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24_乙羽の思いと、叩いて誘って最後は滅

――その日の夜。


「なぁ、あれってやっぱ死刑ってことだよな」

「せやろな……まぁそれだけのことしたんや」

「七大執政といえばボクら全国民の憧れでありながら……とても酷い裏切りだよ」

「これが公になれば誰からも責められることになるでしょう。いずれにしても、救いようがありません」


 宿舎へと戻ったコモレビの面々は、各々ゆったりと寛いでいる。


「外道メガネだしね。アイツは最低の最悪で今でも大っ嫌い! 特に桜夜を危険な目に合わせたことだけはどうしても許せないし、許すつもりも全くない」

「それでも私はここにいますよ」


 ソファーの上で桜夜を抱きかかえ、腰に回している腕にどんどん力が入る乙羽。


 その腕に優しく手を沿える桜夜。


「桜夜の件だけはウチらも絶対許さへんで」

「むしろ一発ぶん殴る」

「ウチ、メガネへし折ったる」

「ボクは額に『無能』って書いてやる」

「私は髪の毛をむしり取りましょう」

「私は腕の一本くらいは斬り落としたいところだけど……桜夜は? 一番の被害者であるキミはどうしたい?」

「……最後の腕一本以外は、全部やりましょう」


 桜夜はクルっと乙羽の方を振り返り、手を伸ばして乙羽を引き起こす。


「そして、キミが本当にやりたいことを思うままに」


 それを聞いた乙羽は笑顔が戻り、何か吹っ切れたように桜夜を抱きかかえ、全員でお風呂場へ向かった。


――数日後。


「……それで……これは一体どういうことかしら?」


 学園室を訪れていたのはコモレビと国王秘書、そして――。


「一発ぶん殴りました」

「メガネへし折りました」

「額に無能と書いてやりました」

「髪の毛全部無くしてやりました」


 彼女たちが高らかに発言した通りになっている人物が、屈辱に顔を歪ませながら歯を食いしばっている。


「……一体何がどうなっているのか、誰か説明してもらえるかしら?」

「恐れながら秘書である私から……これは元、七大執政の一人、第六席様であった者です」

「……やはりそうなのね。これはアンタの仕業なの? 乙羽」

「はいっ! この外道……ゲスハゲ野郎は、コモレビの『駒』として扱います!」

「……七大執政である、この私の決定事項を覆すと?」


 深海まで沈み込むような威圧に、全員冷や汗が流れる。


「私はこの男を一生許しません。だからこそ、死んで楽にさせるつもりも全くありません!」

「……この私に意見するのね?」

「はい! ここは引けません!」


 満面の笑みでそう答える乙羽を見て、第三席はため息を付いた。


「僭越ながら、私からも一つ」


 国王秘書はそういうと、一つの書状を第三席へ渡す。


 そこには『国王のサイン』と『第七席』の紋章が描かれている。


「はあ~全くどいつもこいつも」


 書状の中身を見た第三席は頭をかかえて、更に深いため息を漏らす。


 その様子に、 コモレビは頭にハテナを浮かべている。


「これからの発言はここだけの極秘事項とします。元第六席は予定通り秘密裏に私が処刑しました。もうこの世にあの者はいません」

「っ?! では?」

「こんな『顔を腫らしてメガネが折れて額に無能と書いたゲスでハゲた人物』を私は知りません。一刻も早くどこかへ連れて行きなさい。汚らわしい」

「ぷっ……ほ、ほな水姫様、ウチらがすぐにこの『ゲスハゲ』を放り出しますんで」

「ちょっ……おいっ!」


 巴瑞季と梓がゴミでも摘まむかのように『ゲスハゲ』の首根っこを掴んで引きずり出していく。


 乙羽が最後に室内を出る前、静かに第三席へ向けて『ありがとう』と手を振って出ていく。


 その後ろにはチラリと桜夜が『許してください』と手を合わせていた。


「全く……なんだかんだ言いながら、人が死ぬのは嫌なんでしょ……本当にアンタそっくりの甘ったれで困るわ。アンタの娘たちは」


 乃愛は誰もいない室内で、亡き友人の姿とその娘たちの姿を重ねて、静かに頬を緩ませた。


 そしてその日の夜、秘密裏に呼び出された桜夜がたっぷりとお説教をされたのは言うまでもない。


――それから数日は特に進展もなく、通常の防衛任務をこなす日々が続いた。


「あれ そういえばゲスハゲはどうしてるん?」

「秘書さんが面倒みてくれてんだろ?」

「監視という名の雑用ですが、ずいぶん喜んでいましたよ? 転送ゲートも使わずにあちこち行ける便利な道具が手に入ったって」

「ボクも隙間時間であちこちのショップに行く道具にする予定だったのにぃ~! でも良かったのお~? 目を離しちゃってぇ~」

「あんな奴がこの家に入るのなんて絶対無理だよ。入った瞬間、思わず首輪の爆弾のボタン押しちゃうもん! あはは」


 乙羽が言うと冗談に聞こえない、とは誰も言えない。


「んでも、そろそろ作戦決行だろ? 気ぃ引き締めねぇとな!」

「いよいよ、敵陣に突っ込むんやな! 楽しみやで!」

「この学園の生徒までそれぞれの部隊に組み込まれて出陣だもんねぇ~ ! ボクわくわくするよぉ~!」

「それにしても、あまりにコモレビの仕事が重要過ぎだとは思いますけどね。まさかの単独別動隊として敵の本拠地に直接殴り込みとは」

「でもそのおかげで水姫様と一緒に戦えるんだよ? 間近で七大執政の戦いを見られるなんて滅多にない機会だよ! それに、第五席様も同行されるとか! 七大執政が二人もいるんだから鬼に金棒だよぉ!」


(一応、三人ですかね……私もいるので)


 水姫の采配は見事という一言に尽きる。


 被害を広げないよう、各セクターごとに敵を追い詰めていくように配備された布陣。


 追い詰めた先には、世界最強の七大執政が待ち構え、一網打尽にする。


 そうして敵が集中している隙に、コモレピを含めた別動隊が敵の本拠地へ入り込んで指揮を執っている使徒柱を撃破。


 内側から崩壊を狙うこの作戦名は――『叩いて誘って最後は滅!』。


 この作戦名を自信満々に言い放つ水姫を見ていた桜夜の目が点になったのは言うまでもない。

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