第2期 第5話 「終業式と夏休みの始まり」
七月、終業式当日。
朝から照りつける日差しに、駅のホームはもう真夏の空気に包まれていた。
「暑い……。」
マミが制服の胸元を軽くあおぐ。
「朝から三十度近いらしい。」
「まだ七月なのに。」
ユウキも苦笑する。
そんな会話をしながら快速電車へ乗り込む。
今日も自然と隣同士に座ることができた。
「一学期も今日で終わりか。」
「早かったね。」
「入学したばかりだと思ってた。」
「うん。」
マミは窓の外を眺めながら、小さく笑う。
「でも、一番覚えてるのは。」
「?」
「やっぱり最初の日。」
「座席争奪戦?」
「そう。」
「まさかライバルが同じ学校にいるなんて思わなかった。」
「俺も。」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
体育館。
終業式が始まる。
校長先生の話。
夏休みの過ごし方についての注意。
熱中症への注意喚起。
ようやく終業式が終わると、生徒たちはほっとした表情で教室へ戻っていく。
◇◇◇
「はい。」
担任が通知表を配る。
「夏休みだからといって生活リズムを崩さないように。」
「宿題も計画的にな。」
教室のあちこちからため息が聞こえる。
「宿題多い……。」
「最終日にやるなよー。」
そんな声に笑いが起きる。
マミは通知表を見て、小さく胸をなで下ろした。
「よかった。」
後ろを振り返る。
「ユウキ。」
「どうだった?」
「思ってたより良かった!」
「それなら安心。」
「ユウキは?」
「まあまあ。」
「その『まあまあ』は信用できない。」
「どういう意味?」
「絶対いい成績だったでしょ。」
ユウキは苦笑した。
◇◇◇
ホームルームが終わる。
担任が教室を見渡した。
「じゃあ、いい夏休みにしろ。」
「二学期に元気な顔を見せてくれ。」
「ありがとうございました!」
クラス全員で頭を下げる。
チャイムが鳴る。
一学期が終わった。
◇◇◇
教室を出ると、マミが隣に並ぶ。
「とうとう夏休みだね。」
「ああ。」
「なんだか実感ない。」
「学校がないのは変な感じ。」
廊下を歩いていると、高橋たちが声をかけてきた。
「おーい!」
「ユウキ!」
「マミさん!」
「花火大会楽しんでこいよ!」
「え?」
「もうクラス全員知ってるぞ。」
「二人で行くんだろ?」
マミは一瞬で真っ赤になった。
「ち、違っ……!」
「違わないけど!」
慌てて否定しようとして、途中で言葉が変になる。
クラスメイトたちは大笑いだった。
「楽しんでこい!」
「報告よろしく!」
二人は顔を真っ赤にしながら教室をあとにした。
◇◇◇
駅へ向かう道。
「恥ずかしかった……。」
マミが両手で顔を隠す。
「みんな知ってたんだね。」
「どこから広まったんだろ。」
「たぶん佐藤さん。」
二人は苦笑する。
でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
◇◇◇
ホームへ着く。
電車が到着する。
二人は乗り込み、今日も隣同士に座った。
「そうだ。」
マミがバッグをごそごそ探す。
「はい。」
「?」
小さな封筒だった。
「これ。」
「開けてもいい?」
「うん。」
中には、手作りのしおりが入っていた。
透明なフィルムの中に、小さな押し花が閉じ込められている。
「夏休みの宿題とか、本を読む時に使って。」
「……。」
「この前、本屋さんで本を選んでるユウキ、楽しそうだったから。」
ユウキはしばらく言葉が出なかった。
「ありがとう。」
「喜んでもらえた?」
「ああ。」
「すごく嬉しい。」
マミはほっとしたように笑った。
「よかった。」
◇◇◇
最寄り駅。
改札前で立ち止まる。
「次に会うのは。」
「花火大会かな。」
「その前に電車で会うかも。」
「ふふっ。」
マミは笑う。
「たしかに。」
「じゃあ。」
少しだけ照れながら続ける。
「夏休み最初の約束。」
「うん。」
「絶対、忘れないでね。」
「忘れるわけない。」
その返事に、マミは満足そうにうなずいた。
「またね、ユウキ。」
「またな、マミ。」
二人は手を振り合う。
学校は夏休みに入る。
でも、二人の物語に夏休みはない。
むしろここから、新しい思い出がたくさん生まれていく。
そして、その最初の一ページを飾るのは――
二人で見る、夏の夜空だった。
**――第2期 第5話「終業式と夏休みの始まり」 完**




