25_深夜の極秘会談と、入り混じる思惑
「もうすぐ作戦だというのに、急な招集とはどういうことだ? 第三席」
グビっと注がれたグラスの酒を一気に飲み干し、ため息まじりに問いかけたのは第二席。
「前回の緊急会議では第七席がいなかったでしょ? まぁそれは説明した通り、私の手伝いをしてもらっていたからなのだけれど」
第三席は第七席の隣に座り、鋭い眼光で返答する。
「確かに一度は全員で実りある語り合いをしておくべきだ~よねぇ~」
舞台役者のように大仰な身振りで語るのは第四席。
「確かにおっしゃる通りかと。第三席、あなたの作戦は素晴らしく異論ありません。しかし、この作戦で一番重要な『使徒柱』とかいうクソ魔物の情報を何も聞かされていません。それとその上位の『魔帝王』とかいうクソ魔物の存在のことも」
傀儡のようなものを背後に背負い、淡々とそして不気味に問い詰めるのは第五席。
「それについては私から弁解を」
七大執政と同じテーブルには座らず、姿勢よく立ったままの国王秘書が口を挟んだ。
それから秘書は今までに戦った第五柱ソルベと、第四柱ブリュレについてその詳細を語った。
「使徒柱なんて、まるで我々七大執政の真似事のようだねぇ~」
「なぜ生け捕りにしなかったのですか? 両手両足をへし折っておけば、尋問くらいできたでしょ? そして隅から隅まで徹底的に解剖して死を懇願するほどの痛みと恐怖を与えた後に殺してやればよかったのです」
「少し落ち着け第五席、お前はネチネチしていて少し気味が悪いぞ」
思ったことをすぐに口にする第二席の発言に、少し空気がピリつく。
「まぁ確かにこれ以上の情報を聞き出せなかったのは私の落ち度よ。それくらいに敵は凶悪だということ。いくらアンタたちでも覚悟しておくことね」
「面白い。この第三席にここまで言わせるとは余程の存在とみえる。そういうことだ第五席、これ以上ネチネチするな! ガハハ!」
「この脳筋を少し黙らせてくれませんか? そもそも僕はネチネチしていませんし、ネチネチとウザ絡みしてくるのはこの脳筋じじいの方で……」
「これ以上くだらないことを言うなら、今すぐここから追い出すわよ」
第三席の叱責により、シーンと静まり返る室内。
「やあ、みんな。遅れてごめんよ……あれ? なんか空気悪い?」
ピリついた室内には合わないトーンで入室してきたのは国王イヴだ。
「陛下、酒臭いじじいとネチネチ男が言い争っていただけですよ」
「ガハハ! こいつは手厳しい。おじさんは寂しいぞ!」
「僕はネチネチしていませんよ」
「国王陛下、ご機嫌麗しゅう! また亡き第一席様の武勇伝をお聞かせください! 一晩中かけてでも!」」
「それはまた今度ね。皆の活躍は秘書たちから聞いているよ。この国のためにありがとうね」
「まぁ約一名、我々の面汚しがいましたがね……」
「その件は話した通り、切り替えよう。少なからず転送ゲートの維持だけでも第六席の陣営で技術伝達を学んだ者たちがいたことだけは救いだったよ。彼らも第三席の采配でそれぞれキミたちの部隊に配置されている。有効に活用してくれ」
「それはいいが、もうヤツは始末したのか?」
「生かしておく理由が無くなったからね。もう第三席が秘密裏に始末した。それよりも今からの話だ」
気さくな笑顔から、国王らしい鋭い目つきへ表情を変えるイヴ。
「作戦は第三席から聞いている。彼女の調査によると特殊な波長を示す場所には必ず使徒柱がいるとのことだ。それがココとココ」
「だから俺と第四席の部隊がこの布陣なわけか……さすがだ」
「但し、どの序列の使徒柱とやらが配置されているかは不明よ。私と第七席は第五柱と第四柱を倒してはいるけれど、いずれも苦戦している」
「お前らが苦戦? なんの冗談だ」
「それほど危険な存在なんだ。いくらキミたち七大執政といえど、なめてかかると命を落とすよ。特に各個撃破部隊の第二席と第四席の二人はくれぐれも気を付けて」
「はっ! 陛下の仰せのままに」
「はい! この私めにどうかお任せあれ! あぁ~天界におられる聖光の聖女様、この私めにお力をお与えください!」
また一人で舞台の役に入り込んだ役者には目もくれず、桜夜は一人思考を巡らせる。
水姫にもまだ話していない、桜夜の本当の目的は、この七大執政を裏切って遥を殺した人物をあぶり出すこと。
その人物は第六席でもその副長でもなかった。
あの二人に遥の暗殺など決して出来るわけがないことは、遥の強さを知る桜夜なら分かる。
となれば、確実にこの中にいる誰かだということだ。
(おそらくその者は私の正体も知っているはず……。裏から糸を引き、ソルベを動かして第六席と副長を罠にハメ、乙羽の抹殺を企てた許すまじ愚か者がこの中に……)
「第七席、第四席が鬱陶しいのは分かるけど、そんな殺気を向けないで頂戴」
「短気は第三席みたいにシワを増やすぞ! ガハハ!」
「……どういう意味かしら?」
「どうしてこいつらはこう、まとまりがないのでしょう……僕がいいたいのは……」
「さぁさぁ、そろそろお開きにしよう! 明日は早いからね」
イヴがそういうと、七大執政たちはその場を後にする。
その場に残ったのは桜夜と乃愛とイヴだ。
「桜夜……仮にも味方にあんな殺気を向けるなんて、一体なんのつもり? 全員、表情は変えなかったけど、鞘に手を伸ばしていたわよ?」
「……すみません」
「桜夜、キミたちの別動隊には第三席と第五席が付いているとはいえ、本拠地は最も危険だ。明日はくれぐれも気を付けるんだよ?」
「はい」
桜夜はフードを被ったままでそう答えると、憎しみと殺意がこもったその瞳のままで部屋を出た。
(もうすぐです……遥さん、 乙羽……)




