第2期 第4話 「テスト返却と、ちょっとしたご褒美」
七月。
教室の窓から聞こえる蝉の声が、夏の始まりを告げていた。
朝のホーム。
今日もユウキとマミは同じ快速電車を待っている。
「おはよう、ユウキ。」
「おはよう。」
「今日って。」
「うん?」
「テスト返却の日だよね……。」
さっきまでの笑顔が少し曇る。
「緊張する。」
「勉強したじゃん。」
「でも、ミスしてるかもしれないし。」
マミは小さくため息をついた。
「もし悪かったら慰めてね。」
「いいけど。」
「約束。」
「約束。」
電車がホームへ滑り込み、二人は乗り込む。
数駅後、今日も自然と隣同士に座ることができた。
「今日も勝ち。」
マミが嬉しそうに笑う。
「もう勝負してないだろ。」
「ユウキの隣を取れたから勝ちです。」
その言葉に、ユウキは少し照れながら窓の外へ視線を向けた。
◇◇◇
一時間目。
答案用紙が次々と返されていく。
「ユウキ。」
「ん?」
「数学、どうだった?」
「九十二点。」
「えっ!?」
マミは思わず立ち上がりそうになる。
「すごい!」
「マミは?」
「八十八点!」
「十分すごい。」
「でも。」
マミは嬉しそうに笑った。
「ユウキが教えてくれた問題、全部合ってた。」
「よかった。」
「ありがとう。」
その笑顔を見ているだけで、教えた甲斐があったと思えた。
◇◇◇
昼休み。
屋上。
二人でお弁当を食べていると、高橋がやって来た。
「お前ら。」
「?」
「今回のテスト、二人とも上位らしいぞ。」
「え?」
「廊下に順位貼ってあった。」
マミが驚いた顔で立ち上がる。
「本当?」
「見に行こう!」
二人は急いで職員室前へ向かった。
掲示板には学年順位が貼られている。
「えっと……。」
マミが自分の名前を探す。
「あった!」
「三位!」
ユウキも自分の名前を見つける。
「二位。」
二人は顔を見合わせた。
「すごい!」
「マミも三位じゃん。」
「ユウキのおかげだよ。」
「違う。」
ユウキは首を横に振る。
「マミが頑張った結果。」
マミは少し照れながら笑った。
「そう言ってもらえると嬉しい。」
◇◇◇
放課後。
駅へ向かう途中。
「今日はお祝いしよう!」
マミが元気よく言った。
「お祝い?」
「二人とも頑張ったから。」
「何する?」
「アイス!」
「なるほど。」
駅前のコンビニで、それぞれ好きなアイスを買う。
ユウキはバニラ。
マミはいちご。
近くの公園のベンチへ座った。
「いただきます。」
一口食べたマミは、幸せそうに目を細める。
「おいしい……。」
「そんなに?」
「テスト終わりのアイスは特別です。」
「確かに。」
二人は笑った。
◇◇◇
しばらくして。
マミのアイスが少し溶け始める。
「あっ。」
慌てて食べようとした拍子に、スプーンからいちごアイスがぽとりと制服へ落ちた。
「きゃっ!」
「大丈夫?」
「制服が……。」
ピンク色の小さなシミ。
マミは慌ててハンカチで拭こうとする。
ユウキはバッグからペットボトルの水を取り出した。
「少し濡らした方が落ちやすい。」
「え?」
「貸して。」
ハンカチを受け取り、水を少し含ませて優しく叩く。
「これで。」
「……。」
マミはじっとユウキを見つめていた。
「どうした?」
「なんでもない。」
少しだけ微笑む。
「本当に優しいなって。」
ユウキは照れ隠しに頭をかいた。
「困ってたから。」
「その『困ってたから』で、いつも助けてくれる。」
マミは小さく笑う。
「ありがとう。」
◇◇◇
帰りの電車。
夕日が車内を赤く染める。
二人は今日も並んで座っていた。
「ねぇ、ユウキ。」
「ん?」
「テスト終わって。」
「うん。」
「花火大会も近づいてきたね。」
「そうだな。」
「浴衣、もう決めたよ。」
「本当?」
「秘密。」
いたずらっぽく笑う。
「当日のお楽しみ。」
「楽しみにしてる。」
その一言だけで、マミの笑顔はさらに柔らかくなった。
窓の外では、夏の夕焼けがゆっくりと街を包んでいく。
あと少しで夏休み。
そして、二人で約束した花火大会。
その日が近づくたび、二人の胸の高鳴りも少しずつ大きくなっていた。
**――第2期 第4話「テスト返却と、ちょっとしたご褒美」 完**




