03-1 噂は廻る
自宅付近で光莉のスマホには、心晴から何通かメッセージが届いていた。そういえば、昼にあとで説明すると言ったことを思いだす。
どう説明しようかと思案していると、しびれを切らしたのか、心晴から電話着信が入った。
光莉はぽつりと話はじめる。心晴はときおり相槌をうって、話を聞いていた。
『それで御手洗才琉が偽装彼氏になったの?』
『うん。普段は友達と一緒にいればいいし、どうしようもないときに頼って、だって』
『それだけ?』
『あと、彼女っぽく見せるために、たまに会う約束したくらいかな』
『ええー。本当にデートして、カレカノっぽくする必要ある? 大丈夫かなあ』
心晴はこう見えて疑り深い。才琉と聞いて、不満の色を隠さなかった。
『そんなことより、ストーカーの話だよ。そんなにヤバいなら早く話して欲しかった。なんであたしより、御手洗才琉のほうが先なの』
心晴の心底不服ですと、ぶうぶう口を鳴らした表情が浮かぶ。
『ごめん。勇気でなかった。気のせいだよ、付き合っちゃえば、って言われるの怖くて』
『言うわけないじゃん! いや、言ったかもしれないけど、こんなになるほど深刻なの分かったら、あたしだって……』
『それ御手洗さんにも言われた。恩田さん友達に困ってる相談すればいいのに。困ってるってきいて、恩田さんを見捨てる薄情な友達じゃないでしょ、って』
『ふん、わかってんじゃん。御手洗才琉のくせに良いこと言う』
『ねえ心晴、御手洗さんと何かあった?』
気のせいではない。心晴はどうにも才琉にあたりが強い。
『別に何もないよ。ただ、顔もいい、声もいい。そのくせ、そこそこ頭もいいから苦手なの』
『えっ?』
『女の子と遊んで、余裕な顔でテストの点数もいいから、何だコイツーってだけ』
僻みである。まさか、心晴が才琉に対して劣等感を抱いているとは思っていなかった。
あと、すこしだけ気になる話があった。
『御手洗さんって、本当に女の子と遊んでるの?』
『去年の夏休み終わったくらい、廊下で女の子たち侍らせてたじゃん。光莉、覚えてない?』
光莉は記憶をたどった。学校で女の子と仲よさげに話す姿は、なんどか見かけた覚えがある。だが、それだけで特別「侍らせている」と印象が残ったことはない。むしろ、夏といえば噂の才琉が歩き出した時期だ。眉をひそめる噂もあり関わらないようにしていた。
『覚えてない』
『そっか』
心晴は一つ声のトーンを落とす。
『あたし見ちゃったんだよね。御手洗才琉が、おまえ彼女とったろーって詰められてるとこ。あー、やっぱそんな感じなんだって。そっからずっと苦手』
光莉はなんと返せばいいのか分からなかった。




