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07-2

 日曜の昼さがり、家の近くでは少し前まで雨が降っていたらしい。アスファルトが薄っすられている。空を見上げる。太陽がっており、てんこうの不安定さにが来たことを知った。早朝のバイトを終えた光莉は真理叔母さんの雑貨店を訪ねている。

 店の前のだんを見た。小さな庭みたいな花壇では、雨上がりとくゆうのかすかな土の匂いと、ひんしゆの分からないバラがじゆんたくえている。ていねいな暮らしってこういう事を言うのかな、とぼんやり考えて扉を開けた。



 今日は久しぶりの店番で、少し緊張していることに気づく。光莉の来店を知り、叔母さんが小さく手を振った。

「光莉ちゃん、ごめんなさいね。さっきまでバイトだったんでしょう?」  

「気にしないで真理さん。遊びに来ようと思っていたから、ちょうど良かったんです」

 光莉はそう言って、お土産みやげのタコスをビニール袋ごと渡した。叔母さんはグラシアスの料理が好きで、お土産に持って行くといつもニコニコしている。それが嬉しかった。

 店内をわたすと、目に優しい色をしたリネン製のタオルやシャツが見える。プライスタグの確認をして、やっぱり丁寧な暮らしだなあと心の中で思った。


 ふと、雑貨コーナーに置かれたハンカチが視界に入る。それは、才琉のミントグレージュの髪色に似ていた。光莉はられたように、その色を見つめて手にとる。値段も千円強ほどで財布にさほどダメージが入らない。

「それ、落ちついたうらの色。上品でいい色でしょう」

「――はい、すごく」

 リネン生地は吸水性とそつかんせいすぐれているから、これから夏にかけての季節にはぴったりで使い勝手が良い。洗濯には注意が必要だけど、一度使ってみたら綿には戻れなくなる。光莉の年代の子が興味を持ってくれたことが嬉しいのか、叔母さんが丁寧に説明してくれた。

 才琉に渡したら迷惑だろうか。手に取ったときはみようあんが浮かんだと思ったけれど、手洗いがベターという洗濯の負担を考えると、どうにも申し訳なくて良くない気がしてくる。


「買う?」しようばいにんと叔母さんを混ぜたような表情で聞かれた。

「どうしようか、迷っています」

「そう。ひとれした子はお迎えするのが良いよ。おせつかいだけれど」

 光莉ちゃんが店番の間にどうしたいか考えてみて。そう言い残して叔母さんは店を出た。

(本当に一目惚れ、なんだろうか)


 前なら、上品で落ちついた色だなと思った色が、今は別の意味を持っている気がする。目がはなせないほど、素晴らしい色だから欲しいのだろうか。この色を見るたび、きっと誰かを思い浮かべるはずなのに、ともんとうして自身のしんぱくおんに気づいた瞬間、光莉は顔をおおった。もう取り返しがつかないほどおくれかもしれない。

 どうにかして、問題から目をそらしたくなる。


(私、好きなんだ)


 偽装の関係には、たいそう重たい感情だ。邪魔になると分かっていて、育てることは許されないきよつけいしよすべき感情だ。光莉の中で芽生えたせいぎよできない感情が、のようにあつかわれるのがはなはあわれに思われて、逃げるように背中を向けた。

(気づきたくなかったなあ)

 この気持ちは、あの夜から始まっているのだろう。大丈夫だと優しくはげまされたあの温かい気持ちは光莉の胸に一生刻きざまれて美しい。

 誰にも悟られてはいけない。目を閉じてゆっくり息を吸う。いつの間にか涙があふれていた。 

 

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