第2期 第11話 「二学期、もう一度隣へ」
夏休みが終わり、二学期が始まった。
始業式の朝。
ユウキはいつもより少しだけ早く駅へ着いていた。
理由は自分でも分かっている。
夏休みの間も何度か会っていた。
それでも、制服姿のマミに会うのは久しぶりだったからだ。
(まだかな。)
ホームを見渡す。
すると、人混みの向こうから見慣れた姿が小走りで近づいてきた。
「ユウキ!」
マミだった。
夏服の制服。
肩まで伸びた黒髪。
いつもの笑顔。
「おはよう!」
「おはよう。」
「久しぶり……じゃないね。」
「この前も会ったし。」
「そうなんだけど。」
マミは照れくさそうに笑う。
「制服で会うのは久しぶり。」
「確かに。」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
快速電車がホームへ滑り込む。
「今日は勝負する?」
マミがいたずらっぽく聞く。
「久しぶりだからな。」
「負けないよ。」
二人は別々のドアから乗り込む。
乗客の流れを読む。
降りる人を見極める。
タイミングを合わせる。
そして——。
「!」
「!」
数駅後。
空いた二人掛けの席へ、ほぼ同時に座った。
「引き分け。」
ユウキが笑う。
「うん。」
マミも笑顔でうなずく。
「やっぱりユウキには勝てない。」
「俺もマミには勝てない。」
それが二人らしい結論だった。
◇◇◇
教室へ入る。
「おー!」
高橋が大きな声を上げた。
「優勝コンビ復活!」
「おはよう。」
「夏休みどうだった?」
周りのクラスメイトも集まってくる。
「海行ったって本当?」
「花火大会も?」
「楽しそう!」
マミは照れながら笑う。
「楽しかったよ。」
「いいなぁ。」
高橋がユウキの肩をぽんと叩く。
「青春してるじゃん。」
「違う。」
「まだ言うか。」
教室は笑いに包まれた。
◇◇◇
ホームルーム。
担任が教室へ入ってくる。
「夏休み気分は終わりだ。」
「今日から二学期。」
「文化祭もあるし、行事も多いぞ。」
その言葉に教室がざわめく。
「文化祭!」
「楽しみ!」
「何やるんだろう。」
マミが後ろを振り返る。
「ユウキ。」
「ん?」
「文化祭も一緒に回ろうね。」
「もちろん。」
「約束。」
「約束。」
自然と笑顔になる。
◇◇◇
昼休み。
屋上。
久しぶりに学校で食べるお弁当だった。
「やっぱりここ落ち着く。」
マミが風に髪を揺らしながら笑う。
「夏休みも楽しかったけど。」
「うん。」
「学校も好き。」
「どうして?」
「毎日会えるから。」
さらりと言ったあとで、マミは少し照れたように笑った。
「あと。」
「?」
「前後の席だから。」
ユウキは思わず吹き出す。
「それも理由?」
「大事な理由。」
二人は笑い合った。
◇◇◇
放課後。
いつもの帰り道。
「夏休み終わっちゃったね。」
「少し寂しい。」
「でも。」
マミは空を見上げる。
「これから文化祭もあるし。」
「体育祭もある。」
「楽しみいっぱい。」
駅へ着き、快速電車へ乗る。
今日も自然と隣同士。
夕日が窓から差し込む。
「ねぇ、ユウキ。」
「ん?」
「夏休みの一番の思い出って何?」
少し考える。
「海。」
「私は花火大会。」
「理由は?」
マミは少し照れながら答えた。
「……内緒。」
「教えてくれないの?」
「恥ずかしいから。」
そう言って笑う。
ユウキも、それ以上は聞かなかった。
実は自分も同じだったから。
花火大会で手をつないだこと。
それが夏の思い出として、一番心に残っていた。
◇◇◇
最寄り駅。
改札へ向かう途中。
「ユウキ。」
「ん?」
マミは少しだけ真面目な表情になる。
「二学期も。」
「うん。」
「いっぱい思い出作ろうね。」
その笑顔を見て、ユウキは迷わずうなずいた。
「ああ。」
「もちろん。」
二人は手を振って別れる。
夏が終わり、新しい季節が始まる。
でも変わらないものがあった。
毎朝のホーム。
毎日の電車。
隣の席。
そして、マミの笑顔。
その笑顔を守りたい。
そう思う気持ちは、夏が始まる前よりも、ずっと大きくなっていた。
**――第2期 第11話「二学期、もう一度隣へ」 完**




