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03-3

 光莉が弁当に口をつけ始めると、どこからかクラシック音楽が流れていると気づく。光莉でもメロディーを知っているくらい有名な曲だ。音を辿たどると才琉のスマホからだった。


 音を確認した才琉は、すぐにスマホをチェックした。それに、中華丼を平らげるいきおいだったはしも止まっている。スマホをまじめに見ている様子でよほど大切な相手なんだろうとさつした。ひとつため息をついてねつしんに返信している。

 その様子をながめていたら、なにか言いたげな才琉と目があった。

「なあに。メールの相手、そんな気になる?」

「すこしだけ」


 こんど仕掛けられたら、何かイタズラで返そうと思っていた。にらめっこを始めたみたいに、光莉は才琉の顔を真剣に覗きこむ。じっと目があい続けるのが照れくさかった。

「ん、と。素直じゃん、ズル。ちょっと待って」

 才琉の頬がじわじわと赤にまる。どうやら本気で照れているらしかった。熱を逃がすように深呼吸している。


「んで? 恩田さんは何が気になるって?」

「ごめんなさい。おどろかせようと思っただけなので、気にしないで」

 人目が気になるからという理由でカフェテリアを利用しない才琉に、イタズラでも見るのはマズかったかなと反省した。嫌な気持ちにさせたい訳ではなかった。

「ああ、そっか。わりカノジョだと思った?」

「すぐ返信してたので、大切な人だろうなとは思いました」

「オレのカノジョは恩田さんしかませんよー」

そうのね!」

「そんな必死に否定しないでもさあ」


 才琉は傷ついたと軽口をたたき、光莉の本心をさぐるように目を合わせた。このところ噂とは違うじやな希望を口にする子供みたいな一面を見ている気がする。

「この人に『日替わりカノジョ』なんて言ったら、ぶっ飛ばされると思うよ。ほら」

 そう言って才琉はしんのスマホを、光莉の目の前にだして操作した。中を見ていいらしい。見せても特に困ることは書いていないからと言い、一通メールをひらいて光莉にみせた。メールの差出人はゆかりと書かれている。


「ええと『トイレットペーパー、牛乳、しらたき、鶏モモ肉』おつかい頼まれたの?」

「そ。帰りにスーパー行けだってさ」

 母親からのメールかと聞くと違うと返ってきた。 

「ゆかりさんは母親の妹。つまり、オレのおばさんね。かんたんに言うとオレの親いま海外で仕事してる。で、オレはおばさんトコに住んでんの。やり取りはメールってルール」

「へえ。今どきメールなの、めずらしいね」

「パソコン仕事だし、CC機能を使うからメールが楽なんだって。CCにオレの親いれてさ」


 高校入学後からゆかりとどうきよしていること、休みの日の朝でもおかまいなしに買い物に行かされること、ゆかりの家にいる間に問題を起こしたらえんりよなくぶっ飛ばされること、才琉は自身の置かれたかんきようをひとつずつ教えてくれた。

「恩田さんがどう思っているか知らないけど、日替わりできるほどようじゃないよ、オレ」

 才琉の表情がくもる。それは、しんじようする迷子の顔にみえた。


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