ、最初に一緒に歩いた道だ。」
「ああ。」
沈黙が流れる。
どちらも緊張していた。
先に口を開いたのはユウキだった。
「マミ。」
「うん。」
「入学式の日。」
「電車で隣に座って。」
「同じクラスになって。」
「毎日一緒に帰って。」
「夏休みも。」
「花火大会も。」
「海も。」
「全部。」
一度深呼吸する。
「全部、マミとだったから楽しかった。」
マミは静かに聞いている。
「最初は友達だと思ってた。」
「でも。」
「今は違う。」
ユウキはまっすぐマミを見つめた。
「マミが好きだ。」
「友達としてじゃない。」
「一人の女の子として好きです。」
「俺と付き合ってください。」
静かな風が吹く。
数秒が、とても長く感じた。
マミはゆっくりとうつむき、小さく笑った。
その瞳には涙が少しだけ浮かんでいた。
「……よかった。」
「え?」
「実は。」
マミは照れながら顔を上げる。
「私も今日、言おうと思ってたの。」
ユウキは目を丸くした。
「私も。」
一歩だけ近づく。
「ユウキが好き。」
「電車で会う時間も。」
「学校で笑う時間も。」
「帰り道も。」
「全部、大好き。」
少し涙ぐみながら、それでも笑顔で続ける。
「こちらこそ。」
「よろしくお願いします。」
ユウキの表情が、ゆっくりと笑顔に変わる。
「ああ。」
「よろしく。」
その瞬間。
二人は自然に手をつないだ。
花火大会の時のような偶然ではない。
お互いの意思で、そっと手を重ねる。
「温かいね。」
マミが小さく笑う。
「うん。」
「これからは。」
「恋人として。」
「毎日、一緒に帰ろうね。」
「もちろん。」
ユウキは優しくうなずいた。
◇◇◇
翌朝。
いつもの駅。
いつもの快速電車。
「おはよう。」
「おはよう、ユウキ。」
二人は顔を見合わせて笑う。
何も変わらない朝。
でも、一つだけ違うことがある。
ホームを歩く二人の距離は、昨日までよりほんの少しだけ近かった。
そして電車に乗ると、二人は自然に並んで席へ座る。
「ねぇ。」
マミが照れながら言う。
「座席争奪戦。」
「覚えてる?」
「もちろん。」
「もう勝負じゃないね。」
「どうして?」
マミは幸せそうに微笑んだ。
「私の特等席は、ずっとユウキの隣だから。」
ユウキも笑う。
「ああ。」
「俺も同じだ。」
電車は朝日を浴びながら走り続ける。
偶然隣に座った春の日から始まった物語。
その偶然は、二人を恋人へと導いた。
そしてこれは、終わりではない。
恋人になった二人の、新しい物語の始まりだった。
**――第2期 完**




